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イセカイノアリ  作者: 月美うどぅん
第四章 アリの巣 再び
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昔話①(後編)

男は腰にかけてあった鎌を手に取ると、魔族に向かって走り始めた。


魔族はそれに気づくと、持っていた剣を男に向かって構えた。



男は魔族にその鎌を振り下ろした。

魔族はそれを剣で受け止めようとしたが間に合わず、肩に浅い傷を負った。



しばらく打ち合った後、男は懐から丸い物体を取り出した。

魔族は不審げにそれを眺めていたが、すぐに男に切りかかった。



そして、男は手に持つ物体を魔族に向かって投げつけた。魔族は飛んできたそれを剣で真っ二つに切断した。


すると、その物体の中から煙が発生して魔族の視界を塞いだ。その隙に再び男は魔族に向かって鎌を振り下ろした。


しかしその鎌は通らなかった。



なぜなら…煙が晴れてそこに現れたのは、全身を鎧で武装した魔族だったからだ。



これまで魔族は力を抑えて戦い、男の実力を見極めていた。

だがもうそれは必要ないと感じて、本気をだしたのである。



そこからは一方的であった。男の振る鎌は弾かれるため、魔族の振るう剣を男は避けることしか出来なかった。


始めは海岸にいたのだが、魔族と戦う内に森の方へと近づいてしまっている。蟷螂族の仲間は男よりも弱いので、魔族には蹂躙されてしまうだろう。そう考えた男はその前に魔族を倒すことを決意した。



だが現実は非情なもので、男の攻撃は尽く無効化され、男は魔族に有効打を与えることはできなかった。逆に、男は魔族に片腕を切断されてしまい動きが鈍くなった。



あまりの実力差に男は戦闘する意思を放棄して、その魔族に負けることを受け入れた。


そして男は地面に膝をつき、鎌を手放してしまった。


その様子を見た魔族はつまらなそうに男に向かって声をかけた。


「…これで終わりか。」と



男はその問いかけに反応せずに放心状態のままだ。

しばらくすると魔族は男に残っているもう片方の腕も切り落とし、それで興味を失ったのか海へ飛んで去っていった。



そして男はそのまま気を失った…。





ーーーーーー





何時間が経った頃だろうか。

男は目を覚ました。



命を落としてもおかしくないほどの出血をしていたにも関わらず、なぜか男は生きていた。


しかも切られたはずの腕が元通りになっている。


男は辺りを見渡す。

そしてミコトが倒れているのを見つけた。



男はミコトに近づく。




しかしそこで見たのは…すでに生き絶えていたミコトの姿だった。




その瞬間、男には様々な感情が巡った。

そしてその影響か、失われていた記憶が戻った。


男はその負荷に耐えられずにまた気絶してしまった。

だが…不思議なことが起こった。



意識を失ったはずの男が立ち上がり、ミコトに向かって腕を向けたのだ。それはまるで魔法を使おうとしているようにも見える。


…その様子通り、男は魔法を発動させた。

男の手から光が出てきてはミコトの体に吸い込まれていく。


どれだけの間、そうしていただろうか。


そうして男が魔力を使い切って倒れる頃、ミコトは息を吹き返した。




ーーーーーー





ミコトが目覚めると目の前には倒れている男がいた。ミコトがそれを確認してみると、男が命を落としていることがわかった。



そう、男が使ったのは命を犠牲にして、他者を復活させるという魔法だったのだ。




ミコトには男を蘇生する手段がない。

つまり、男はもう戻ってこないのである。


ミコトは悲しんだ。だがその気持ちとは裏腹に、本能的に体が動いていた。



男を…補食する方向へと……




依然としてミコトは腕を切断されたままである。そのため栄養を急速に得る必要があるのだ。


ミコトは葛藤…よりかは絶望していた。



心では食べたくないと思っていても,体が勝手に動いてしまっているのだ。体の動きも制御できず、ついに男の体に口をつけ始めてしまった。



ミコトは泣きながらも男を完食した。


男を食べ終えると同時に、ミコトの腕が再生した。そしてミコトは集落へと帰っていった。






その後、ミコトは感情が無くなったように過ごしていた。淡々と魔物を切り…漂流物を探し…そんな日々が続いた。




そして数十年後、ミコトは寿命を迎えてこの世を去った。



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