第24話 巣内の戦闘
闇雲に巣の中を進む。
すぐ後ろにはスズメバチ族の隊長が追いかけて来ている。
時々針を飛ばしてくるので、避けながら逃げている。
残りの魔力もだいぶ少なくなって、共鳴を維持することも厳しいだろう。
それに今は、巣の出口を見つけられずに迷ってしまっている。このままではやがて捕まってしまう。
これは強引に巣を脱出する必要がありそうだ。
そう思い巣の壁を壊しながら進む。
全身に力を込めて思いっきり体当たりをすれば、なんとか壁を破壊することができた。
「何!?壁を破壊するだと!ますます逃がすわけにはいかなくなった…!」
隊長の攻撃が苛烈さを増す。全力でこちらを仕留めに来ているみたいだ。
その時、イルスから念話が届いた。
(ごめんねーもうすぐ魔力が切れそうだから逃げるねー)
(分かった、気をつけて逃げてくれ)
「考え事とは余裕だな!▲▶︎『毒針』…!」
イルスと会話をしていて、隙ができてしまったようだ。
放たれた毒針をギリギリの所で避ける。避けた後ろにあった壁に針が当たると、針は壁を貫通して消えていった。
「お前だって巣を破壊してないか?」
「うるさい!今はお前さえ捕まえられればどうでもいい!」
毒針は壁を貫通するほどの威力だ。もしそれに当たってしまったらひとたまりもないだろう。
より一層、緊張感を持って逃げなければ…!
しばらく隊長から逃げている。
すでにこちらの魔力は切れた。
隊長の方も魔力が切れたのか、針を飛ばさずに体当たりで攻撃して来ている。
身体能力の差があるため、こちらの体力が少しずつ削られていく。このままだとやられてしまうだろう。
(こっちです!壁を壊して来てください!)
突然聞き覚えのない声が聞こえて来た。
そしてその声に従って声のした方向の壁を壊した。
壁の向こう側には自分よりも体の小さいスズメバチ族がいた。
「来ましたね……女王権限発動、▼▶︎『修復』」
そのスズメバチ族が魔法を使うと、自分が今壊したはずの壁が塞がっていた。
「緊急でしたので壁を壊してもらいましたが、うまくいったみたいですね。」
「お前は誰なんだ?あと、さっきの魔法は…?」
「私は女王の側近で、魔法は巣内のみで使うことができる、女王様の魔法です。今は女王様の権限を借りて使っているのです。」
「その女王はどうしたんだ?」
「ええ、女王様のことですが……あなたはどこまで知っていますか?」
「女王がはちみつを集めさせている…ということしか知らないな。」
「そうですか…そのように広まっているのですね…。」
「あなたには本当のことをお教えしましょう。女王様は今、病気で寝込んでおられるのです。そして、大臣が女王からの命令と称して、配下のハチにはちみつを集めさせています。また、その理由ですが…はちみつで病気を治せるらしいので、集めていると聞きました。」
「ところでどうして助けてくれたんだ?」
「そうですね…女王が病気であることは話しましたね?ですが、病気に対してはちみつは効果がないように思いまして……このままでは女王様の病気も、ミツバチ族との関係も悪くなっていくのは明らかです。」
「そんな時にあなた方が現れました。」
「あなた方が使っていた『光魔法』で女王の病気を治してもらいたいのです。そのためにここにお呼びしました。」
「病気を治す…?そんな魔法使ったことがないぞ…」
(私は使えるよー)
(うおっ)
イルスが念話をして来た。
(使えるのか?ちょっと今ここに来れるか?)
(はーい)
「来たよー」
「…⁉︎…あなたの仲間ですか。話では転移を使うと聞いてはいましたが、いざ実際に見てみると驚きますね…。」
「それで女王はどこにいるのー?」
「奥の方で眠っておられます。それでは私について来……」
そのスズメバチ族について行こうとしたその時だった。部屋の中に数匹のスズメバチ族が入って来た。
「ようやく見つけたぞ……侵入者……!」
スズメバチ族の隊長が兵を連れて来た。
すると隊長は女王の側近に向かって話しかけた。
「またお前か…この前も攫って来たミツバチ族を逃していたな…どういうつもりだ!」
「それは…逆に聞きますが、あなた達は今のままでいいと思うんですか!?おかしいとは思いませんか!」
「これは女王からの命令だ!」
「ありえません!現に今、女王様は病気で…」
「そんな話信じられるか!それに女王とは、先日会話をした。元気そうだったぞ!」
「え…そんな……でも…」
「話はこれで終わりだ。お前にはそこのアリ族と共に制裁を受けてもらおう。」
「ええっ、アリ族だったのですか!?」
「………知らなかったのか………まあいい、攻撃せよ!」
合図と共にスズメバチ族の兵が襲いかかって来た。
こちらの魔力や体力は少ない。この状態で戦うことは難しいだろう。
「この数には勝てません。逃げましょう!」
「だが出口の前に兵がいるぞ!どうやって逃げるんだ?」
「少し時間を稼いでください……魔法を使います。」
「わかった。イルス、行けるか!?」
「がんばるー」
「よし、▼◀︎『共鳴』…!」
体に僅かに残っている魔力で共鳴を使う。
時間稼ぎが目的なので、『光壁』を使えば良いと考えた。そしてイルスは考えていたことを汲み取ったようだ。
「▼▶︎『光壁』ー」
スズメバチ族達との間に光でできた壁が現れた。
その壁を破ろうと攻撃を繰り返して来ているが、壊れる気配はない。
「あとどれくらい時間を稼げば良い!?」
「もう少しです、頑張ってください!」
この調子なら光壁は壊れることはないだろう。
そう思っていたのだが…
「兵よ下がれ。その壁は並の攻撃では壊れないようだ…私がやろう。」
スズメバチの隊長はそう言うと、魔力を溜め始めた。目に見えるほどの魔力を身体中に纏っている。
「…▲▶︎『急所針』!」
隊長は魔力を彼の針に集めると、光壁に向かって勢いよく刺した。
針の刺さった所からヒビが入り、壁は砕け散った。
「イルス!もう一回使えるか?」
「ごめんねーもう使えないー」
「これ以上は持たないか…。」
「いえ大丈夫です、準備ができました!…女王権限発動、▲▶︎『麻痺』、▼▶︎『魔力回復』、▼▶︎『構造変化』!!!」
スズメバチ族の兵の動きが鈍り…自分達の魔力が回復して…巣の内部が造り替えられていった。
「女王の権限ってすごいな…。」
「巣の中だけですけどね。ってそんなことよりも!この先に女王様がいらっしゃるので、早く会いに行ってください!」
「わかった。イルス、行くぞ!」
「りょうかーい」




