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イセカイノアリ  作者: 月美うどぅん
第三章 迷いの森
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第58話 聖虫

「……ここは…?」


カマキリが目覚めると、周りには見慣れない景色が広がっていた。



地平線が見えるくらい広い平原。そしてその真ん中には小屋がある。他には何も見えないのでカマキリはそこに行くことにした。



その小屋は近づいてみるとだいぶ小さく、屈まないと入り口をくぐれない程だった。




何とかしてカマキリが中に入ると、そこは何故か外見からは想像できないほど広かった。


そして、奥の方から誰かが言い合いをしているような声が響いていた。




「次は俺様の使徒にする!お前の使徒にはさせんぞ!」


「使徒だなんてそんな…私はただ加護を与えているだけですよ。」


「それが駄目なんだよ!」


「そうですか……おや?」



「どうやら来たみたいですよ、次が。」

「ようやくか!俺様を待たせやがって…」


「お主らは…?」


「無礼だな…だが、俺様は心が広いから許してやろう!」

「いや、そもそも私達が誰か知らないのでしょう?それなら敬いようも無いですよ。」

「黙れ!」

「はぁ…全く…。すみませんね、不快に思われたでしょう。」


「大丈夫でござる。それで…お主、いや貴方がたは何者で…?」


「そうですね…言うなれば『神』でしょうか。私が聖神で…こちらが虫神です。」


「ふ……む!?そんな重大なことをサラリと言わないでほしいでござる!」


「気にするな、コイツはそういうやつなんだよ…そのせいで俺様がどれだけ苦労したか…。」


「そ…そうでござるか…。」



「さて、私達の正体も明かしたところですし…さっそく本題に移りましょうか。」

「…マイペースな奴。」

「なにか言いました?」

「別に…」



「…まあいいです。とりあえず説明しますね。」


「まず、ここはいわゆる『天界』です。それで、あなたは精神だけがこちらに来ている状態です。なぜここに来ているのか予想はつきますか?」

「む……見当もつかないでござる…。」


「そうですか。簡単に言うとあなたはこれから『進化』するのですよ。」

「簡単に言いすぎだろオイ。」

「なにか文句でも?」

「いや…」


(これで本当に神なのでござるか…?)


「嘘はついていませんよ。」


「心を読んだでござるか!?」


「…神ですから。」ドヤッ



「…うぜぇ……」

「さっきから何ですか!黙っていてくださいよ、もう…。」

「ハイハイわかりましたよー、だ。」


「…気を取り直して……」



「私達は外界…あなたが住んでいる世界で、一定の強さに達したものをここに呼んで『進化』させているのですが…」

「たま〜に、お前みたいな加護二つ持ちが現れるんだよなぁ…。」


「はい…加護というものは1人につき1つだけというのが普通なんですが、すでに加護が与えられている者に、追加で加護を与える神がいるんですよね…。」


「…他人事みたいに言ってるけど、ほとんどお前のことだからな?お前がいっつも割り込んできてんだよ!」


「………。」


「オイ、目を逸らすな!」




「それで、加護が二つあるとメンドくてな……進化の選択が増えちまうんだ。」



「お前の場合で言うと…このまま『虫族』として強くなると言う方向がまず1つ。俺様はこっちを勧めるが……」

「私としては『聖虫族』となって、魔を祓っていって欲しいのですがね…。」



「まぁ、こんな感じになるんだ。メンドくせぇだろ?」


「なるほど…」



「それで…その方向性は某が選ぶのでござるか…?」


「ああ、そうなるな。」


「…早く目覚めなければならぬのに……!」


「ああ、この小屋の中は下界と比べて時間の進みが遅いので、ゆっくりと考えてもらって大丈夫ですよ。」






ーーーーーー





「決まりましたか?もう1時間は経ちましたよ。」


「うむ……」


「悩んでるみてぇだな。何を迷ってるのか聞いてやってもいいぞ。」


「では遠慮なく……」



「…某はカマキリ族に生まれたおかげで、今日まで生きて来れたのだと思っているのでござる。」


「ほーん、と言うと?」


「記憶を失っても両腕の鎌を振るうだけでなんとか戦えたのでな…」


「だからその面で言うと虫神様に感謝しているのでござる…。」


「おうおうなるほどな〜…なら虫族として…」



「しかし…」

「しかし!?」



「聖魔法が無ければ死んでいたのも事実。その点で言えば聖神様にも感謝しているのでござる…。」


「そうですか…それは嬉しいですね。」



「なのでどちらを選べば良いか……」



「ううむ…そうか……おっ、そうだ。聖神さんよ、こんなのはどうだ?ゴニョゴニョ」

「何ですか…え……そんな事を…!?」



「何でござるか?」



「よーし、ちゃんと聞けよ?」


「加護二つ持ちの奴は、どっちかの加護を強める事で進化させるんだがよ…」


「そこあなたの加護を両方強くしようって話なんですよ。」



「して、それを選ぶとどうなるのでござるか?」


「そんな事をするのは初めてなので何も分かりませんが…最悪、死にます。」


「…へ?」


「死ぬまで行かなくても、負荷に耐えられなかったらヤバいことになるな。そりゃあ当然だ、何てったって2柱の加護だからな。」


「…まあ、この事もじっくりと考えて……」



「…いや、それにするでござる。」


「決断はやっ!そんなすぐ決めていいのかよ!?」


「無論でござる。」


「後悔しないですね?」


「うむ…」



「それでは、小屋を出て真っ直ぐ進んでください。ずっと行くと穴があるはずなので、それに飛び込んだら下界に戻ることができますよ。」



「…欲を言えば俺様の加護だけを強めて欲しかったが…命の恩があるなら仕方がないな。」


「私も同じ意見ですよ…。」



「それはそうと、この後すぐに死ぬことは許しませんよ?」


「そうだな。あと…まあ、その…何だ。」




「頑張ってくださいね。」

「頑張れよ!」




「…感謝するでござる……。」




そうしてカマキリは2柱の神との対話を終わらせると、小屋の外に出ていった。


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