第32話 ファイアドッグ
あれはまだ自分が巣にいた頃…
ハク先生に連れられて、チョウ族と共に外に出た時のことだ。
上空で魔物に襲われて、乗せてもらっていたチョウがバランスを崩してしまって自分は森へと落ちてしまった。
そこで遭遇したのが…
ファイアドッグ。炎を体に纏ったイヌだ。
襲われたので対抗していたが、その頃はまだ魔法も使えず、身体能力も高くはなかったので防戦一方だった。
きっとイルスが助けてくれなければやられてしまっていただろう。
そのファイアドッグらしき鳴き声が、洞窟の奥から聞こえてきた。
「うーん……これってファイアドッグの鳴き声だよねー…?」
「でも、イルスなら勝てるから大丈夫じゃないか?」
「いやー…前のはまだ幼かったっぽいから勝てたんだけどー……成体だったら厳しいかもー。」
「そうなのか…。」
あの時ので幼かったのか…。
だがこっちも成長しているはずだ。それにこちらは3匹いるので、有利に戦えるだろう。
「…そろそろ見えてくると思うよー。気をつけてねー。」
洞窟を進んでいくと、地面に落ちている羽根も多くなっている。その羽根を辿っていった先に何かの影が見えてきた。
しかし、その影を確認する前に、発動していた『光』が弱まってきていた。
「もう一度使うか…▼▶︎『光』」
光で照らすとその影の正体が分かった。
ファイアドッグ……は予想していたので驚きは無かったが、問題はその近くに倒れている『鳥』だ。
羽毛が毟られてしまったのか、所々素肌が見えている部分がある。見ていてとても痛々しい。
「イルス、あれがもしかして…」
「▼▶︎〜……そうだねー。あそこに倒れている鳥が魔族だよー。」
イルスが魔道具を使うと、棒は倒れている鳥に向かってその先端を向けた。その鳥が闇魔法の魔力を発していると言うことだろう。
鳥は気絶しているようだ。ファイアドッグがやったのだろうか…
「どうしますか?見つけたのは良いですけど、ファイアドッグがいて近づけません…。」
「…戦うしかないかー。」
『グルルル……グルァ』
「うん?何か様子がおかしいような……。」
「そうですか?私にはこちらに吠えているように聞こえますけど…」
「いや…まあ確認しようはないが…。」
話し方からファイアドッグに襲ってくる気は無いような気がした。でも言葉も分からないし確かめようはない。
「…えっとー…あっ、そうだー。」
「イルス?」
「レンくんさーそのファイアドッグにも『共鳴』って使えるー?」
「え?ああ、分かった…▼◀︎『共鳴』。」
イルスに言われた通りファイアドッグに『共鳴』を使うと、なんと成功してしまった。
イルスが魔法の説明をした時は、『共鳴』は仲間に対して使えると言っていたのだが……。
仲間とは何か、定義を考えさせられるな…。
「使ったがこれに何の意味が……って…あっ!」
使った瞬間、ファイアドッグの考えていることが何となくだが伝わってきた。
「何考えてるか分かるー?」
「ちょっと待ってくれ。今内容をまとめてみるから……」
種族が違うからだろうか。思考が読み取りづらくて時間がかかってしまった。
「ええと…どうやらファイアドッグが鳥を狩ったみたいで…いざ食べようとしてみると歯が刺さらないほど皮が硬かったらしい。」
「それは分かったけど…でも何で襲ってこないのー?魔物なら本能的にこちらを襲ってくるはずなんだけどー……」
『グルァ……』
「まだ何か伝えてきているるみたいだ。何々…?気がついたらこの洞窟にいた?この洞窟にいる前は…………え?」
「どうしたんですか?」
信じられないような内容を聞いてしまった。ここは一旦……
(イルス、ちょっといいか?)
(んー?何かあったのー?)
(このファイアドッグなんだが……『地球』にいた記憶があるらしい。)




