第44話 鎌
レン達が蛇と戦っていた頃…
迷いの森には魔竜と鳥の魔族がいた。
『まさかもう一度やられるとは…正直舐めていました。今度こそ本気でいきますよ!』
『…風よ!暴風となりて…我が敵を切り……』
魔法の詠唱をしている時に、鳥が魔竜に向かって話しかけた。
「オイ、ムコウカラカゼヲキルヨウナオトガキコエルンダガ…」
『何ですか?風を切る音?そんなのどこから……』
シュッ シュシュッ
『っ!これは駄目です!』
『ドウシタンダ?』
『早く逃げてください!空を飛んで…ぐっ!』
何かに気づいたような魔竜は、鳥に逃げるように指示した。だが、その途中で蛇の体に飛んできた『何か』によって体に傷ができていた。
『風の刃…やはり……あの蟷螂!』
魔竜はそれが飛んできた方向を見た。
すると刃が飛んできた方向から蟷螂が現れて言葉を発した。
「おおっ言葉を使っている…。お主に聞きたい事があるのでござるが…」
『風よ…暴風となりて…我が敵を切り刻め!「****」!』
「▲▼▶︎『退魔斬』。…言葉は通じるが、礼儀は無いようでござるな。」
魔竜の放った風魔法を斬って消滅させると、蟷螂は蛇に近づいて来た。
『黙れ!』
「む…某は話を聞きたいだけでござる。お主があの物怪共をけしかけたのであろう?何故某を狙う?」
『貴方は覚えていないでしょうが…私の仲間の敵です!』
「敵…?確かに某は記憶が無いが…それもお主の仕業か?」
『そうです…貴方のような化け物と言えども、記憶がなければ脅威ではない…そう思っていたのに!』
「そうでござるか…ならばお主を斬れば記憶が戻るのでござるか?…覚悟せよ、全力で切り伏せる…」
そう言うと彼は腕に持つ一対の鎌を構えた。
『くっ…貴方はいつまで見ているのですか!すぐに逃げて下さい!』
『ダガオマエハ…』
『私は時間を稼ぎます…ですが…きっと私は負けるでしょう。なので貴方はこのことをウロボロス様に伝えて下さい…!』
『ウ…ワカッタ…。』
鳥はそれを聞くと迷いの森の奥に飛んで行った。
「…話は終わりでござるか。」
『ええ、始めましょうか…』
そうして魔竜と蟷螂の戦いが始まった。
ーーーーーー
(まともに戦ってもすぐにやられるだけ…ここは逃げましょう。)
戦闘が始まると同時に、魔竜は森の奥の反対…つまり森の外側に向かって逃げ始めた。
『風よ、大いなる風よ、その力を解き放ちたまえ…「**」!』
その際魔竜は風魔法を使って自らの速度を上げた。
次々と木の間を抜けながら逃げる。その速度は目で追えないほどの速さだった。
そして魔竜は蟷螂から遠く離れた場所まで逃げて、少しずつスピードを緩めて停止した。
(ここまで来れば…)
「遅い、はぁっ!」
突然横に蟷螂が現れて鎌を振り下ろす。
魔竜はすぐにそれを避けようとしたが、少し油断していたので完全には避け切る事ができなかった。
掠った部分は深い傷になっていた。
(少し掠っただけでこの傷…直撃してはいけませんね…)
魔竜の傷は一瞬で再生した。
魔物の蛇が持っていたスキル・『不滅』は魔竜も持っている。
その他にも似たようなスキルを持つので蛇とは比べ物にならない回復速度だ。
「前の蛇もそうであったが、傷が治るのでござるか…。では一撃で葬れば良いだけでござるな、▼◀︎『集中』。」
蟷螂は気を練り上げてそれを鎌に集めた。
そして魔竜は次の一手を考えていた。
『では…これはどうですか。』
次の瞬間、魔竜は景色に溶け込んで姿が見えなくなった。
「なるほど…『擬態』でござるか…。」
『これで動き回れば攻撃に当たることはありません…。』
「確かに姿が見えねば狙いは定まらぬな…では、これはどうでござるか?▲▲▶︎…『草刈』!」
蟷螂が鎌を振るうとその周りに斬撃が発生して、周りの木々が切り倒された。
魔竜はその内の一本にぶつかり、大体の居場所が明らかになった。
「その辺りでござるな…▲▶︎『飛刃』」
蟷螂は鎌を振るってその方向に斬撃を放った。
『風よ…その力を解き放ち…防壁となれ「**」!』
魔竜は風の防壁を作り出した。だがそれは風を貫通して魔竜の体に届いた。
魔竜の体が斬撃に触れると、その部分から尻尾にかけての部分が真っ二つに裂けた。
『うっ…』
「話す気になったでござるか?」
『舐め…ないでもらいたい!』
魔竜が気合いを入れると体が再生した。だが、とても大きな傷だったので回復に体力を多く消耗したようだ。
「これでも駄目でござるか。ならば次は…」
『逆鱗、解放』
魔竜がそう呟くと、3m程だった体長が1mまで縮んだ。
(これは長く続きませんが…使うしかありませんね…。)
「体が小さく…しかし威圧感があるでござるな。」
『風よ!大いなる風よ!この世の理を捻じ曲げ…全てを無に帰せ!「*****」!!』
魔竜が呪文を唱えると、魔竜の体から膨大な魔力が発せられた。すると、周りから風が吹いて魔竜の前に圧縮されていく。
そして魔竜はそれを蟷螂に向けて放った。
「これは…『退魔斬』では厳しいでござるな…。」
『貴方でもこれは流石に対処できないでしょう!』
「……聖なる力、それは魔を退ける…」
『うん……?』
「今こそ刃に宿りて…全事象を切り伏せよ…」
『その呪文は…まさか!』
「▲▼▶︎『聖・退魔斬』!!!」
蟷螂が鎌を振ると、魔竜の出した風の球は先程の魔法のように消え失せた。
『その魔法は…「聖魔法」!?それは「人族」しか習得できないはず…なぜ貴方が持っているのです!?』
「それは…某も知らぬ。今はただ頭に思い浮かんだ言葉を言って、鎌を振っただけでござるよ。」
『記憶はないはずなのに…どうしてここまで…』
「さて、次はお主の番でござるな。」
『くっ…』
魔竜は蟷螂に背を向けると、また逃げ始めた。今度は途中で止まることなく、ずっと全速力で逃げ続けていた。
だが、迷いの森も永遠に続くわけではない。やがて魔竜は森の出口が見えるところまで来ていた。
(まずい…外に出られては私の苦労が水の泡に…焦りすぎてこのことを忘れていました…!)
魔竜は慌てて周りを見た。蟷螂は追いついて来ていないのか、姿は見えなかった。
今度は撒けたのだろうか、魔竜がそう思った時だった。
「やれやれ…今度は随分と長い距離を移動したでござるな…。…おおっ?あの光は外でござるか!」
『!?』
「む?もしや撒けたと思っていたのでござるか?」
「それは無理な話でござる。最初に刃が触れた時に魔力で印をつけていたのでござる…その瞬間にもうお主が逃げられないことは決まっていたのでござるよ。」
『そんな…。』
「最後にもう一度聞こう…某にすべてを話す気はないでござるか?」
『…ありませんよ、そんなもの。たとえ死んでも言いません!』
『そうか…残念でござる。▲▶︎、『命刈』…。』
蟷螂が鎌を振り下ろして魔竜の体を切り刻んでいった。そして魔竜はそのまま絶命した…。




