第22話 「スカイ隊長!」
俺は1分でゴブリンダンジョンの一層を走破し、ボス部屋に着いた。
勢いよく開けると、重そうな大きな扉が、石ころを投げたときのように吹っ飛んでいった。「ギャァァ」という悲鳴が聞こえてくる。
「誰だ!?」
「あ、俺です」
「は!?」
「「「「えーー!!」」」」
部屋の中にいた冒険者たちは、頭を手で守りながらひっくり返った。さすがに、こんな速さでつくと思っていなかったのだろう。
「「「「「「速すぎだろ!!!!」」」」」
「さすがご主人さま」
「ん」
こんなに酷く驚かれてもなー。かなり遅くしたつもりなんだけど……。
「にしても、お前たち。スカイによくついてこれたな!」
「いや、隊長。それ、俺たちの実力じゃないんだよ。急に超強い追い風が吹いてきたり、移動速度が上がったりしたんですよ。このスピードで走ってる自分が怖くなりましたよ」
「しかも、スカイさんがホブゴブリンを雷撃魔法や紅焔魔法やソードスキルで跡形もなく消し飛ばすんですから。私たちはただ走っただけなんです」
「ははは。2属性も使えるのか……って、ホブゴブリンが湧いてただと!?」
「え?なにか問題でも?」
「ああ」
グレンが、急に声色を変えて説明し始めた。
それによると、魔獣が生まれるのは、魔力が凝り固まって自然発生するか、繁殖して増えるかの2通りらしい。
ゴブリンダンジョンでは、魔力の量が少なく、自然発生することはごく稀なことで、発生してもただのゴブリンである。
つまり、ホブゴブリンが湧くなんて、通常ではありえないのだそうだ。それほど強力なゴブリンがうようよいる可能性があるんだって。
「ひとまず引き返したほうが良いかもしれん……。みんなはどう思うか?」
「えー?スカイさんが居れば余裕だと思うけどなー」
「殲滅力も高いですから」
「魔法も2属性も使えるようだし、剣術に関しては計り知れないし。お仲間もお強いようですから」
「ここまで生きてこられたのも、『魔天剣と神狼の輝き』のサン人のおかげなのかも知れないな」
「そうだそうだ!」
「ここから全部君たちに任せた!」
「「「はぁ……」」」
ちょっとちょっと、みんな俺に丸投げじゃないか。
「あの、ゴブリンってレベルの経験値としては美味しいですけど、戦いの経験値としても美味しいんです!みんな戦ってくれなきゃこの先強い冒険者がいなくなっちゃいますよ!」
「ごもっともだな。これは俺たちの試練の一つだ。スカイさんたちに任せてばかりじゃ、なんの意味もない」
「そうだ。俺たちも戦うけど、君たちの経験を奪うようなことはしたくない。みんなで戦えば、みんなで強くなれる」
「「「「「おう!」」」」」
「明日からも頑張っていくぞ!」
「「おう!」」
「「「「「スカイ!スカイ!」」」」」
俺が声を上げると、みんなが良い返事を返してくれた。なぜかコールも始まっているし。
《Information:スキル《士気高揚》を入手しました》
「ん。スカイの言う通り」
「さすがご主人さま。みんなをまとめられているのです!」
「みんな!隊長としてはスカイを隊長としたい!俺の声がけよりもなんだかみんながまとまっているからな!俺も見習いたいぞ!」
「もちろんだ!元隊長!」
「元隊長グレン!私たちもそう思います!」
「おいおい、いきなり『元隊長』はやめてくれ。少しメンタルが傷つく」
「……やれやれ。ま、みんな楽しそうだから良いか!」
うーん、隊長をやるからには……。しっかり攻略と超効率的なレベリングを両立したいからなー。やっぱり、補助魔法による超強化が一番いいな!
「では。改めまして隊長となったスカイだ!みんなをうまくまとめて、誰一人死者を出さずに攻略完了が一番大きな目標だ!」
「「「「オオオオオオ!!!」」」」
「そのためには、休息もしっかり取ることも大事だから、しっかり食って寝てくれ!見張りは俺がやるから、気にせずに寝てくれ」
「それじゃスカイ隊長が壊れますって。俺たちにもやらせてください!」
「大丈夫だ!俺は2日3日寝なくてもパフォーマンスには問題はない!」
「「「「スゲェーーー!!!」」」」
「もし、万が一やばくなったら、うちのパーティーメンバーに変わってもらうから安心してくれ!彼女たちと一緒にレベル上げをしてきたんだからな」
「ん!」
「えっへん!」
二人とも、俺の横に胸を張って立った。明らかに自信が溢れ出ている。その自信にふたをするつもりはないかのようだ。
そして、ご飯を食べ終えたあと、パーティーごとにテントを、ソロの人には寝袋を渡した。
数分後に流れてきたぐがーーーといういびきの重奏を聞きながら、俺たちもテントに入った。
超大音量のいびきの響きにかき消されそうなヒソヒソ声で、なんか聞こえてくるな。
「うわー。いいなー。あんな美少女に挟まれて寝てみたい」
「美少女じゃなくてもいい。とにかく美人と添い寝したい」
「俺もあれくらいの女のコと寝てぇナァ……。想像しただけで……。ぐへへへ」
どうやら、俺を羨む声だった。
そんなことは気にせずに、堂々と大きなテントを広げ、その中で大きな布団を敷いた。
いかにも寝心地の良さそうな布団に潜り込むと、一瞬で両脇に何かが入り込んでいた。
「おい、二人とも。ダンジョン内は危険なんだから、抱きついて寝ないでくれ」
「なんで?危険じゃない」
「所詮ゴブリンなのです。危険じゃないのです」
「その気持ち分かるけどな。いつでも緊張感を持って行動するのは大事だぞ!」
「スカイが守ってくれる」
「信頼してるのです」
「はいはい。分かった分かった」
■■■■■
朝は、意外と早かった。
なんと、グレンが、朝になると巨大な深い音を鳴らす魔導具を持っていたのだ。
非常に目覚めの悪い朝だったが、俺の補助魔法や回復魔法で眠気とかいろいろなくせばいいだろう。
もちろん、全員にかけてやった。
急いでテントをみんなで畳み、それらを俺のアイテムポケットにしまうかわりに、全員分の食料を渡す。
そして、ものの1時間で攻略準備は整ったのだった。みんないい表情をしていて、いつでも戦いが始まっても良い状態だった。
「頑張るぞぉ!!」
「「「「「オオオオオオ!!」」」」」
俺が活を入れると同時に、全員に補助魔法を重ねがけした。
その後も、恐ろしいペースで攻略が進んでいき、ついに10層のボス部屋に到達した。
層を下がっていくたびに、敵が大幅に増えていったけど、軽いけがは負っても深い傷を負うことは全く無かった。
レベルも、平均的に見て15〜20は上がっている。回復役にはボスなどのとどめを刺させて、しっかり経験値が入るようにした。
そして、10層のボス部屋の立派な扉を、ゆっくり開ける。
そこにいたのは――。
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