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中編


 悩める令嬢達の中で誰が言い始めたのかは定かではない。

「そんなに私たちが煩わしいなら、クラスも何もかも分けてもらいましょう」

そんな一言にざわつく令嬢達。

「令嬢達だけのクラスにしてしまいましょう」

「でもそれだと彼女が…」

「希望者を募ればいいのですわ」

「それもそうね」

「希望して別のクラスになれば関わらなくて済みますし」

「そうね」

「ならば授業時間も少しずらしてもらうようにすればどうかしら?」

「あ、それなら休み時間に関わることもありませんわね」

「いいわね」「賛成」

かくして令嬢達は各家で話し合い、学園長へと意見書を提出する事となった。


中には兄弟が学園に在籍しているため、

「そんな仲間はずれみたいなことを!」

と、反対される家もあったそうだが、

「きちんとご自分で別クラスを希望すればよろしいだけなのですけど?」

「だいたい、婚約者でも無い令嬢に肩入れしてほかの令嬢を貶めるような輩から距離を置きたくなるのは当然よ!」

「何?あなたもしかしてあの女の味方になろうっていうの?」

「いえ、そんなつもりは」

「じゃあどんなつもりか詳しく話してもらおうかしら」

などと家庭内での尋問が始まり、母親や祖母達女性陣から息も絶え絶えになるほど論破され、ほとんどの貴族家からの意見書は提出された。


大量の意見書に埋め尽くされた机をみて学園長は膝から崩れ落ちたという。

後日すっかりやつれ果て、目の下にドス黒いクマを作った学園長から、全ての学園生への通達が送られた。


学園は様変わりした。

別クラスを希望したのはほとんどの令嬢で、良識のある令息もかなりの人数が希望を出した。

もちろん家庭内でぎっちり締め上げられた令息たちも同様だ。

残されたのはクララベルとその取り巻き、後はあまり物事を深く考えてないか、状況判断ができない家の者ばかりだった。


「なんだか人数が少なくない?」

クララベルの質問に取り巻きの令息たちも人影のない学園に戸惑っている。

「そう言えばいつものように馬車の渋滞もなかったな」

「何かあったんだろうか?」

教室に行けば、更に驚いた。

令嬢が一人もいない上に、令息も数えるほどしかいない。

何がどうなったのか?と疑問に思っていると教師がやってきた。

「どうした?早く席につけ」

「先生、こんなに人数が少ないのはどうしてですか?」

「そうだ、このクラスにはもっと人数がいたはずです」

口々に疑問をぶつけると、教師ははぁ~っとため息をついた。

「それぞれの家に通達があっただろう?知らんのか?」

「通達?ですか?」

普通の貴族家であれば、学園からの通達があれば当主から話があるはず、ないという事は令息は見限られたか、当主自身が無能であるという事になる。

教師は丁寧にクラスが別れた事を説明した。

当然だが、時間も別になり、人数の少ないこちらは食堂やサロン等の利用時間を制限される。

徹底的に顔を合わせられないようにされたのだ。


「そんな!同じクラスに婚約者がいたんですよ?何も聞いていない」

「父上からは何も聞いてない」

「学園の横暴だ」


しかし、学園ではすでに新しい体制が始まっており、クララベル達が騒ごうがそれは揺るがない。

食堂の利用時間も完全に別れており、クララベル達が使える時間には別クラスの者は一人として見かけることはない。

授業が終わるとクララベル達は家に帰るしかない。

図書館など利用したい場合は事前に申請が必要とされ、自分のクラス以外に立ち寄ろうとすれば、学園の警護人から止められてしまうのだ。

始めは街に出てお茶をしたり、公園を散策したりしたのだが、毎日では行く場所も同じような場所ばかりになるし会話の内容もいつも同じ。

おもしろさなど感じられず、自然と早めに自宅に帰る事になる。

そして、毎日同じ顔を突き合わせていくと、他の令嬢にはない天真爛漫なクララベルの振る舞いが目に付くようになってきた。

授業中もほとんど話を聞かず、終わった後にノートを見せてほしいとねだる。

宿題も学園に来てから周囲に手伝ってもらっている。

誰彼構わずベタベタとスキンシップをし、町へ行けば欲しいものを買わせようとする。

食事の時もカトラリーをガチャガチャ使い、口に物を入れたまましゃべる。

お茶の種類も知らないし所作もがさつだ。

話の内容も教養がなく、会話が成り立たないこともしばしば出てきた。

自分たちが可愛いと思っていた彼女は何だったんだろう?そう疑問がわいてきた。


「なあ、俺思うんだけどクララベルのどこがよかったんだろうか?」

「ちょっと顔が可愛いだけで、マナーもなってない、教養もないんじゃな」

「ああ、話す内容もつまらないんだよな」

「こうやって毎日見てるとどれだけ非常識かがわかるな」

令息たちはそう言って自分たちがクララベルの事を可愛いと思い、守ってやろうとしていた事は間違いだった事をようやく思い知ったのだ。


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