第14話 成長
「オールビースト・レンジコール!」
俺はよく響く声で唱えた。
今回は、一層と二層を覆う範囲で使った。300〜400体くらいが向かってくるかな?
そして、フィーナに補助魔法をかける。攻撃力を上げたり、疲れにくくしたりする魔法だ。
さらに、継続的に回復させる魔法や、フィジカルを上げる魔法もかける。
魔力を込めて、オーバーブースト済みだ。
フィーナが魔法陣の光に包まれると、ステータスが強化された。
「うおー。体が軽くなった!」
「だろ?これからどんどんゴブリンが来るから、頑張れよ」
「ん、頑張る」
うーん、フィーナがレベリングしている間、俺すごく暇だな。なにか暇つぶしになるようなものは……。
そうだ、神糸を生み出さないと。どのくらい生み出せるのかわからないけど、縦横2メートルの布を10枚くらい織れるぐらいの量は生み出したいな。
神糸創造スキルを使用して、長さ2メートル、太さ0.1ミリほどの糸を生み出していく。スキルレベルがⅢに上がったことで少し効率は増しているが、まだまだ大量の魔力が必要だ。
36本生み出したところで俺の魔力は残り一割を切った。スキルレベルもⅤに上がった。
永遠神竜が呼び出されるみたいな、不測の事態にも備えてそのくらいは残して置かなければ。
とりあえず、フィーナのレベルを見てみるか。――《鑑定》!
名称:フィーナ
種族:獣人・白猫
職業:なし
年齢:13歳
状態:平常
Lv.31
ステータス
命力:892 魔力:1199 腕力:489 知力:468 敏捷力:483 体力:458
スキル
剣術Ⅸ 剣技Ⅷ 蹴脚術Ⅲ 格闘術Ⅰ 拳術Ⅲ 解体Ⅲ 気配察知Ⅲ 毒耐性Ⅰ 暗視Ⅴ
称号
神獣の寵愛 ゴブリンキラー
装備
暴凍豹の革鎧ドレス ミスリル鋼の胸当て 衝波暴虎の篭手 風竜の軽靴 魔剣・リリーサー
うんうん、ものすごい勢いでスキルレベルが上っているね。新たにスキルも入手しているようだ。
「はっ!」
「ギャフギョ――」
「ギョフェ――」
「らああああぁ!」
「ギョギョフ――」
「シュギュケハ――」
一時間ほど経った。ときどき、フィーナの気合のこもっている声が耳に飛び込んでくる。
気配察知を使って気配を見てみると、かなりゴブリンが密集していることがわかった。後ろの方は圧死しそうなほどに詰まっているぞ。
一度に多くのゴブリンを相手にするので、全部の攻撃を捌くのがかなりギリギリだ。
「ゲハフ!」
「うっ」
「ギョへー!」
「ぐっ!」
さばききれなかったゴブリンの攻撃がフィーナを襲う。
胸当ての障壁スキルによって直撃は免れているが、恐怖心はかなり煽られるだろう。
「ウェーブストーム!」
レベルⅧ剣技ソードスキルが放たれ、周囲に集まるゴブリンの肉体を撒き散らす。
うわ!フィーナの顔に汚いゴブリンの返り血が!
しかし、そんなものに気を紛らわさずに、剣を力強く構える。その顔には、覚悟が浮かんでいるように思える。
「はあああああぁ!パラライズブレード・ストライクっ!」
剣に黄色の光が宿ると、フィーナは前方に弾丸のように飛んでいった。
レベルⅨ剣技ソードスキル《パラライズブレード・ストライク》は、ソードスキル発動中は斬撃に麻痺効果が加わるというものだ。
大量のゴブリンを横に一刀両断して、上半身がグチャッとずれ落ち、剣に少しでもかすったゴブリンも体が麻痺して倒れている。
すごい。すごい成長力だ。
先は剣術Ⅸ、剣技Ⅷだったのだが、どっちも上位のスキルに進化し、両方ともスキルレベルがⅡになっている。
一体一体斬り進んでいくうちに、身のこなしや斬撃の威力もどんどん上がっていく。
フィーナは、ゴブリンの海の中へと飛び込んでいき、剣を大きく振り回していった。
■■■■■
「はぁ、はぁ、はぁ……」
あれから二時間後。ついに400体のゴブリンを倒しきった。
体や装備はゴブリンの返り血で真っ黒に汚れていて、ゴブリンの屍の山の上に、剣を杖代わりにして立っていた。
後半の方は、ソードマンやウィザードなどの進化したゴブリンや、ホブゴブリンというゴブリンの上位種も現れていた。
ホブゴブリンは、レベルもステータスもそれなりに高く、胸当ての障壁スキルも破ることができ、フィーナが傷を負っていた。
俺の補助魔法ですぐに再生したけどね。
あと、ほんの少しだけイビル・ゴブリンという魔獣が混じっていた。
見た目は真っ黒で、角も普通のゴブリンとは違ってねじれていた。
ステータスはホブゴブリンよりもちょっと強いくらいなのだが、称号に《邪神の奴隷》という物があった。この世界には邪神がいるのかな?
でも、その分フィーナのレベルも大幅アップだ。
レベルが40に迫り、すべてのステータスが1000を超えた。これなら、無事に冒険者になるためのテストも簡単に合格し、Eランクからの登録ができるだろう。
そうだ。気になることがあったんだった。
「フィーナ、戦っている途中、なんか覚悟を決めてるような顔をしてたけど、どうしたんだ?」
「ん?特に何も。ただ、がんばる!って決意しただけ」
「そうか。無理しないようにね?」
「ん。でもスカイが居れば死なない」
「ま、そうかもね」
そうか。そんなに信頼してくれていたのか。
「さて、帰ったらテストを受ける?それとも明日以降にする?」
「ん。今日受ける」
「じゃあ、念のため体力を回復させる魔法をかけとくね」
「ありがと」
フィーナはフェルルにまたがり、ファルルは俺の肩に乗って街へ帰っていった。
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