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第16話 ダンジョンの変化

 窓から差す陽光が俺の目を照らし、目覚まし時計が耳が痛くなるような音色を奏で始めた。


 音源を探りながら目覚まし時計を右腕で止め、二度寝しようとしたら、腕が何かに当たった。


 人肌のような気がしたが、陽光に照らされて温度を持った枕だろうと思い、そのまま抱きしめた。頭に何かが当たる。



「むにゅ……。スカイ、すぃ……」



 誰かが俺の名前を口にしたけど、この声は……。


 一気に意識が覚醒していき、目を見開こうとするが、目やにでも出来ているのだろうか。固まっていてなかなか開けない。


 力ずくで目を開けると、視界が赤く染まった。ヒーリングをかけて出血した部分を止血し、傷ついた皮膚を再生する。


 目の前には、真っ白な髪と猫耳、そしてつぶられた瞳が見えた。


 ――ま、まさか。



「ふぃ、フィーナ!?」



 すぐに背中に回している腕を戻し、ベッドから出ようとした。


 しかし、なぜか動けない。


 左腕はフィーナに腕枕を提供していて、布団をはがしてみると、真っ白な細い腕が、俺の背中に回っていた。


 寝てる途中に抱きついてくるとか、リライみたいに寝相が悪いぞ。


 ま、起こすのは悪いので目覚めるまでこのままでいよう。





「んにゅ……」

「おはよう」

「おはよう……はっ」



 フィーナは、自分の体勢に気づいたんだろう。ばっと腕を戻し、飛び起きた。



「スカイと添い寝……。うれしい」

「ん?なんか言ったか?」

「なんでもない。嫌だった?」

「そんなことはまったくないぞ!さて、今日は食堂で朝飯を取るぞ」

「ん」

「フィーナずるいのです。私も一緒に寝るのです!」

「むぅ」

「分かった分かった。ふたりとも落ち着いて」



 フェルルとファルルはいつの間にか起きていたのか。しかも、融合して嫉妬を伝えてくるとか、かわいいね。


 俺は、リライとフィーナに朝風呂に入ってと指示したり、食券の準備をしたりして、いろいろ仕度を整える。


 今日は、昼までゴブリンダンジョンでレベリングを行い、その後は街で買い物をするつもりだ。


 調味料や食材がないので、料理に幅を利かせられない。レベリングが終わったら、米や小麦粉、少しの野菜から買おう。


 朝風呂から上がったフィーナの髪を乾かしてから、食堂へ向かった。


 ステータスが上がったからなのか、胸当ても自分でつけられるようになっていた。うんうん、成長が実感できて嬉しいね。


 今日は、硬い黒パンに、シチュー、生野菜のサラダ、フライドチキンというメニューだ。



「「パン硬い」のです」

「シチューに浸して食ってみな。飛ぶぞ」

「あっ、また出ましたね。ギャグなのですか?」

「そんな感じだ」



 リライのツッコミに適当に答えた。


 二人とも、シチューまみれになってふやけた黒パンを、小さな口でパクパクと食べていく。



「ん。柔らかい。飛ばないけど美味しい」

「だろ?良かった良かった」



 その後も食べ進め、5分足らずで食べきった。


「足りない」と不満げだったが、「今日もレベリング頑張ったらハンバーグ大盛りだぞ!」と言ってやって機嫌を取った。


 そして、宿泊期間を5日ほど延期して、食券ももらい、ゴブリンダンジョンへ向かっていった。



 ■■■■■



「はっ」

「ギョー――」

「ふっ」

「ギギギ――」



 フィーナの怒涛のレベリングが始まった。


 新しいダンジョンがあるという情報を聞きつけた冒険者が十数人いるため、《オールビースト・レンジコール》は使わないほうが良いだろう。


 ダンジョンも変化が起きているようだ。


 5層から8層に増え、中にいるゴブリンもホブゴブリンが多くなっている。


 ゴブリンが強くなったことで、一体一体が持つ魔力も増えて、コアの魔力吸収効率が上がったのだろう。


 なぜホブゴブリンが増えたのかは、予想がついている。


 昨日、レベリング時に倒したゴブリンの死体は放置していた。他のゴブリンが食べて力をつけ、キングやクイーンに進化した個体がいるのだろう。


 キングとクイーンは、毎日200体以上のホブゴブリンを産むため、異常な繁殖をしていくのだ。


 キングとクイーンはランクD魔獣だが、ステータスは高くない。ホブゴブリンを大量に産むから、危険度が大きく上げられているんだろう。


 今は、6体の反応がある。これからもっと増えていくと考えられるな。


 しかも、一気に増えていくわけだから、食料も足りなくなり、共食いが起こる。普通のゴブリンやその上位種はすぐに淘汰され、ホブゴブリン同士の生存競争が起こる。


 故に、生き残ったホブゴブリンは、必然的に『ホブゴブリン・キング』に進化するだろう。


 それはCランクに位置づけられているが、統率力と仲間の強化能力に長けている。


 小さな群れもすぐに大きな群れになって、人々を襲ってくると考えると、すさまじい危険度だな。



 そして、今は3層にいる。俺は神糸を生みだすのに集中し、リライは何も出来ないストレスを壁に魔法を放ったりソードスキルを放ったりして発散している。


 フィーナは斬り進めるたびにレベルが上っていき、殲滅スピードが速くなっている。剣豪術、剣豪技ともにレベルⅢに上がった。


 ここには人っ子一人いないが、奥の方にはゴブリン・キングとゴブリン・クイーンが率いるそれなりに大きな群れがあるようだ。


 今日は、そいつらを全部倒して帰るくらいかな?


 そして、一方的な殲滅は続いていき、ついにゴブリン・キングの近くについた。


 ステータスは600程度でEランク魔獣程度だが、ホブゴブリンよりは強い気がする。


 そういえば、各階層にボス部屋があった。ボスを倒すと転移魔法陣が出現し、次の層へ行けるのだそうだ。


 ボスは、弱すぎて話にならなかった。



「グオオオオオオオ!」

「ギャルゴガアアア!」



 俺たちに気づいたキングとクイーンが、迫力のある咆哮を放ち、配下のゴブリンたちの隊形を変化させ始めた。


 フィーナは、なぜか動きを止め、変化を眺めていた。しかも、「おおー!」と言って拍手までしているぞ!



「フィーナ、プリキ○アでもないんだから、変化を待っている必要はないんだぞ」

「プリキ○ア?なにそれ?」

「とにかく、今すぐ突撃しても大丈夫だって言うことだ」

「ん!がんばる!」




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