第2話 初めての食事
…お腹が空いた。
周りには自分と一緒に生まれた蟻達(以下、兄弟と呼ぶ)がいる。
兄弟達は生まれてからずっと寝ているように見える。
なぜなら、目が開いているのかどうかは分からないが、全く体に動きがないからだ。
皆はお腹が空いていないのだろうか?そろそろ空腹を感じてもいい頃だと思うが…。
それに先ほどまでこの部屋で会話をしていた2匹の蟻は、別の蟻に連れられて部屋の外に行ってしまった。今何をしているのだろうか…。
「ーー」
うん?外から誰かの声が聞こえたような…気のせいかな。
「ーーーーーー」
「ーーー」
いや、気のせいじゃない!誰かの声が聞こえる。しかもだんだん近づいてきているようだ。
「確か、この部屋だったな。」
「はい、そうです。」
部屋の入り口に注意を向ける。そこにはさっきまでこの部屋で話をしていた、2匹の蟻が大きな袋を背中に担いで持ってきていた。
「起きろ、飯の時間だ!」
キターーーーーー!やっとご飯にありつける!
その声に反応した兄弟達は、目を覚ましていく。目を覚ました蟻から、次々と袋の中身が目の前に置かれていく。順番通りに自分の前にも置かれていった。
それは透明な球体だった。薄い膜のようなものの中に、液体が入っているようだ。これは何なんだろう。
兄弟達を見てみると、本能に従うかのように与えられた球体に齧り付いている。とてもおいしそうだ。
よし、食べてみよう。
ガブッ
まずは顎で膜を破る。そうすると中から透明な液体が溢れてくる。出てきた液を口に入れて味わう。
ゴクゴク…
甘くて美味しい!砂糖か?それともこれは何かの蜜なのだろうか?
そこに運んできた蟻の会話が聞こえてくる。
「やはりいつ食べても『蜜玉』はいい物だな。」
「ええ、そうですね。このような物を出してくれる、『彼ら』には感謝してもしきれませんね。」
彼らもこれを食べながら会話をしていた。
どうやらこれは、『蜜玉』という名前で、『彼ら』という存在が蜜玉を生み出しているらしい。
前世で、【蟻はアブラムシが出す甘い汁を好んで食べる】という話を聞いたことがある。おそらく『彼ら』というのはアブラムシか、それに近い何かなのだろう。
そう考えているうちに、蜜玉を1個食べ切った。空腹感は既になく、1個でほとんど腹が満たされていた。
定期的にこれを運んできてくれるのだろうか。
それならば、飢餓て死ぬことはなさそうだ。