第17話 ランクアップ
「はあああ!クインタプル・スラスト!」
「イギュイ――」
「ギャァ――」
200体のホブゴブリンの群れを半分に減らし、その後もギリギリの戦いが続いている。
俺は相変わらず神糸を生み出し続けている。今はやっと布一枚分の糸を生み出せたぞ!
そんなことより、フィーナの戦い方にも変化が出てきたようだ。
今までは剣術だけで倒していたが、他の戦術スキルを連携して使えるようになっている。
篭手から付与されたスキル《衝撃打》と拳術や蹴脚術を併用して、ホブゴブリンの頭部を粉砕している。
レベルも50レベルに達し、全ステータスがついに1500を超え、魔力に至っては2400弱もある。ソードスキルを放ち放題だ。
そのため、上級ソードスキルを連発して、一度の攻撃で10体程度のゴブリンを倒すことが出来ている。
《ブレードウェーブ・インパクト》という、剣豪技がレベルⅡになると覚えられるソードスキルがお気に入りのようだ。
それは、《ウェーブストーム》の上位互換的な感じなのだ。
《ウェーブストーム》は斬撃を2メートル飛ばすのに対して、《ブレードフェーブ・インパクト》は、わずかに衝撃波をまとった斬撃を5メートルも飛ばす。
しかも、飛ばす範囲も同じくらいで、殺傷力も高い。かすっただけでも、ホブゴブリン程度なら9割の確率で殺せるだろう。
一時間足らずで全てのホブゴブリンを倒しきり、あとはキングとクイーンだけとなった。
二体とも、錆びた大剣を掲げて威嚇しているが、迫力があるだけでビビることはない。
そして、キングが4メートルほどの重そうな体を動かして、フィーナに剣を振り下ろした。
対するフィーナは、ゴブリン・キングの振り下ろす剣に向かって、『魔剣・リリーサー』を下段から振り上げる。
双方単調な動きだが、スピードは雲泥の差だ。膂力も圧倒的にフィーナのほうが強いだろう。
ギギィーンという音を出して剣がぶつかると、拮抗することなく、キングの剣が折れた。
剣の勢いは落ちず、そのままの勢いでキングの首を刎ね、数秒経ってから首がずり落ちた。
うん、一瞬だったね。
フィーナはすぐに体の向きを変えると、獲物を見つけたかのようにクイーンへ向かっていった。
「クイーンは俺が倒したいから、下がって!」
「ん?瞬殺なのに?」
「良いんだ。考えがあるんだよ」
俺は、レベルⅨ突進ソードスキル《パラライズブレード・ストライク》を発動し、クイーンを一蹴した。
「ねぇスカイ、その考えってなに?」
「ああ。ここに転がってるゴブリンの死体から、100個の魔石、そしてキングとクイーンの魔石だけを取って、ギルドに出すんだ」
「それなら、全部取ってしまえば良いのです」
「ん。賛成」
「全部取るのはめんどくさいだろう?」
「ん。それもそう」
「俺が狙っているのは、ランクアップだ。二人でゴブリンの群れを一蹴したとすれば、ランクアップできる可能性は高い」
「おおー」
「さすがご主人さま!」
リライとフィーナが熱い眼差しで俺を褒めてくれるのに少し照れながら、一気に魔石をもぎ取っていく。
取っていくたびに伝わる感触がとっても気持ち悪い。
1分足らずで必要なだけ回収し、ボス部屋の前にある帰還用魔法陣に乗って、ダンジョンから出た。
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「え!?二人で100匹超えのホブゴブリンの群れを討伐した上、キング、クイーンともに討伐ですって?」
「ああ。そんなにすごいか?」
「すごいですよ!キングが率いるホブゴブリンの群れのランクは、D〜Cランクなのですよ!それをEランクの冒険者が討伐となると……Dランクに昇格ですよ!」
「おお、スカイの狙い通り」
「すぐにギルマスに報告し、ランクアップの許可が出ましたら手続きを行いますね!」
主張が強めな胸部の膨らみを揺らしながら、リディアは階段を駆け登っていった。それに続いて、俺たちも登る。
とりあえず踊り場でリディアを待とう。
5分ほどでリディアが戻ってきた。
「許可が出ました!お二人の冒険者カード、そしてパーティーカードもお出しください。地下室へ向かいますよ!」
「わかった!」
「ん」
「ご主人さま、おめでとうなのです」
4人でドタドタと駆け下り、地下室へ向かっていった。
途中でフィーナとリライが首に抱きついてきて転びそうになったが、自慢のステータスで持ちこたえた。
階段でいろいろあったが、地下室に着いた。
露出の高い装備を着ているリライは、ブルブルと体を震わしている。
あまりにも寒かったのか、右側から俺に抱きついてきた。鳥肌が立っていたので、コートに入れてやった。
フィーナもなぜか左側に抱きついてきた。結構暖かそうなドレスアーマーだから、大丈夫だと思うんだけどな。
にしても、右と左で脇腹に伝わってくる感触が違いすぎる。
「はい、ランクアップ手続きは完了しましたよ……って、どうしたんですか!?」
「ああ、なんか寒かったそうだ」
「ん」
「はい!ご主人さまのコートは温かいのです」
「そ、そうなのね。……羨ましい……」
「え?何が羨ましいんだか――」
「あ、いえいえお気になさらずー」
顔を赤くしながら、3枚のカードを渡してきた。少し赤く光っている。
「冒険者カードとパーティーカードです。G〜Eランクは鉄でできていましたが、D〜Cランクは銅でできていますよ」
「へぇ〜。知らなかったな」
「Bランクが銀、Aランクは金、Sランクはミスリル、SSランクはオリハルコンが素材となります。そして、最高位ランク『レジェンド』になりますと、人間では解析不能な金属でできています。しかも破壊はできないんです」
「その『レジェンド』ランクって誰が決めているんですか?」
「神ですね。神託が降りてくるのです」
「ふーん、神が」
あの神達が決めているんだったら、俺なんてすぐにレジェンドランクになるんじゃないか?さすがに無いか。うぬぼれは良くないからな。
「それ以外のランクは冒険者ギルドで決めてます。下位ランクだったらギルドの独断で決めていますが、上位ランクになると、冒険者ギルドと国で一緒に決めています。SランクやSSランクほどになると、複数の国や冒険者ギルドが厳正な審査を行って決めるのです」
なんと大掛かりな。
「ちなみに、レジェンドランクになると全ステータスが2倍になるんですよ。そのランクに至ったのは、勇者2人だそうです」
「勇者?」
「はい。2000年前と1000年前にどこかの国が召喚したそうです。勇者と国の名前は忘れちゃったんですけど」
もしかして、俺って勇者……?いや、神直々に転生させてもらったんだから、そんなことはないだろう。
「では、カウンターにてランクアップ報酬を受け取ってください!二人の冒険者ランクとパーティーランクが同時に上がっているので、かなりの金額になりますよ!」
6000文字の部分は2つに分けました。
大体2000〜3500くらいで投稿していこうと思います。
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面白い作品を書けるように精進して参りますので、どうかよろしくお願いします!