第69話 魔物襲来
巣の外に出ると、大勢のアブラムシ族が何かから逃げるようにしてこちらに来ていた。
先頭には以前に会ったことのあるアブラムシ族がいて、こちらに声をかけてきた。
「れ、レン殿…!」
「確か…カンロンだったか?」
「おお…覚えてもらえていて嬉しい限りですぞ…。いいや、今はこのような話をしている場合ではないですぞ!」
「どうしたんだ?」
「様々なことが重なり、村を捨てたのですが…途中で魔物に襲われて、それから逃げてきたのですぞ。」
村を捨てた…?
それも気になるが今は魔物だ。
確かに意識を向けてみると、木々を薙ぎ倒すような音と、少しだけ地響きが伝わってくる。
そうしてアブラムシ族が全員こちらにきた頃…魔物が姿を現した。
「うわっ、ジャイアントベアだよー。」
「ジャイアントベア…強そうだな。」
「…………強敵」
『ガアァァァァァァァァア!!』
ジャイアントベアが大きく吠えながら両腕を上に掲げる。そして両手を合わせていた。
「あれは…?」
「"視"たところ、魔力を溜めてるみたいだよ♪」
「…ってことは投石がくるよー!」
イルスの言葉通り、ジャイアントベアの手から巨大な岩が生み出され、こちらに向かって投げられた。
ケンはその岩から守るように、自分たちの前に立ち塞がった。
「…………▼◀︎『硬化』……!」
ケンが固まり動きを止める。
そして岩がケンに命中すると、岩は砕けてバラバラになった。
「よーし…『吸視』♪」
ムムが砕け散った岩に視線を向けると、岩が輝く光になってムムの目に吸い込まれた。
「え…今のは何をしたんだ?」
「うんー?…あっ、そんなことよりレン、新しい魔物が来たみたいだよ♪」
ムムに質問してみたが、はぐらかされてしまったような気がする。
だが、実際に新しい魔物は来ているようなので、その方向を見る。
『コケ……コケコッコーー!!』
「あれは…ポイズンチキンだよー!虫族大陸にはいないはずなのにー…」
「もしかして、また魔族の仕業なのか?」
「その可能性は高いねー。」
魔物が2体か。
これは厳しい戦いになりそうだ。
よし、ここで使うか…!
「▼◀︎…『共鳴』!」
対象はこの場にいる全員、イルス、ホムラ、ケン、ムムの5匹だ。
「…………これは…?」
「これはレンの魔法だね♪感覚とか魔力が共有されるみたいだよ、兄ちゃん♪」
「……………了解」
(それじゃあポイズンチキンは私とホムラくんが相手するねー。)
(じゃあこっちはジャイアントベアだな。)
ーーーーーー
ーポイズンチキン戦ー
(…ホムラくん、私の言ってることは分かるー?)
(…バウッ。)
(よし、じゃあ私が指示するから、それに合わせて技を出してねー。)
(バウッ!)
(決まりだねー。)
以前、ホムラはイルスの言っていることが理解できていない様子だったが、今はわかっているようだ。
ポイズンチキンは2匹が話しているうちに近づき、口を開こうとしていた。
『コ…』
(『遠吠え』をしてー!)
『「ヮゥヮェ」、ワオォォォン!!』
「▼▶︎『光壁』!」
『コケコッコー!!』
ポイズンチキンが叫ぶと超音波が発生したが、イルスはそれを『光壁』て防いで無効化した。
…ホムラの支援によって『光壁』が強化されたため、破られずに済んでいる。
普通の『光壁』だと超音波を完全には防げていないだろう。
『コケッ!?』
(『火炎弾』だよー!)
「バウッ!…「バウンヮン」」
ホムラの放った『火炎弾』はポイズンチキンに当たると大きく炎をあげ、ポイズンチキンは炎につつまれた。
「これで倒れてくれれば楽なんだけどー…」
『コケェ!』
「そこまで上手くいかないかー。」
ポイズンチキンが体に付いた炎を振り払うと、火傷の一つもない体が露わになった。
『コケッ…コケッ…!』
ポイズンチキンは翼を羽ばたかせた。すると羽の隙間から紫色の粉が舞い、イルス達に向かって飛んでいった。
「毒の粉かー…▲▶︎『風』ー!」
イルスが起こした『風』はその毒の粉を吹き飛ばした。そしてそれと同時にホムラがポイズンチキンに飛びかかった。
『バウゥワバウ…!』
ホムラは口に炎をまとってポイズンチキンの羽に噛み付く。
『コケェ!コケェェ!』
ポイズンチキンはホムラを振り解こうと必死に暴れる。
毒の粉が再び舞っているが、ホムラはそれに構わずポイズンチキンに噛みつき続ける。
(ホムラくん!そのままだと毒が体の中に入っちゃうよー!)
イルスの言葉を聞いてもホムラは口を離さない。その時、ホムラはある考えをイルスに伝えていた。
「…わかったよー。▲▲▶︎『閃光槍』ー!!」
『コケェ!?』
『閃光槍』はポイズンチキンの体を貫通した。
そしてそのままポイズンチキンは息絶えた。
「はぁー、なんとか倒せたねー。」
『バゥ……ウゥ…』
「大丈夫ー!?…って粉を吸い込んだからだねー!」
「▼▶︎『癒光』ー。」
イルスが『癒光』を使うと、ホムラは苦しくなくなったようだ。だが、すぐにまた症状が出てきてしまった。
「…そっか、体の中に残ってるんだー…それじゃあどうしよっかなー。」
『バウゥ…』
「吐き出せるー?」
『ワウ』
ホムラは頭を横に振り、出来ないということを伝えた。
『…バウッ!』
ホムラは何かを思いついた様子で、倒れているポイズンチキンの方へと向かった。
「何をするつもりー…?」
ホムラはポイズンチキンに近づいて…なんとその体を食べ始めたのだ。
「…!?」
ポイズンチキンは毒の粉を放つ魔物だ。当然その肉にも毒を持っている。
「食べたらダメだよー!ほら、ぺってしてー!」
『ガツガツ……』
ホムラは一心不乱に肉を食べ続け、遂には完食してしまった。
「うんー…?」
その時、ホムラの体に変化が現れた。
苦しそうだった表情は良くなった。
そして…爪がポイズンチキンのような紫色に変わったのだ。
「…なるほどねー、すっかり忘れてたよー。」
魔物は、他の魔物を食べることで、その力を身につけることができる。
つまりホムラはポイズンチキンを食べて、毒に対しての耐性を手に入れたのだろう。
「これで安心だねー。」
『バウッ!』
「…あとでレンくんに『鑑定』してもらおっかなー。」




