第30話 迷いの森②
棒が倒れた方向に進む。
これだけ聞くと、分かれ道などでどちらの方に進むかを決める場面のようにも思われる。
だがその棒は魔道具だ。その方向には目的のものがありそれに向かって倒れている。
「ここら辺でもう一回使ってみよー、▼▶︎ー」
イルスが棒を立てる。
棒から手を離すと棒は一瞬で倒れて、ある一方向を指した。
「うん、大体これまでと同じ方向だねー。このまま進んだら見つけられると思うから、警戒しておいてねー」
「わかりました!」
「魔族…いや、その鳥と戦う時に注意することはあるか?」
「その鳥が本当に魔族なら光魔法が効くと思うよー。あと、スズメバチ族の兵とかにかけられてた闇魔法から、たぶん洗脳系の魔法を使うと思うから気をつけてねー」
「洗脳、ですか…。対応する方法はありますか?無いとかけられたらどうしようも…」
「あるにはあるけどー…」
「じゃあ教えて下さい!」
「分かったよー。えっとねー洗脳の魔法を使われる時に、1つのことを考え続けるんだー。そうしたらかかりづらくなるよー。」
「1つのことって…何でもいいんですか?」
「うん、そうだよー。でもこの方法も確実じゃないからー……ないよりはマシって感じかなー。」
考えることか………
この世界に転生して、イルスと出会ってから時々考えていることがある。それは前世の自分についての記憶ことだ。
イルスが前に話していたことだが…
普通、転生は転生神によって正しい手順で行われる。
だが、不測の事態によって転生神の手を介さずに転生すると、魂が傷つきその部分を自動的に記憶を使って修復する。
記憶がないのはそのせいだという。
イルスによると、これまでもそのような事は何度かあったが、どのケースも時間が経つに連れて記憶は戻っていったらしい。
イルスもこの事についてはわからないそうだ。
「レンくんー?今は考えなくてもいいんだよー。」
確かに今は考える必要はなかった。洗脳の魔法を使われた時にすればいいか…
「ほら、ナオちゃんもう進んでるよー?」
考え事をしている間にナオは進んでいた。そんなに距離は無いのですぐに追いつけるだろう。
『ーーーーー。』
進もうとした所で、遠くから音が聞こえてきた。
「うん?何の音だ?」
「えっとー…あまり聞こえないけど、風の音じゃないかなー?」
「確かに言われてみれば風の音っぽいな。」
「うん、それより早くナオちゃんに追いつこー」
「ああ、そうだな。」
ナオの姿は見えていたので、すぐに追いついた。
「ナオちゃん待ってー。」
「あっ、ごめんなさい!ちょっと考え事を…。」
「レンくんにも言ったけど、それは魔法を受けた時でいいからねー。」
「はい、わかりました!」
「じゃあ進もー…って思ったけど疲れたなー。もう今日は休まないー?」
「空は…見えないから夜かどうかは分かんないな。」
「でもそんなの関係ないよー。この森、いつでも暗いからねー。」
「それもそうか。」
「休みましょう!…そうだ、一応交代で見張りをした方がいいですね!」
「決まりだねーそれじゃあレンくん最初はよろしくねー。」
そう言ってイルスとナオは寝てしまった。
じっとしているだけでも疲れは取れるので、しばらくはこのまま見張っているか……




