第28話 製作開始
なんやかんやあった夜が明け、すがすがしい朝を迎えた。
フィーナの背中に回されている俺の腕を戻す。彼女はパチパチとまばたきを繰り返し、桜色の綺麗な瞳が俺を見つめた。
「ふあ〜。フィーナ、おはよう」
「ん」
朝日を浴びると、わずかに残る眠気がなくなり、意識が完全に覚醒する。
「ほら、フェルルもファルルも起きて!」
「「スゥー」」
「やれやれ」
なんとも心地よさそうに寝ている。ハンバーグを出したら飛び起きるだろうし、まだ寝かしてやるか。
俺とフィーナは、仲良く横に並んで歯を磨き始めた。
「スカイ、ご飯食べたらすぐに結婚届を出そう」
「おう、もちろん」
この世界にも結婚届がある。と言っても、地球のものよりも簡素で、名前と年齢と種族しか記入しない。
基本的に結婚式は挙げないようだが、貴族は結婚パーティーみたいなものをするのだとか。そこは知らん。
「出したら、一旦人目のつかないところに行こう」
「ん?なんで?」
「今日から、フィーナ専用の装備を作り始めるんだよ」
「ほんと?嬉しい!」
「今日は剣を打とうかな。馬鹿みたいに強力な素材を使うから、大いに期待してね!」
「ん。する!」
フィーナがキラキラとしたまなざしで俺を見つめる。両目に星が今にも宿りそうなほどに。
くだらない言葉を交わし、歯磨きを終えた。
ハンバーグを皿に盛ると、二匹が起きた。「ヘアッ、ヘアッ」と子犬がご飯を待つときのように、舌を出してこっちに走ってきた。
「「いただきます」」
「「オフッ!」」
何回食っても飽きないこの味ッ!恐るべし、永遠神竜の肉ゥ!
■■■■■
俺たちは、結婚届を出したあと、街の外へ出た。
役所に行って結婚届を記入してる途中、背後から嫉妬の目線を受けたのは気のせいだろう。
上空を走っていると、山に洞穴を見つけた。
ミスリル剣を打ちまくっていたときに潜んでいた洞穴と同じような広さと大きさだったので、そこで作業をすることにした。
作業しやすいようにセッティングをする。反射炉も創っちゃおう。
換気は……。問題ないか。
早速、作業を始めよう。効率よくするために、とりあえず分身を一体生み出しておこう。
エターナライト・ドラゴニウムを十分に加熱し、剣の形に形成していく。剣を作るのは久しぶりだ。
「きれい」
「ワン!」
「オン!」
カァンカァンという軽やかな音がなるたびに、凄まじい量の火花が散る。一つ一つの火花の色が違うので、幻想的に思える。
ただ、全方向に火花が散るので、顔面に襲いかかってくるのが怖い。防具の障壁スキルのおかげで無傷でいられているが。
防具がなかったら全身大火傷をしていただろう。回復魔法があるので悲惨なことにはならないだろうが。
いい感じに剣身が出来た。砥ぐ前だけど、鋭くて切れ味も良さそうだ。
剣身を水に入れて冷やし、プリムスティルとハルモリウム合金を流し込むための溝を内部に作る。
その部分から剣全体へ魔力が流れるというようにすれば、魔力を効率よく込められると考えたのだ。
プリムスティルとハルモリウムを反射炉に入れて溶かし、均等に撹拌させる。
プリムスティルを溶かすのは本当に大変だった。全力で紅焔魔法を反射炉に放ってやらないと全然溶けない。
プリムスティルを溶かしたあとの反射炉にミスリルを試しに入れたら、一瞬で蒸発してしまった。
それほどの高温にしないといけないのだ。
そして、全部流し込み終えた。
一瞬、剣が溶けちゃうんじゃないかと心配したけど、そんなことが起きる気配もしなかった。
どうやら、エターナライト・ドラゴニウムはプリムスティルよりも熱と衝撃にわずかに強いようだ。
しばらく役目がなかった分身に、柄を作らせるか。
柄と鍔の部分はプリムスティルで作って、桜の木をイメージした装飾をあしらう。永遠神竜の革のグリップもつけ、せっかくなのでダンジョンコアの欠片をどこかに埋め込もうかな。
柄頭には永遠神竜の魔石をはめ込んで、スイッチを押すと膨大な魔力が剣に込められるという設計にしよう。
その間に、剣の総仕上げに取り掛かろう。
刃先を砥いで鋭くし、回路式を組み込むための樋も少し大きめに作る。形をかっこよくするために刃区のちょっと上を削って細くした。
砥ぐのが本当に大変だ。30分全力で砥いでも鋭くなった感じがしない。
樋も20センチほどの長さで作って、筆記体の英語で「フィーナ」と彫った。
魔力を通すとその部分が赤く発光する。それが、なかなかきれいである。
さらに、回路式をやたらと組み込んでいく。ステータスアップのものや、ソードスキル強化のものをガンガン描いていった。
フィーナに好きな属性を聞いたら、「んー、水?」と言われたので、撃流属性の強化した回路も入れた。フェルルの轟雷爪に組み込んだ強化雷撃回路の撃流版のようなものだ。
ちょうどお昼時になった頃、柄と剣身が完成した。昼飯食ってから、くっつけるとしよう。
全員分のハンバーグをアイテムポケットから探し出し、さらに盛って配る。
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