第11話 アブラムシ族
ボウと相手のチョウとの間で一悶着あったが、ようやく空の旅が始まった。
空を飛んでしばらく経つと、大きな花がある国が見えて来た。
「ほら、向こうに見えるのがチョウの国、別名『花の楽園』だよぉ。」
「その呼び方は少し恥ずかしいのですが…」
「でも本当のことだよねぇ。僕はいい名前だと思うよぉ?」
「はぁ……まあ良いですけどね…。」
チョウの国、別名『花の楽園』
その名の通り国中に花が咲き乱れている。
中心にはとてつもなく大きな花がある。どれくらいの大きさかというと,国の外には木が生えているのだが、その木の2〜3倍程の大きさがある。
ちなみにその木は自分の全長の10倍はあると言っておこう。
そしてその花の周りには色とりどりの花が咲いている。これらの花も木と同じくらいの高さはある。
それぞれの花に、チョウが1匹ずついる。花は家のようなものなのだろうか。
ていうか、今はチョウと一緒にいるわけだから、聞いてみればいいのか…。
そう思い、自分が乗せてもらっているチョウに聞いてみた。
(ちょっといいか?)
(ん〜?なに〜?)
(チョウ族が1匹ずつ止まっているあの花ってどういうものなんだ?)
(う〜んとね〜あれは家みたいなものだよ〜。あっ、あと〜私たちは花の蜜を吸って栄養をとってるから〜食料でもあるんだよ〜)
(へぇそうなのか。ありがとう)
(えへへ〜どういたしまして〜)
それからもう一回りしてからチョウの国を去った。
「次はここだねぇ。アブラムシ族の村だよぉ。蜜玉はここで作られているんだぁ。」
アブラムシ族の村は狭く、村全体が硬そうな草でできた壁で囲まれていた。
やがて一行は草で作られた門の前に着地した。
門の前にはアブラムシ族の門番がいた。先生はその門番の元へ向かっていった。
「こんにちはぁ、今日は『村長』と話がしたくて来たんだよぉ。今いるかなぁ?」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
門番はそう答え、国の中へと入っていった。
しばらくしてから門番よりも一回り大きなアブラムシが出て来た。
「やぁカンロン、調子はどうかなぁ?」
「上々で御座いますぞ。ハク様。」
「それはよかったよぉ。あと、いつも言ってるけどぉそんなに堅苦しくなくていいよぉ。もう少し気軽にさぁ。ねぇねぇ。」
「いえ、そういうわけにはいきませんぞ。我らアブラムシ族は、アリ族達に日々助けられながら生きておるのですから。」
「むう、そっかぁ…」
先生はアブラムシ族の村長、カンロンの返答に不満そうな表情を見せた。
そんなに敬語が嫌なのか……
先生と話した後、カンロン村長はこっちに近づいて来た。
「こちらにいらっしゃるアリ族の皆様方は……お弟子さんですかな。」
「そんな所だよぉ。まあ正確には生徒なんだけどねぇ。」
「そうでしたか……ところでハク様はどんなご用でこちらにいらっしゃったのですか?」
「生徒たちにアブラムシ族との関係を教えたくてねぇ。せっかくだから、村長に直接教えてもらおうと思って来たんだぁ。」
「それは頼ってもらえてありがたいですな……このカンロン、誠心誠意を持って教えさせていただきますぞ。」
「だからそんなに大袈裟に言わなくても良いってばぁ。」
そうして今アブラムシ族の村長はハク先生と一緒に、リンに乗っている。
それなりの高さに来た時、カンロン村長が話し始めた。
「我らとアリ族の関係でしたな。それを話すためには、先祖の代まで遡る必要がありましてな……」
「そもそもアブラムシ族は、虫族の中でもとても弱い種族でしてな。天敵が来た際には抵抗すらできずにみな倒れていたのです。」
「できることといえば体内で生み出した蜜を出すことのみ……このままではアブラムシ族の存続が危ういと考えた、我らの先祖はアリ族に助けを求めたのです。」
「アリ族も初めは乗り気でなかったのですが、我らが排出する蜜がアリ族の好みに合ったようで、アリ族はその蜜を差し出すことを条件に、我らアブラムシ族を守ってくれるようになったのですな。」
「その関係は今も続いております。生徒の皆様も蜜玉を食べて育った様にですな。」
「これで一通り話し終えましたぞ。」
「うん、ありがとうねぇ〜。」
「喜んでもらえたのならよかったですぞ。ところでこの後はどちらに向かわれるのですかな?」
「う〜ん今日はもう帰ろうかなぁって思ってるよぉ。どうしたのぉ?」
「いえ、新鮮な蜜玉をお土産に持って帰って欲しいと思いましてな……如何なさいますか?」
「それならもらっていこうかなぁ。」
「それでは国の中に取りに行きたいので、国の門の前に向かってもらえますかな?」
「わかったよぉ、チョウのみんなよろしくねぇ。」
チョウ達は門に向かって飛んで行った。
門の近くまでくると、村長はチョウから降りて国の中に入っていった。
村長は入ってすぐ、村の中から出て来た。その後ろには蜜玉を持ったアブラムシ族が数匹並んでいた。
「みんな1つずつ持ってねぇ。」
自分たちのもとへ、蜜玉が運ばれて来た。
(ありがとう)
お礼を言いながら蜜玉を受け取る。運んできたアブラムシ族は心なしか嬉しそうにしている。
他のアリ達に対しても同じような反応だ。やっぱりアブラムシ族はアリ族を尊敬しているのだろう。
「それじゃあ帰ろうかぁ。」
チョウ達はアリの巣に向かって飛び始めた。
「う〜ん、やっぱり蜜玉はおいしいねぇ〜。リンも食べるぅ?」
「いえ、遠慮しておきます。」
もう少しでアリの巣に着く頃だというのに、先生はアブラムシ族にもらった蜜玉をすでに食べ始めてしまっていた。
周りを見るとギコやケン、ボウもお腹が空いたのか、蜜玉を食べていた。
(セキは食べないのか?)
(ハイ、ワタシは腹に『貯まって』いるノデ……)
(確かに、セキはそうだったか。)
スキル・蓄積の効果で食物をエネルギーにすることができる。だが、その反対に貯めておいたエネルギーで、腹を満たすこともできるのだという。
みんなを見ていたら自分も蜜玉を食べたくなった。
そうして、自分がもらった蜜玉を食べようとした…
その時だった。
『ピィ、ピィーーー!!』
緑色の鳥が飛んできた。




