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13.怠惰なる



優雅に微笑む吸血鬼様に暫く見惚れていた私に吸血鬼様が手招きをする姿を見てハッと我にかえる。




「あっ、すみません!今戻します!」

『ありがとう、楽になさい』

「いえ……あのっ」

『ふふっ、緊張しなくてもいいわ、好きに話しなさい』

「あ、はいっ、ありがとうございます」




吸血鬼様はいつの間にか玉座に腰掛け、足を組みながらこちらを見ていた。そんな姿も様になっていてとても素敵です




『まさか、また同族に会えるなんてね……嬉しいわ』

「私もお会いできて、とても光栄です」

『まあ、嬉しい事を言ってくれるわね、本当に可愛い子……貴方、名前は?』

「あっ、私サーシャといいます……この子は、カリオペです」

(わたくし)はアイリーンよ。好きに呼んでちょうだい』

「はい、アイリーン様」

『ふふっ、自己紹介は終わったし、そろそろ此方にいらっしゃい』

「えっと、アイリーン様……私まだ行き方が分からなくて」

『あら、簡単よ?この絵の中に入れば良いだけよ』




絵に入る……盲点でした。




『さあ、早くいらっしゃい』




肖像画に近づき、アイリーン様のいらっしゃる絵に触れるとするりと手が中に入っていきました。すごい本当に絵に入れる!



身体を絵の中に入れると一瞬にして世界が変わった……あれ?確か肖像画の後ろには階段があると本に書いてあった気がするが、ここはまるで謁見の間です。




「私が、ここに直接呼んだのよ……さあ、サーシャこちらにいらっしゃい」




謁見の間に棒立ちで辺りを見回していると、アイリーン様が玉座から私を手招きした




「ようこそ……若き純血の吸血鬼、会えて嬉しいわ

(わたくし)こそが、怠惰なる吸血鬼の王女(ヴァンパイアクイーン)アイリーンよ」

「え、怠惰なる吸血鬼……?」




《ネームドボスモンスター:怠惰なる吸血鬼の王女に遭遇しました》



[称号:未知との遭遇を取得しました]



《ワールドアナウンス:この世界で、初めてネームドボスモンスターに遭遇したプレイヤーが現れた為、ヘルプ欄にネームドボスモンスター・ネームドモンスターが追加させました。》




ネームドボスモンスター……?




「本来なら私が戦いたい所だけど、貴方は特別……私の分身であり半身でもある騎士(シュバリエ)のこの子と戦ってもらうわ」




アイリーン様の座っていた玉座の後ろから剣を携えた黒髪の男性が突如現れ私を睨み付けてきた




「……アイリーン様このような弱き者に何を期待してらっしゃるのですか」

「ふふっ、良いじゃないアドラー、ちょっとした腕試しよ」

「腕試しにもなりませんよ、こんなもの……」




怠惰なる吸血鬼の女王アイリーンの騎士(シュバリエ)

アドラー Lv.???[闇]

怠惰なる吸血鬼の王女に愛と忠誠を誓っている騎士




格下の存在を見下し、せせら笑いながら此方にゆっくりとした足取りで近付いてくる男に冷笑を返す。



私……バカにされてますよね、自分より弱いからと見下されてる……正直言ってムカつきます。レベルが表示されないって事は、かなりの格上……でも、それが何だと言うのか



冷笑を返した私に少し驚いたのか、驚愕の表情を浮かべ後ずさったアドラーに今度は私から近づく。




「アドラー……手合わせ、よろしくお願いします」

「は?……手合わせ?お前のような弱き者の分際が、調子にのるなよ!」

「ふふっ、その言葉……そっくりそのまま返します傲り高き騎士様」

「小娘が、いい気になるなっ……!!」


「2人とも睨み合いは終わりにして、そろそろ始めてちょうだい」




静かに睨み合っていた私達を心底愉快そうに見つめていたアイリーン様からの声がけにより睨み合いを辞めお互いに少し距離をとります。




「殺されても文句は言うなよ」

「そちらこそ……」




腰に携えていた剣を抜き構える姿はまるで騎士のよう。いや本物なんでした



アドラーは、私が動くのを待ってるようなので、手始めに遠距離から氷魔法(アイスボール)華魔法(フロルボール)を何発か飛ばすが、剣で簡単に弾かれ距離を詰められる。



斬撃を重心を後ろに下げる事でギリギリで避け、肉体操作で強化した片足でアドラーの顎を狙い思いきり上に蹴り上げるが躱されたので距離をとる為、手に毒魔法を華魔法に付与して作った毒華爆弾(ポイズンフロルボム)を発動させ、そのまま殴る様に投げつけ爆発させ隙をつくりバク転で距離をとるが、HPバーが余り減ってない……毒が効いてない、もしかして状態異常無効?



剣からの斬撃を避け、隙をみて攻撃を繰り返すが一向に反撃の手段が見付からない……このままじゃジリ貧です。




「大口を叩いていたがその程度か?小娘……」

「……むかつく」




認めたく無いがやっぱり強い、攻撃を繰り出しても軽々と避けられる。私は反応速度強化と移動速度強化で強化してギリギリ避けてるのに本当に悔しい……




「負けを認めて逃げたらどうだ?今なら逃がしてやるぞ」

「……馬鹿にして」




本当にむかつくが、打つ手が見付からない……この謁見の間は全体が大理石で作られていて植物がない。それに華は剣で切られてしまう。闇属性のアドラーには闇魔法はあまり効かないし、氷も砕かれる……相性が悪いとしか言えないが何とか見返してやりたい



そんな私の様子を見て何か思ったのか、カリオペがアドラーに対し鱗粉を巻き散らし氷魔法で攻撃を続けてくれていた




「何だこの鱗粉……ちっ、邪魔な虫だ!!」




その時、カリオペの攻撃に何故か苛立ったアドラーが、カリオペ一瞬にして斬り裂いた




「カリオペっ……!!」




斬られた瞬間カリオペは光輝き髪飾りの状態に戻り私の手元に戻ってきた




「弱い主君を持つと家臣は哀れだな……こうして簡単に死ぬことになる」

「……カリオペは、家臣じゃありません。私の大事な相棒です」




髪飾りのカリオペを髪に付けながら、

心の中でカリオペに謝る




ごめんね、カリオペ私が弱いから痛い思いさせちゃった……もうこんな事絶対にさせないから、私強くなるから……ちょっと待っててね




「私、弱気になってたみたいです」

「……それがなんだ」

「強くなりたいって思ってたのに……弱気になって諦めそうになって、カリオペに痛い思いまでさせちゃいました……ほんと情けない。でも、カリオペが思い出させてくれました、頑張れ諦めるなって……だから、私負ける訳にはいきません。」




カリオペがくれたチャンスを絶対に無駄にはしたくない。だから見ててね……髪飾りをそっと撫で、改めてアドラーに向き直ります




「逃げ出さなかったのは、褒めてやろう」

「……逃げませんよ」




さあ、仕切り直しです。




ゆっくり息を吐き、深く息を吸う。ちゃんと息をして

頭を巡らせろムキになるな冷静でいろ自分を見失うな




まず華魔法を何発か放ち、アドラーが攻撃を弾いてる間に、氷魔法で剣を作りあげ一気に距離を詰め斬りかかるが、いとも容易く受け止められ距離をとられそうになるのを肉体操作で身体を強化し剣の鍔迫り合いに持ち込む



剣で動きを止め続け氷魔法でアドラーの剣と足元を凍らせ身動きが出来ないようにする。




「これで私に勝てるとでも?」

「これだけじゃない」

「……ッなんだ!!」




アドラーの動きが鈍った隙に華魔法を使った時に出した花びらに触れ、全てを華なる者で薔薇の蔦に変えアドラーの身動きを氷と薔薇の蔦を使い2重で封じ、至近距離で魔眼を使う。




「さあ、《私の眼を見なさい》」

「う、ぐっ……!!」




最初私はアドラーには状態異常が効かないのかと思ってしまったが、カリオペが鱗粉を撒き散らした時の、あの反応……状態異常が全て効かないなら、あんな反応はしない。




カリオペの鱗粉の状態異常は、

毒、麻痺、氷結、幻惑、魅力、混乱




毒と麻痺は効かなそうだが、

精神系の状態異常は効くんじゃないですか?




「うぐぁ…私はっ……!!」

「そのまま、《動くな》」

「うがぁっ……!!!」




やっぱり精神異常は効果があった、

カリオペのおかげですね。



動くなと命じたが魅了がそれほど効いていないのか、苦しそうにしているアドラーの後ろに素早く回り込み、渾身の力で首を絞めアドラーの首元に噛みつき吸血する



吸血されている相手は力が抜けていくのかアドラーの抵抗はどんどん弱まり続けている。このまま血を飲み干してやろうと吸血を続けていると




「そこまで……」




アイリーン様の制止の声が聞こえ

首絞めと吸血を止め、後ろを振り返る。




「サーシャの勝ちね、おめでとう」

「私の勝ち……」

「ええ、そうよ……」




《ネームドモンスター:怠惰なる吸血鬼の女王の騎士 アドラーを討伐しました》


[初討伐ボーナスとして、スキルポイントを10取得しました]


[称号:ノブレス·オブリージュを取得しました]


[称号:怠惰に挑みし者を取得しました]



《ネームドボスモンスター怠惰なる吸血鬼の王女からの試練にクリアしました》


[称号:怠惰なる吸血鬼の愛し子を取得しました]


[レベルが、Lv.20に上がりました]


《今までの行動により、取得が可能なスキルが複数あります》


·

·

·


アイリーン様が玉座から立ち上がり、ゆっくりと歩いて来て呆然としている私の頭を優しく撫でてくれる。




「良く頑張ったわね、私の小さなお姫様(プリンチペッサ)




その言葉を聞いた途端、力が抜けて座り込みそうになった私をいつの間に復活したのかアドラーが支え立たせてくれた




「先程までの無礼をお許し下さい、姫」

「え、アドラー……さん?」

「どうか、アドラーとお呼び下さい」




アドラーさんは私に向き直ると、跪き頭を下げてきました。




「えっ、頭を上げて下さい!私もいっぱい失礼な事したので気にしないで下さい」

「いえ、申し訳ありませんでした」

「いや、私の方こそ……ごめんなさい」

「ふふっ、アドラーも貴方を認めたのよ……さあ、その子も回復してあげましょう?」




アイリーン様が髪飾りに触れるとカリオペに回復魔法(ダークヒール)をかけてくれたのか、髪飾りが光輝きカリオペに戻る




「カリオペっ!……ごめんね、カリオペ……痛い思いさせッ…いたっ!」




小さな氷の礫をカリオペが私に飛ばしてきた……もしかして、怒ってる?




「謝るのではなく、ありがとうと言ってほしいのでわなくて」

「謝るのではなく……ありがとう?」




アイリーン様の言う通りだと言うように翅を羽ばたかせアピールするカリオペ




「……そっか、助けてくれてありがとう。カリオペ……大好き」




カリオペが嬉しそうに私の周りを飛んでくれる。私の相棒は、本当に優しくて可愛くて最高ですね




「本当に仲良しね……これなら、きっと……」

「……きっと?」

「ふふっ……これは後からのお楽しみ」




アイリーン様は、少し意地悪げな笑みを浮かべたが、それ以上は教えてくれなかった。そんなアイリーン様も素敵です




「さあ、話の続きは場所を移しましょう……サーシャ歩ける?」

「あっ、はい大丈夫です」

「じゃあ、行きましょうか?……アドラー行くわよ」

「はっ、お供致します」




先を歩く2人の背中を見失わないように私達も歩きはじめる。次は何処に行くのだろうか



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― 新着の感想 ―
[一言] 精神系状態異常がアドラーに効いたと言うことはアドラーは純潔の吸血鬼じゃない?
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