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第25話 荒れ狂う怒りと憎しみ

 相手はSランク。永遠神竜とのギリギリの戦いに勝ち、大幅にレベルが上った俺にとっては、Gランクのゴブリンと同じようなものに感じられる。


 リミッターを外した俺だったら、瞬殺なんて容易いだろう。


 だが、今回はそうは行かない。できるだけ大きな苦痛を与えて殺してやる。


 憎かった。自分でも不思議に感じられるほど憎かった。ここまでの感情を抱くのは初めてかも知れない。



「ゲ、へキェ」

「さて、どうやって嬲り殺そうか……!」



 さらに、俺の殺気が強まった。もうコントロールなんて不可能だ。


 濃密で最恐の俺の殺気を受けた者は気絶する寸前の状況に追い込まれている。


 リライだけはギリギリ正気を保っていられているが、尻尾を股に挟んで怯えていた。


 悪かったな。今は抑えられない。


 心のなかで誤りながら、俺は動き出した。


 まず、ゆったりとした動作でゴブリンの四肢をふっとばし、攻撃手段と移動手段を奪う。


 俺が近づくと後退りしていたが、壁に付く前に後ろから倒れ伏した。


 200000を超える命力の2〜3割も削ったが、苦痛を与えるには十分あるだろう。


 自動命力回復は持っているようだが、再生は持っていなかった。サンドバックとなるには十分だ。



「さぁ、俺の憎しみを受け取れ――!」

「グギャァア!」



 まず、神属性を込めた殴打を御見舞する。ダメージを与えすぎないように、力加減を調整するのが大変だ。


 神属性を使った理由は、少ない神力でも膨大な苦痛を与えることができる。


 痛覚に始まらず、精神的な苦痛など、たくさんの痛みが与えられる。


 ダメージの増加も恐ろしいものだが、それと同じくらいヤバかった。


 神力をまとった俺の拳から、金色の神気が溢れ出し、輝く。


 その拳がジェネラルゴブリンに当たるたびに、光が波紋のように美しく広がり、憎しみが晴れていく。



「波○オーバードライブ!」

「ギィィィィィ」



 魔力が干からびるまで殴り終えた頃、憎しみは完全に消え失せ、ジェネラルゴブリンの命力も残り30000程となった。


 あとは、冒険者たちに倒させよう。


 俺は冒険者を呼ぶため、再び封印をした。部屋を高密度に埋める、俺の殺気が霧散する。



「おーい、来てくれ!とどめを刺してくれ――え?」



 扉越しに見えたのは、冒険者たちが倒れ伏しているところだった。


 鑑定で確認してみたら、状態に『気絶』となっていたので、死んでいるわけではなかった。


 神力や溢れ出た神気の波が冒険者たちまで届いていたのか?


 回復魔法で全員を気絶から回復させて改めて指示を出すと、冒険者たちは恐る恐るボス部屋に入っていった。



「ギャァァァァァ!じぇ、じぇ、ジェネラルゴブリン!」

「大丈夫だ!気絶している。起きる気配もない。今から渡す剣でゴブリンを刺しまくってくれ!」



 俺はミスリルの剣を一人一本ずつ渡す。


 もちろん、フィーナにもやらせる。思い切り俺の殺気を受けていたので足がおぼつかないけど、回復魔法無しで立てるだけでもすごいと思うな。


「なんでこんなにミスリルの剣を持っているんだ!」という声も聞こえたが、聞こえないふりをした。


 冒険者たちが剣をぶっ刺し始めると、ジリジリと命力が減り始めた。


 フィーナとグレンが刺したときだけ、ガクッと減っていた。


 やがて、完全に命力がつきた頃、経験値が流れ込んできた。


 俺は1レベル上がったが、多くの冒険者たちは20レベルも上がった。


 攻略前は10レベル足らずだったFランク冒険者も、今では50レベルを超えている。


 グレンも10レベルほど上がって70レベルに到達し、フィーナも80レベルを突破した。



「すげー!力がみなぎる!いや、力が抜けていく……?」

「め、めまいが」



 どうやら、この世界には『レベルアップ酔い』というものがあるらしい。


 グレンによると、それは、急激なレベルアップによるステータスアップに体が追いつかないから起こるのだそうだ。


 つまり、その症状は体がなれるまで続くんだろう。


 そりゃぁ、一気に20レベル以上も上がったら、そんなふうになるのだろうな。


 フィーナや俺はそんな感覚にならなかったが、耐性があったのだろう。個人差があると、グレンから付け加えられた。


 さて、俺たちも休もう。


 リライはぐったりしているし、フィーナは一回死を味わったのだ。完全に意識が覚醒したとき、泣きそうな顔をしていた。


 俺も、神力を散々使ったからか、体に重くのしかかる倦怠感がヤバい。全身筋肉痛の10倍くらいだ。


 痛覚無効スキルのおかげで筋肉痛のような症状は一切ないのが唯一の救いだ。



「スカイ……」

「フィーナ……大丈夫か?」

「だめ。体も心も……」

「そうか。頑張ったな……!」

「抱きしめて欲しい。癒やして」

「え?ああ、うん」



 そう言うと、フィーナは全身の力が抜けたようにフッと倒れ、あぐらをかいて座る俺の胸元に収まった。


 預けられた頭を抱き寄せると、唇がキュッと結ばれて、少し表情が明るくなったのがわかった。



「フィーナ……。ずるい」

「リライも、殺気を受けさせて悪かったな」

「ご主人さまのバカ」



 リライが後ろから抱きついてくる。


 顔を覗いてみると、今にも泣きそうな顔をしていたので、撫でてやってから抱き寄せてやると、安心したような顔をした。



「落ち着くまでこうしているか。二人は頑張ってくれたしな」



 俺の体と二人の小さな体を密着させ、二人が落ち着くのを待った。



 ■■■■■



「起きて二人とも。今から動き始めるんだから」



 あれから3時間がたった。


 みんなレベルアップ酔いから回復し、俺の指示を待っている。


 だが、リライとフィーナが甘えた顔で体を預けて眠るので、指示を出せない。


 冒険者たちの中には、嫉妬している者もいた。



「おーい、まじで起きてくれ!」

「えー、もうちょっとなのです」

「うごけないー」

「……みんな、済まない。二人は俺が担いで、もう動き始めよう」

「「「「うらやましい……」」」」

「「スカイ君の地味に照れた顔可愛い!」」

「……」



 男性陣の嫉妬と女性陣の黄色い声援を受け取り、行動を開始した。


 というか俺、今照れてたのか?ま、仕方ないけどね。美少女二人に甘えられたら、照れないでいるのは難しい。


 だって、18歳の男の子だもん。成人しちゃったけどね。

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