第43話 合成魔法
イルスに『合成魔法』という蛇を倒すための手段を教えてもらった。しかし、肝心の組み合わせは自分で考えければならない。
あの蛇を倒せるような魔法なんて本当にあるのだろうか?そう考えながらも蛇の攻撃を避けていく。
『どうしました?動きにキレがありませんよ。』
蛇の突進、尻尾、酸のそれぞれの攻撃を避けるだけでもギリギリだ。それに加えて連続した攻撃も放ってくるので、対応するのに体力を取られてしまう。
ファイアドッグが時々噛みつこうとしているが、体をくねらせて避けられてしまう。
イルスが放つ『光球』や『灼光』が当たると、少し怯むが大ダメージにはなっていないようだ
今回の戦いでこれまで蛇に与えた大ダメージといえば、口内への酸、それに門番の針だ。
あれから蛇は口を開けて迫ってくる事が無くなり、酸で攻撃しても口に入らずに鱗に弾かれてしまう。
それなら門番の針が良いのだが、門番は蛇の突進をもろに喰らって倒れてしまった。
イルスが近づいて治療しようとしているが、それも蛇の猛攻によって防がれてしまっている。
『癒光』は対象に触れていないと効果を発揮しない。どうにかして遠くから治療ができればいいのだが…。
うん?遠くから治療…?
これだ!
ーーーーーー
※イルス視点
(2匹とも、魔法を思いついたから少し時間を稼いでくれ。)
(うん、わかったよー。)
(バウッ!)
レンくんが何か思いついたみたいだ。
すると『共鳴』が解かれたのがわかった。前に話したことをしっかり覚えているみたいだ。
こういう所はちゃんとしてるんだね…。
ところで合成魔法は私も使える。でも、蛇は私の光魔法を警戒しているから、たぶん使う隙はない。
レンくんの魔法は、酸が口に入らなければ大したダメージにならないと気づいてからは警戒しなくなった。
だから合成魔法を使って、警戒されずに蛇に当てる事ができる。
(よし、出来た!それじゃあ離れていてくれ。)
(うん、やっちゃってー!)
レンくんはどんな魔法を創り出したのかな。レンくんの前には少し大きめの光球があるけど、それが合成魔法だろう。
「これでお前を倒す!くらえっ!」
レンくんはそう言うと光球を放った。
でも…
遅い。すごく遅い。
あれなら誰でも簡単に避けられる。あんな物を創って、レンくんは何を考えているのだろう。
『魔力が大量に使われていますね…当たれば無傷では済まないかも知れませんが…』
『避けさせてもらいますね。』
「何だって!?あぁ、避けられるなんて!もうダメだ!」
なんか…変な感じがする。演技っぽいって言うか…本心じゃなさそうだ。
『これがあなたの切り札だったのですか?そこまで悔しがるとは…よほど自信があったようで……ふふふ…』
蛇に笑われてしまっている。
いまは『共鳴』で感情が伝わって来ていないのでレンくんが何を考えているのかは分からない。
でも少しだけ、レンくんから嬉しそうな感情が感じ取れた。何なのだろうか?
『ふふふふふ……ふぅ、おかしい……そろそろ終わりにしましょうか…。本気でいきますよ。』
「▲▶︎…『急所針』!!」
突然、門番が現れて蛇の頭を『急所針』で刺した。倒れていたはずなのにいつの間に…?
『ぐっ…ぐあぁ…何故…あなたはさっき私が!』
「…合成魔法、『癒光』+《と》『酸』。それを使って遠隔で治癒したんだ。」
『何だと…!』
レンくんはちゃんと考えていた!
蛇に放つことで攻撃と思わせておいて、本当の狙いである、門番の治癒が悟られないようにしたんだ。
蛇も予想外の攻撃に反応できずに『急所針』に当たった。それで、『急所針』は即死の視力だから…
(今の内だよー!)
(よし、体を『灼光』で燃やすぞ!)
「▲▶︎…」
『させませんよっ!』
『灼光』が発動する寸前に蛇がまた復活してしまった。
『まさかもう一度やられるとは…正直舐めていました。今度こそ本気でいきますよ!』
(間に合わなかったかー。)
(また倒すのは難しいな…さっきのも不意打ちだったから通用したのだろうし…)
『…風よ!暴風となりて……』
蛇が風魔法を詠唱している。この魔法は…さっきのと違って、完全に殺しに来ている魔法だ。
『我が敵を切り……何ですか?風を切る音?そんなのどこから……』
蛇の様子がおかしい。詠唱を途中でやめて、誰かと話しているようだ。
『っ!これは駄目です!早く逃げてください!空を飛んで…ぐっ!』
なんか凄い焦ってる…?どうしたんだろう?
『…シャア?』
操作が…切れた?よくわかんないけど今がチャンスだ!
『ファイアドッグ、噛みついてー!』
『バウッ!「バウゥワバウ」!』
ファイアドッグこ蛇の腹に噛み付くと、蛇は苦しそうに大きく口を開けた。
「じゃあ『酸』でとどめを…」
「それだと不確実だよー。私がやるからいいよー。」
まずは体に薄い光壁を貼って…
口に飛び込む!
そしたら中で…
「▲▶︎、『灼光』ー!」
『灼光』を発動すると周りが燃え始めた。その、周りというのは蛇の体内の肉だ。
つまり蛇の体が燃えているということだ。
そろそろ外が見えてくる頃かなー?
…レンくん、驚いてるだろうなー。
ーーーーーー
※レン視点
イルスがいきなり蛇の口から体内に入り、『灼光』を発動した。
確実な方法ではあると思うが、まさかそんなことをするなんて…
蛇の体は中から燃え、外まで火が出てきた。しばらくして中からイルスの姿が見えて来た。
「これでいいかなー。」
「結構凄いことするんだな…。」
「でもこれでいいんでしょー?ほら、跡形もないよー。」
蛇の体ははイルスの言う通り無くなっていた。先程、蛇も体がバラバラになると復活できないと言っていたので、それが本当ならこれで終わりだろう。
うん?今、何か動いたような…。
周りをよく見てみると、燃え残った肉片がイルスに向かって移動しているのが見えた。
移動した肉片はイルスの近くに来ると、イルスに飛びかかろうとした。
「イルスっ!危ない!」
「えー?なにー?」
『バウッ!』
ファイアドッグが跳んでいたその肉片に噛みつきた。そしてファイアドッグは口に入れたその肉片を食べてしまった。
「食べたのか!?吐き出したほうがいいんじゃ…」
「大丈夫だよー。魔物が成長するためには必要なことだからねー。」
「そうなのか?」
「うん、魔物は他の魔物を食べることで、体が大きくなったり、力が強くなったりするんだよー。」
「それじゃあファイアドッグは今ので成長したのか…。」
「たぶんねー。気になるなら『鑑定』してみたらー?」
確かにそれがいいかも知れない。言われてみれば、ファイアドッグを『鑑定』したことはこれまで無かったような気がする。
「▼▶︎『鑑定』。」
Lv6 名前 なし
種族 獣族
・技能
怪力 秀才 再生
・特殊能力
火犬
・称号(加護)
【⬛︎⬛︎神の加護】【獣神の呪い】
「この中だと…『再生』が習得したスキルか?」
「きっとそうだねー。」
順に能力を見ていったが、『火犬』という特殊能力が気になったので、イルスに聞いてみた。
「この『火犬』っていうのはねー、魔物だけが持っている特殊能力の一種なんだー。それに応じた技が使えたりするんだよー。」
「へぇ…でもあの蛇にはそんな物はなかったような…。」
「そうなんだー。じゃああの蛇はまだ生まれたばっかりだったのかもねー。」
「ああでもその代わりなのか分からないが、『魔竜の加護』って言うのがあったがそれは…」
「魔竜の加護ー!?それじゃああの蛇を操っていたのは、魔竜ってことになるよー!」
「その魔竜って何なんだ?」
「あー…レンくんはわかんないよねー。えっとねー、魔竜っていうのはー、魔神に加護を受けた竜族のことを指すんだー。」
イルスは説明を続ける。
「それで魔竜はほとんどが群れで行動しててねー、まあ、群れっていうよりも主と配下って感じだけどねー。」
「さっき蛇を操っていたのは、主と配下のどちらか分かるのか?」
「うーんとねー、多分配下だと思うよー。もし主だったら、遠くからの魔法でもこの辺りは更地になっていたはずだからねー。」
「そんなに強いのか…」
「そうだよー。その主みたいなのは全部で7匹いてねー、まとめて『七大魔竜』って呼ばれているんだよー。」
七大魔竜か…
きっと戦いにすらならないほど、力の差があるのだろう。遭遇したら終わりだな…
「ところでさっき蛇に異変があったが、あれは一体どうしたんだ?」
「何だろうねー?なんか焦っている感じだったけどねー。」
「迷いの森にいるはずだが…今すぐ行くか?」
「いえ、ちょっと待って下さい。流石に疲れたので休ませてください…。ただの門番にこれは厳しいですよ…。」
「そっかー。…レンくんも魔力は結構使ってたよねー?レンくんも休んだ方がいいと思うよー。」
「確かに…そう…かも……な。」
「レンさん!大丈夫ですか!?」
「……これは寝てるだけだよー。レンくんも疲れてたんだねー。」
「それなら良いのですが…突然倒れたので何事かと思いましたよ。」
「じゃあみんなで門の前まで運ぼっかー。」
「はい、そうですね。」
『バウッ!』




