第19話 攻略隊出発日
5日後の朝。ついにゴブリンダンジョン攻略隊の出発日になった。
ここ5日間、これと言ったことは無かった。
強いて言えば、フィーナのレベルアップ速度が遅くなったことと、寝心地が悪くなったことだな。
レベル50を超えてから、一気に遅くなって、5日間で2しか上げられなかった。
少し前から速度が落ちたなと思ったけど、たぶんゴブリン程度では経験値が少ないんだろう。
でも、100倍レベルアップボーナスが発生したので、全ステータスが3000を超えた。命力、魔力は6000を超えた。
それときに、フィーナがエクストラスキル《超幸運》を得たようだ。
後者の方は、毎晩毎晩フィーナとリライが俺を抱きまくらのように両脇から抱きついてくるからだ。
暑いし、寝返りもしにくいから、睡眠で最も大切な「N3睡眠」というものを長い時間とれていないんだろう。日中のパフォーマンスが下がっている。
しかし、「やめてくれ」と言えないのが俺なのだ。
フィーナとリライがひどくがっかりすることもあるのだが、前世は二人の女子に挟まれて寝るという経験はしたこと無いからな。
あと、リライに抱きつかれる右手から、朝起きたときにやわらか~い感触も伝わってきて、男の朝の生理現象を抑え込むのに苦労する。
これをあっちの男どもに話したら、どんな顔して羨まれるのだろうか。想像がつかないな。
「ああ!くだらない煩悩を捨てて、さっさと朝食を食わないと、攻略隊の集合時間に間に合わないぞ!」
「うう〜、なんですかー?もうちょっとー……」
「むにゅ……。スカイ、もっと〜……」
起きようとして腕を動かそうと、二人とも腕を抱きしめる力が強くなって、右腕が2つの柔らかいモノに挟まれた。
リライは寝ぼけているようだが、フィーナはどんな夢を見ているのかな?
「起きろー!!」
「わぁ!」
「ん!?」
「今日はゴブリン攻略隊出発の日だ!集合時間は10時!野営とかのために寝具も買うんだから、余裕持って動くぞ!」
「わかったのです。……もう少し夢を見ていれば」
「良いところだったのに……」
「二人とも、なんの話だ?」
「「なんでも無い」です!」
「そうか」
■■■■■
今は、屋敷近くの雑貨屋にて、野営用のテントを買いに来た。
銀貨2枚もする高級寝袋もあったので、三人分買おうとしたら、止められた。
理由は「添い寝できない」というものだった。
仕方なく、二人にお願いされた、銀貨8枚もする超高級野営用布団セットを買った。
サイズはキングサイズほどもあり、当然、テントも布団が入るサイズのものを買わないといけない。
なんやかんやで銀貨9枚ほども使って、野営セットを買った。
偶然、会計カウンターの後ろにある時計が目に入った。
「やべっ。あと1分だ!!店員さん、ありがとうございました!」
「ああ、どうも……」
俺は秒速でアイテムポケットに野営セットをぶち込んだ。
勢いよくドアを開け空中を駆けられないフィーナをお姫様抱っこし、空中疾駆を全力で使って冒険者ギルドへ疾走していった。
丁度、10時についた。ものすごくギリギリだったな。
あまりにも急ぎすぎてスピードが出ていたのか、フィーナにものすごく風圧がのしかかっていたようで、目を痛がっていた。
風魔法で風圧を打ち消したら、気持ちよさそうに風を感じていたけどね。
ホールは、攻略隊に参加する冒険者たちが、様々な雰囲気を放って集まっていた。
ゴブリン雑魚だからと舐めてヘラヘラしている者。ゴブリンの数の多さにビビっている者。なぜか緊張している者。様々だ。
「みんな、よく集まってくれた!俺はBランクパーティー『英雄の集い』のリーダー、グレン・ファスターだッ!個人はCランク。隊長を務める!」
金髪長髪イケメンのイケボが、ホール内によく響く。なんだか鼓舞されたような気分だ。
「大剣を使う。よろしく!」
「「「「「オオオオオオオ!!!」」」」」
冒険者たちの男らしい歓声と、カウンターから黄色い声援が送られてくる。かなりの人気者のようだ。
ふむふむ。いかにも勇者という見た目だ。銀色に輝く鎧に、強さと美しさを兼ね備えてるミスリルの大剣。ステータスもランクにふさわしいな。
「みんなも続いて、名前、ランク、武器を言ってくれ。パーティーに所属しているならパーティー名も言うように。Fランクからよろしく!」
「俺は――」
「俺たちは――」
「私は――」
冒険者は、続々と自己紹介をしていった。
攻略隊は、Fランク以上の冒険者25人で構成されているようだ。
Eランクが一番多く、その次にDランク。Fランクは二人だけで、一番少なかった。以外だな。
そして、ついに俺たちの番が来たようだ。
「俺はスカイ・インフィニティ。『魔天剣と神狼の輝き』のリーダーをやってます。武器は主にロングソードを使います。よろしくお願いします」
「おいおい、噂の――」
「あのブルパラのクソ野郎をフルボッコにした――」
「なんて丁寧な言葉使い!」
俺の自己紹介をしたとき、数名の冒険者がざわついた。
俺も、あのフルボッコ劇を観客の立場で見たら、ちょっと引くかもな。
続いて、フィーナも挨拶をした。
「フィーナ。『魔天剣と神狼の輝き』に入ってる。武器はスカイと同じ。好きなものはスカイの料理。よろしく」
「「「オオオ!」」」
今度は男どもの黄色い歓声が湧いた。この世界はロリコンが多いのだろうか?
でも、ルックスが非常に良い上に、数少ない女性冒険者だから、多くの男たちは、フィーナのことをアイドル的な存在と感じているんだろう。
そして、15分も続いた冒険者の自己紹介タイムは終わったが、グレンはリライを見て、何かを待っている。
そうか。この場の多くの人は俺の従魔だと知らないのか。
「スカイの左にいる犬耳の女の子。君も攻略隊なら自己紹介をしてくれ!」
やっぱり。普通の冒険者だと思っているようだ。
「あ、この子うちの従魔です。人型になれるスキルを持っているんですよ」
「なら良い!さて、今から攻略日程を発表する!」
グレンは、にこやかなイケメンスマイルを振りまいて、全員に紙を渡していった。
道を事前に確認し、地図を作ってきたようだ。
「7日間の攻略を予定にしているが、3日間は物資の運搬に使う予定だ。4日間でダンジョン攻略、そしてダンジョンコアをこの『核消滅石』で破壊し、ゴブリンダンジョンを壊すまで行きたい!」
その後も、攻略時のルールや、野営の見張り番についてのことなど、長々と説明していた。
眠気を抑えられなかったので、後半の方は立ったまま寝たし、前半も特に聞いてない。フィーナを始め、他の冒険者もほとんど立ったまま寝ていた。
グレン当人は、熱弁していて気づいていないようだった。
「単独行動はしないように!」というところはすごく強調されていたので覚えている。
「みんな、行くぞッ!ゴブリンダンジョン攻略隊、いざ出発ッ!」
「「「「「「「オオオオオオォォ!!!!」」」」」」」
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