第26話 帰還
全員からミスリル剣を回収し、ジェネラルゴブリンの魔石を取ったとき、16層のボス部屋の奥に通路を見つけた。
ボスを倒す前は無かった気がするけど、倒した後に出現する通路なのだろう。
フィーナをお姫様抱っこ、リライをサイコキネシスでおんぶして、細い道を進んでいくと部屋に着いた。
短い道は、この部屋に繋がっているようだった。
広くもないが狭くもない部屋の中央には、台座のようなものがあり、その上にダンジョンコアと思われる複雑な形をして脈動している物体がふわふわと浮かんでいる。
魔法陣のような謎の円盤がぐるぐると周り、その中のコアが脈動するたびに色が目まぐるしく変わっていて、神秘さと奇妙さが入り混じっている。
あのジェネラルゴブリンはコアを守っていたのかも知れないな。
グレンから『核消滅石』を受け取り、コアを消そうとした。
いや、これ全力で攻撃を与えれば、普通に壊せるんじゃないか?
「隊長!何してるんですか!?」
「ああ、剣で壊せないかと思ってね」
「いくら隊長でもそれは無理だと……」
「ま、やってみるよ」
俺の腕が霞むと、蒼穹剣を振り降ろされた。
コアには……、数10センチほどの切込みが入った。
「え、コアに傷を入れただと!」
さらに、暁闇剣を出して双剣士モードで続ける。
ギアを上げていくと、ガンガンという音と音の間が次第になくなっていく。見るからにコアが傷ついていった。
「は、速すぎだろ」
「剣には傷ひとつ付いてねえぞ!」
「腕と剣筋が見えないな」
「まじか。グレンさんでも見えないっすか」
そして、ガキーンと一際大きく音がなると、ダンジョンコアが砕け散った。大きな欠片は、みんなに見えないような速さでアイテムポケットに入れた。
「「「「スゲェ!」」」」
《Information:称号《ダンジョン踏破者》を獲得しました》
直後、ゴゴゴゴと地響きがなると、視界が歪んでフェーズアウトすると、視界が白く染まる。
気づくと、仮拠点に戻っていた。小鳥のさえずりや、木の葉が擦れる音が聞こえ、短い静寂が訪れる。
数秒後、ダンジョンを踏破した実感が湧いたのか、冒険者たちの喜びの歓声が沸き起こった。
「「「「「いぃやっっっったぁぁ!!!!」」」」」
俺たちも軽くノッて、「「「わーい」」」と喜んだ。
あとは締めて、街へ帰れば本当に依頼が完了だ。冒険者ギルドに報告するまでが依頼だからね。
「みんな、お疲れ様!死者は一人も出なかった上に、大幅に強くなった。早く帰って、祝勝パーティーでもしよう!」
「「「「「おおおおぉ!」」」」」
「多分俺が奢ることになるから、思う存分食って、飲みまくってくれ!」
「「「「「よっ、太っ腹!」」」」」
帰りは補助魔法をかけずに、ゆっくりでもいいかな。みんな頑張ってくれたし。
これから始まるパーティーに胸を躍らせる陽気な冒険者達を連れて、街へと帰っていった。
■■■■■
街に入ると、ここまで速く帰ってくるとは思わなかったのか、門番や街民たちが驚いていた。
真っすぐ進んでいき、冒険者ギルドへと入っていった。
「ゴブリンダンジョン攻略隊、ただいま戻りました!」
「あら、スカイさん。早いですね。ところで、隊長はどこですか?」
「あ、隊長は俺になったんだ」
「そうだ。途中、隊長をスカイに変わってもらうことになったんだ。全員満場一致で、俺もちょっと悔しかったな」
「グレンさん。お疲れ様です。では、皆さんでギルドマスターに報告しにいきましょう!」
「はい」
俺たちはギルドマスターの部屋へ入っていき、いろいろ説明した。
ホブゴブリンが非常に多かったこと。大幅にレベルが上ったこと。死者を一人も出さなかったこと。
そして、ジェネラルゴブリンを倒したこと。
にわかに信じがたかったのか、ビンセントが「そんなバカな」という表情をしていたので、魔石を見せたら目を白黒させて驚きを隠せていなかった。
「よく、ジェネラルゴブリンを倒しましたね」
「俺たちは、スカイさんがフルボッコにして弱ったジェネラルゴブリンをただぶっ刺しまくっただけですけどね」
「スカイ君、よく死にませんでしたね」
「まぁ、ギリギリでしたけどね」
「ご主人さま、あれのどこがギリギリなのです?とっても一方的だったのです」
「なっ、本当ですか?リライ君!」
リライよ。本当のことを言うでない!嘘も方便ということを教えてやらなければな。
「後はランクアップ手続きをしましょう。ジェネラルゴブリンを倒して強くなっているようですから、1ランクは上がるでしょう。報酬も弾んでおきます」
「やったー!」
「ついにEランクから抜け出せる……」
「Cランクだ!」
「宴ぇ!」
冒険者たちは、様々な方法で喜びを表現していた。嬉し涙を流す人もいるな。
「スカイくんとフィーナさんは、Bランクに上がってもらいましょう。一応、二人ともAランクへのランクアップ申請を国に提出しておきます。国内に存在するギルドのギルドマスター10人が許可を出せば、Aランクにランクアップとなります」
「「ん、分かった」」
俺はフィーナの口調を真似して答えた。ハモったので、少し吹き出してしまった。
でも、そんな簡単にAランクに上がれそうになさそうだ。
10人もの許可が必要になるということは、かなりの高ランクなのだろう。
「登録してから一週間ほどしかのに、Aランクに上げる?どんな話だ!」と考えるギルドマスターのほうが多いだろう。
もし通るとすれば、俺が各地で大きな成果を出すか、ギルマスが説得力の高い申請理由を書くかくらいだろう。
その後、1時間ほどかけて全員のランクアップ手続きと素材買い取りを終わらせ、全員に報酬などを配り始めた。
あとは、最後に俺たちが報酬を受け取れば、冒険者たちのお待ちかねの祝勝パーティーを始めよう。
「こちらが、スカイさんとフィーナさんの報酬、二人分合わせて、大金貨14枚と金貨20枚です!」
「うおー。大金」
「恐ろしい額だな」
■■■■■
攻略隊に参加した冒険者25名全員がテーブル席に座り、俺の声を待っている。
俺は肺いっぱいに空気を吸い込み、よく通る声で言った。
「みんな、攻略お疲れ様!高い料理、高い酒。なんでも頼んで、思う存分に食いまくってくれ!」
「「「うおおおおお!」」」
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