第6話 『秀才』と『対虫』
この回には少し他の蟻の視点もあります。
「キミたちにはレベルを上げてもらうよぉ。それじゃあ2班に分かれようかぁ。」
そうしてレベル上げのために2班に分かれた。
一方は秀才と技巧の2匹。
もう一方は堅固、対虫、自分の3匹だ。
秀才技巧班は両方ともLv2だ。スキルが戦闘向きではないため、戦闘のない訓練をするらしい。訓練官は長老だ。
自分の班はLvが3を超えていて、尚且つスキルも戦闘向きなので実践形式の訓練でLvを上げていく。訓練官はまだわからない。
先生は会ってみれば分かると言っていたが…
※「秀才」視点
ワタシは「秀才」である。
ワタシはここまでで感じたことがある。
それは「瞬足」は自分よりも才能を持っているということだ。その理由は彼は念話を自然に使う事ができているからだ。
だがワタシはまだ念話を使いこなせない。念話を使えないと周りに置いて行かれていくのではないかと怖くなった。
長老から受けるこの訓練は、Lvをあげるとともにスキルの使い方も学ぶらしい。どうにか早く念話を使えるようにならなければ…
そう考えていると長老のいる部屋に着いた。部屋の前には長老がいた。
「ほっほっほ、久しぶりじゃのう。待っておったぞ。」
前に会った時と変わらず、ワタシ達に優しい雰囲気で話しかけてくれる。
「早速じゃが、お主らの成長度合いを確認するぞい。」
長老はワタシの方を向いた。
「まず…「念話」は使えるかの?」
ワタシは首を横に振る。使えないので、否定の意思を表した。
次に長老は「技巧」に向かっていった。
(ア…ボクは…ナントカ……)
「技巧」は念話を使えるのか…やはり使えないのはワタシだけなのではないか?
「なるほどのう。「秀才」は一言も発せない、それに対して「技巧」は使えはするが、上手くは使えてないのう。」
「恐らく使えんのはレベルが足りてないからじゃ。「技巧」の方は「技巧」スキルの持つ、他のスキルの扱いが上手くなる効果のおかげで少し使えてるのじゃろう。」
そうか…それならワタシが特別落ちこぼれというわけではないのか…しかし使えないままではいけない。早く使えるようにならなければ…‼︎
「それじゃあ訓練内容を説明しようかの。」
そう言うと長老は部屋の奥に置いてあった箱から、蜜玉を複数取り出してきた。
「お主らには蜜玉を使って、『濃蜜玉』を作ってもらうのじゃ。」
※「対虫」視点
俺は「対虫」だ。
俺はあの部屋の中で誰よりも喧嘩が強かった。
才能があるって連れられてから、ずっと授業なんてものを受けさせられて正直ウンザリしてたんだ。
俺たちは訓練を受けてレ…なんだったかな…まぁいいや。
レなんとかを10まで上げる必要があるらしい。
訓練だかなんだか知らねえが、俺は自分の好きなように暴れられるのならそれでいい。
部屋には見た事がある奴がいた。
「よく来たな。俺がお前たちを訓練する者だ。よろしくな!」
蜜玉運び係のやつか。いっつも話し方が上からで、気に食わねぇんだよなぁ…。
「よし、突然だが俺に念話で何か言ってみろ!」
あん?なんでお前に言われてわざわざ話さなきゃいけないんだよ。必要ねぇ、黙ってるか。
(いつも蜜玉を運びに来てくれて助かっていた。ありがとう。)
「瞬足」⁉︎なに話しかけてやがんだ?思えばこいつも気に入らねぇな。授業の時も念話がうるさかったんだよなぁ。
(…………感謝…………)
「堅固」もかよ⁉︎こいつも普段からじっとしていて何考えてんだか分かんねぇから好きじゃねぇなぁ。
「さて、君は何かあるかな?対虫くん!」
うるせえなぁ、無視だ無視!
「………君は答えたくないのか!そうか…。」
ひひっ落ち込んでやがる。面白ぇなぁ。
「さて、気を取り直して訓練内容を説明しよう。訓練は模擬戦形式で行う。まずは…俺に一撃いれてみろ!」
一撃?そんなもんでいいのか?俺の力を見せて、認めさせてやる!