第54話 開戦
イルスにレン達が合流して、蛇、トレントロードと戦うことになった。
「じゃあさっそく…って思ったけど、私は戦えないかなー。だって、魔力がもう切れちゃってるからー…。」
「そうなのか…なら離れた所で休んでいてくれ。
「うん、ごめんねー。」
そうしてイルスは離れようとしたが、その時カマキリが何かに気づいたようだった。
「…イルス殿も戦えるのではないか?」
「どういうことだ?もしかして物理で戦えってことか?」
「えー!それは無理だよ〜、だって力は全然ないもんー。」
「いや…そうではなくてな…。」
「レン殿の魔法で、イルス殿に魔力を分けられるのではござらんか?」
「それはできるが…俺の魔力も多くはないから、イルスが魔法を使えるくらい分けるのは無理だぞ?」
「ならば、某の魔力を使えばいいでござる。某はほとんど使わぬでござるからな。」
「…確かにそれならいいかもな。」
「そうだねー、それじゃあレンくん、よろしくー!」
「ああ、▼◀︎『共鳴』!」
『共鳴』を使うと、互いが繋がったような感覚があった。心なしか普段よりも結びつきが強いようにも感じる。
『おおおおおおお!!』
蛇はカマキリが登場したことに驚いて、今まで行動していなかったが、こちらが臨戦体制に入ったのに反応したのか大きく咆哮を上げた。
(某はこの蛇を相手取るでござる。)
(じゃあ私たちはトレントロードだねー。)
(よし、それじゃあ行くか!)
(バウッ!)
ーーーーーー
そうしてレン、イルス、ホムラの3匹は、トレントロードと戦うことになった。
トレントロードは木の根が切られて怯んでいるようだったが、レン達が前に姿を見せると激しく反応した。
『……!』
トレントロードはレン達に向かって枝を伸ばし、鞭のように振るって来た。
『バウッ!』
ホムラがそれに噛み付いた。そのまま口から火を出して枝に火をつけた。
その火は段々と燃え広がっていき、枝を一本燃やし尽くした。
(やっぱりホムラの火が効くみたいだねー。)
(そうみたいだな、それならホムラを主力として戦っていくか。)
(バウッ)
(…でも簡単にはいかなさそうだよー。)
トレントロードの方を見ると、燃えて無くなったはずの枝が元通りに再生していた。
(トレントロードも再生するのか…!
(長期戦になりそうだねー。)
するとトレントロードはもう一度枝を鞭にして振るって来た。
『バウッ!』
それもまたホムラが噛み付いたのだが…
(後ろだ!)
「▼▶︎『光壁』っ!」
ホムラの後ろからもう一本の鞭が迫って来ていたので、それを『光壁』で防いだ。
幸い、攻撃力はそこまでないようで、『光壁』が破られることはなかった。
(さっきのは様子見ってところかー。)
(ああ…今は少なくとも5本はあるな。)
トレントロードは枝でできた鞭を使って、四方八方からレン達を攻める。
それをホムラは噛みつきや引っ掻き、レンとイルスは『光壁』で回避していった。
『共鳴』による視覚の共有で、自分が見えない方向からの攻撃も避けられているので、だいぶ余裕がありそうだ。
(でも避けるだけじゃ勝てないよー。)
(確かにそうだが…近づく隙がない…!)
(うーん…あっ、いいこと思いついたよー。)
(ホムラくん、少し強めに火って出せるー?)
(…バウッ?)
(…ホムラ、強い火だ。)
(バウッ!)
(…やっぱりホムラくんは私の指示を聞いてくれないんだよねー、どうしてかなー。)
(…嫌われているんじゃないか?)
(まっさかー……え、ウソだよね?)
(本人…いや本犬に聞かなきゃ分からないな。…とりあえず今はトレントロードだ。)
(あー、うん、そうだねー…。)
ーーーーーー
レン達がトレントロードと戦い始めた頃…カマキリは巨大化した蛇と対峙していた。
『おおおおおお!』
「…完全に知性を捨てたでござるか。」
『おおお!』
蛇はカマキリに向かって赤い液体を吐き出した。この液体は着弾するとその地点から火が広がるというものである。
「ふむ…▲▼▶︎『退魔斬』…!」
カマキリはそれを鎌で真っ二つに切った。切られた液体はその性質を失ったのか、地面に落ちても火は発生しなかった。
「次はこちらからいくでござる!」
蛇に一瞬で近づいて鎌を振る。だが、それは蛇に当たらずに空を切った。
(狙いは合っているはず……ならば…。)
「▲▶︎、『飛刃』。」
鎌から斬撃が飛び、蛇へと向かっていった。
そして、そのまま蛇の後ろへと通り抜けていった。
「…幻影の類でござるか。厄介な…!」
『おおおおお!!』
蛇は尻尾で周りを薙ぎ払った。尻尾は木々を薙ぎ倒しながらカマキリへと迫っていく。
「ならば跳んで……っ!?」
カマキリはそれをタイミングを見て避けようとしたが、何かに直撃して吹き飛ばされてしまった。
「守りだけでなく、攻めにも使うのでござるか…。くっ…」
『おおおおお!!!!』
蛇はカマキリを見て嬉しそうに嘲笑っている。本当に知性が残っていないのか疑問に思う動きではあるが……。
「……!少々某でも頭にくるでござるな…。」
カマキリは基本的に温厚な性格ではあるが、蛇の笑い方に苛立ちを覚えたようだ。
「ならば、それを真似させてもらうでござる…▼◀︎『非心』…。」
『おおおおお?』
カマキリが『非心』を使うと、カマキリの気配が認識が困難になる程に薄くなった。
それにより蛇はカマキリを見失って、頭に疑問符を浮かべているというわけだ。
「不意打ちは余り好まぬが……▲▶︎『命刈』。」
蛇の後ろに移動して、頭に向かって鎌を振る。それは蛇の皮膚に吸い込まれていき、そのまま頭を切断した。
『おおお!』
「流石のお主でも、頭を切られては再生できないでござろう…これは勝負あったでござるな。」
切られた頭は地面に落ちて体も横に倒れた。
倒れてから動きだすような気配もない。
「…幻術を使うのみで肉体の強度はなかったようでござるな。」
しかも、カマキリは蛇の攻撃を一度受けたが、大して傷はできていない。それだけカマキリと蛇の間に力の差があったということだろう。
「念の為、残った体も切り刻んでおくでござるか…。」
そうしてカマキリは蛇の方に振り返った。
しかし…
「体がない……?」
さっき倒したはずの蛇の体が跡形もなく消えていたのだ。そして、カマキリは蛇の体が元々あった場所にあるものを見つけた。
「これは…小さい蛇でござるか…?先程までの蛇はどこに…。」
その時、カマキリはある方向から視線を感じた。
「…そこかっ!▲▶︎『飛刃』!」
『飛刃』を放った方向から、小さい「何か」が飛び出して来た。
『あーあ、ばれちゃったか。』
「まさかあの巨大な蛇も幻術でござるか…。」
『そうだよ。…もしかして、ぼくがほんとうにあんなことになってるとおもったの?』
「流石に弱すぎるとは思っていたでござるが……」
『うん、ここからがほんばんだよ。』




