第3話 オークは脳筋!
「グウォォォォォォォォ!」
「ぅおらァァァ!」
3メートル程の身長のオークが棍棒を右上段へ雑に振り上げゴウッという鈍い風切り音を立てて振り下ろしてくるが、俺は左下段からの斬り上げにより棍棒ごと袈裟斬りにするのだった。
さすがに体格が段違いだからゴブリンよりはまぁまぁ強いが、それでもまだまだ雑魚なことには変わらなかった。
さっきみたいに強力な紅焔魔法を使えば、コイツラなんて一瞬で焼き尽くせるし楽なはずだ。なのに、直接接近戦をしたくなるのはなんでだろう。魔法を使ったほうが楽なのは分かっているのに。
そういえば、例の専属スキル《クリエイティヴ・クラフト》はあんまり使っていないな。せっかく良いスキルなのに宝の持ち腐れじゃないか。
とりあえず魔法でも創ろう。創作魔法第一号は、あっちの世界で人気のジブ○アニメ「ラ○ュタ」のアレを応用してみることにした。
手順はこうだ。一つの小さな光の球を生み出して、それを大爆発させる。理想は超新星爆発と同等の眩しさかな、見たことはないけど。
レベルⅤ紅焔魔法の《プロミネンス・コア》のように物理的攻撃力はないものの、きっとオークは失明して動けなくなるはずだ。
俺の人差し指の上に光球を生み出し、俺の頭上から5メートルほどの高さで停止させ、そして……。
「バ○ス!!」
光球が膨らみ太陽の数十倍もの明るさで辺りを照らされる直前にそう言い放った。そしてオーク共が倒れ伏したのだった。
目ッ、目がァァぁ!!
――とはならないように、事前に土魔法で作った部屋に身を潜め、光が収まるのを待つ。
次はいろんな属性の魔法を使ってみるか。
俺はまだ紅焔魔法しか使っていないが、同じく攻撃力が高そうな雷撃魔法を使ってみよう。まずはレベルⅠ雷撃魔法《ライトニング・ブラスト》。両腕を胸の前に突き出し手の方へ魔力を集めた。
「はぁぁぁぁぁあ!!」
魔力を一気に出すと雷が迸り前方へ一直線に打ち出されると、オークが爆散して50メートルほどの道が開けた。直撃していない個体も余波で気絶したからかオークが移動することで道が埋まることはなかった。
《Information:エクストラスキル《無詠唱》を取得しました。》
無詠唱:詠唱せずに魔法を放つことが可能になる。ただし、消費魔力が2倍になるが魔法の名前を唱えると1.5倍になる。
あれ、俺詠唱してなかったっけ? まぁいいや。
早速それを使って、《ファイア・アロー》をもちろん多重起動で放つ。
約100本もの炎の矢がオーク共を焼豚に変えていく。うん、スキル《無詠唱》のおかげで多重起動がとても楽になった。詠唱が必要ないからね。
この調子じゃぁ、余裕で200〜300なんて余裕で行けるんじゃぁないか?
……なんていってたら出来ちゃいました。あと焦げた異臭が強すぎて鼻がもげそうだ。あぁなんか消臭する魔法ないかなぁ。
次はレベルⅠ雷撃魔法《ライトニング・ブラスト》でやってみよう。もちろん200以上の多重発動だ。
俺は魔法のイメージを構築し終えると、それに合わせて魔力を一気に放出した。そして、真っ白な雷光が放射状にほとばしる――
直後、凄まじい倦怠感に襲われた。剣の俺の魔力は切れていない。なのに、動悸、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が一斉に俺の意識を飲み込んでいった――
■■■■■
「体が重いな……」
俺は気を失っていたようだった。辺りを見回すとオーク共が動き出している様子だった。ふぅ〜危ない危ない。もうちょっと気を失ってたらワンチャン死んでたかもな。いやぁ、マジで危ないわ。
さて、今から大量殲滅を初めて雑魚とはお別れすることにしよう。
今から放つ魔法に耐えられるオークは、おそらくよっぽど奥にいるやつか上位種だけだと考えられる。残数約600。できればすぐに終わらせて、後ろにいる強そうな奴と戦いたい。
放つ魔法はレベルⅧ雷撃魔法《オーバーエレキトリック・ショックウェーブ》。 電撃が波のように広がる攻撃魔法だ。オーク程度であれば即死だろうから多重発動しても意味がない、つまり魔力を過剰注入して効果範囲と威力を底上げしたほうが良いね。
なんか俺、魔力の扱い方に慣れてきている。やっぱ慣れは大切だな。あと《暁闇剣》の魔力ももうなくなってきた……。
溜めた魔力を解き放つ。
俺を中心に光が広がった直後、光を追うように龍の如き幾千の雷撃が唸りを上げ大量のオークを喰い暴れ回る。
そして、直撃したオークは焦げ、奇跡的に逃れられたオークも余波で痺れ、動けなくなり、やがて硬直したところを雷撃に命を喰われる。
天の怒るが如き破壊をもたらした魔法が収まると、もうそこに動いているものはいなかった。
――ぐるるるるるるるるるるるるっ!
という音とともに10秒くらいの大きな欠伸をした。たった今、疲労の限界で空腹と眠気が一斉にきやがった。ふざけんな!この状況で!
まぁ、オークが全滅したのを確認したら、飯食って寝よう。
え? 食い物は何かって?
「……」
何もないや。でも、オークって猪だから、解体すればなんとかなるかな?顔も猪っぽかったし。
でもほぼ全部丸焦げでなくなっちゃった。テヘペロ♡
……なんて呑気なことを考えている場合じゃない、ちゃんと考えなきゃ。どうしよう。そんな思考をめぐらしていると、あたりの雷光が収まって、今までの中で一番強い気配を感じた。
とりま鑑定しよ。――《鑑定》!
――――――
名称:アース・オーク
種族:魔獣・亜人
状態:平常
Lv.32
命力:689 魔力:223 腕力:534 知力:55 敏捷力:200 体力:217
スキル
土魔術Ⅳ 剣術Ⅲ 命力上昇(小) 敏捷力上昇(中)魔力上昇(小)見切りⅠ 咆哮Ⅲ
Tips:オークの上位種の一種。命力、腕力がDランク程度だが、それ以外だとE~F程度なので、ランクはE。また、このオークから取れる肉は非常にうまく、C級食材に登録されている。
――――――
通常オークよりランクが1つ高いな。知力55って……、進化してもノー筋なんだな!
「グギィィィィィ!」
「はッ!」
レベルⅦ剣技ソードスキル《プリシジョン・スラッシュ》。脳筋魔獣のラスボス(?)は、食い物に飢えた眼光を強く放つ俺から出会い頭に精密な斬撃を受け、一瞬で頸を刎ねられ血祭りにあげられるのだった。
《Information:レベルが50に上がりました》
《Information:蒼穹剣レインカルナティオと暁闇剣マジックテイカーのグロースレベルが50に上がりました》
《Information:ユニークスキル《残光Ⅰ》を取得しました》
残光Ⅰ:武器攻撃でダメージを与えた際、与えたダメージの1割与える。レベルⅩのときは与えたダメージの10割を与える。
取得条件:レベル50までノーダメージでいること。
へぇ。じゃぁ、レベルⅠ剣技ソードスキル《スラッシュ》が実質二連撃になるのか。このユニークスキル強いね。
そして、俺は今夜の飯になろうことである土猪を解体した。
この世界の解体は非常に簡単で、スキルを発動しながらナイフを刺すだけで、勝手に解体され『ドロップアイテム』という形式で素材になる。他にも、稀に『レアドロップアイテム』がドロップする。
スキルレベルが高いほど、取れる素材が多くなったり、レアドロップ率が上がるらしい。
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テケテケテッケテッケテ〜♪
はい!料理コーナーだよ!今回のメニューは、土猪の塩焼肉、白ごはんでーす。
米はどこで採って来たかって?そんなの、専属スキル《クリエイティブ・クラフト》で創ったに決まってんだろ?
鍋はレベルⅩ土魔法《メタルジェネレート》で生み出した鉄を、レベルⅠ地磁魔法《ソーサラス・シェイピング》で色々変形して作りました〜。
食器は、銀食器を作りたくてを銀を大量に生み出そうと思い切って結構魔力を込めたら、なぜかミスリルが生み出されましたんで仕方なくそれで食器を作りました〜。ちょうど使い切って、箸と皿とフォーク、スプーンをそれぞれ20個作れました。
続いてそれ全部売ったらどんくらいするんだろーとか思いながら、肉を焼きます。適当に塩(クリエイティヴ・クラフトで生み出したヤツ)をふりかけます。
また、テキトーに作った飯盒に米を入れて、火にかけます。
それぞれいい感じにできたら、ミスリル製の皿に盛って、完成で〜す。
……ただの焼肉と米なのに、ミスリル皿に盛っただけですごく高級感が。
「いただきま~す!」
うん、噛んだ瞬間に肉汁がドバーって。いいね。美味しい。
短時間で完食した。久しぶりの美味な食事だったぜ!
あぁ、寝床どうしよ。まだまだ多くの気配の潜む戦場のど真ん中で寝たら流石に死ぬと思う。
色々考えた結果、約50メートルの大穴を土魔法《エレファント・ディグ》で掘り、生み出した鉄と亜鉛を適当に混ぜて、長さ7メートル、太さ1メートルの針状にしたやつを敷き詰めた。この穴に落ちて針に刺されば、流石に魔獣も死ぬだろう。
そして、その横に奥行30メートル程の穴を掘り、テキトーにベッドを生み出す。
ということで俺は安眠できるだろう。ということで、おやすみ――
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前世から夢の世界を自由自在にコントロールできる能力がある。今はその世界で今日の出来事を振り返っていた。
いきなり視界が暗転し、神と会話をし、転生したこと。
たくさんのゴブリンやオークに囲まれ、初めての戦闘をしたこと。
オークの焼肉が意外に美味しかったこと。
色々あった。初めて異世界に来てから。こんな貴重な体験は素晴らしいものだ。これから街に行って、冒険者になって、人とコミュニケーションをして、仲間を作って……。
そんな想像をしてから、明晰夢を見るのをやめ、深い眠りに落ちた。
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――とある森の奥深く。
そこでは、Bランクのウルフ系魔獣の群れが二匹の小さな魔獣の子を取り囲み、子供が弱いものいじめをするかのように攻撃していた。
子ら必死に応戦するが、まだまだ体が小さいためなかなか打ち勝つことが出来ず、長い戦いで疲労が溜まっている様子である。
「グラァァァ!」
「シャァァッ!」
襲われている子たちは、傷つき、恐怖を味わって、どんどん疲弊していく一方なのに対しウルフは、子たちの攻撃に倒れる個体もいるが、俄然優勢である。
魔獣の子たちの目には、救護を求めるような弱々しい光が満ちていた。だが、未だ彼らはとある少年に助けられる未来が待っていることを知らない。
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翌朝かな?
日をつけて明かりと暖を取っているが、全く日が差さないので、時間帯がわからない。極小の穴でも掘ればよかった、と後悔している。
さて、針だらけの部屋でも見てみるか。
ベッドから降り、たぶん惨状であろう場所へ向かって進むに連れて、段々と、鉄の錆びたような血の匂いが強くなっていく。
「し、刺激臭が」
やがて、閉めていたドアを開く。すると――。
大量の魔獣が突き刺さったことで針は血や体液により真っ黒に汚れ、体を貫かれた死体が累々と積み重なり屍の山を作り上げているという、まさに地獄絵図が広がっていた。
……とりあえず土で埋めて、地上に戻ろう。
地上へ空を飛んで向かうと、段々と陽光が見えてきた。まだまだ穴に魔獣が落ちてきているので、風魔術で吹き飛ばしながら向かう。
魔獣の気配は約3000。ちょっと大変だな。まぁ良いや。
一番近くにいる魔獣らを鑑定してみると、D、Eランクの魔獣がほとんど占めていた。
まだ残る眠気を振り払い剣を構える。牽制として魔法を放ち、どれだけ繰り返して来たかもはや検討もつかない突撃を再び敢行した。
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