第12話 いろいろ揃える
一時間ほどで、フィーナの髪を乾かし終わった。サラサラさと艶がえげつない。
さて、正午になったし、飯にしよう。
食券は無駄になるが、俺たちはハンバーグを食べることにした。
俺は肺に一杯の空気を入れて叫んだ。
「ハンバーーーーーーーーーーーーーーーグ!!!!」
窓から差す陽光で暖まっているフェルルとファルルが飛び起きた。
「スカイ、どうしたの?ハンバーグってなに?」
「これのことだよ」
アイテムポケットからハンバーグを1枚出して、皿に盛って渡した。
「食ってみな、飛ぶぞ」
「飛ぶ?」
「例えだ。それほど美味しいということなのさ」
熱々のハンバーグを恐る恐る口に運ぶと、目をかっと見開いた。目には少し光るものが溢れそうになっていた。
「おいしい……!」
「フィーナ。まさか、泣いてるのか?」
「こんなにおいしいもの初めて食べた……」
10秒もかからないうちに食べてしまった。300グラのハンバーグって、かなり大きんだぞ!?
「おかわり。あと4枚」
「おいおい。そんなに食べたら太っちゃうぞ?」
「大丈夫。動けば良い」
「やれやれ。まっ、食べ盛りだから良いか」
2枚目の3分の2を食べたところで、変化を感じたようだ。
「うおお!力がみなぎった!?」
「そう。そのハンバーグは魔獣のお肉で、しかもプライムドラゴン・エターナルというドラゴンからドロップしたんだ。500グラ食べると全ステータスが一割上がるんだよ」
「すごーい」
その後もガツガツと食っていくフィーナに続いて、俺と二人も食っていった。
フィーナは、お腹をなでて「腹一杯だ〜」といった感じの仕草をしてたので、満足したようだ。
しかも、今ので全ステータスが120を超えた。これならレベル上げも滞りなく進みそうだ。このステータスなら、俺が見つけたゴブリンダンジョンでレベル上げができるぞ。
その前に、防具を買ってあげないと。
俺が作るつもりの防具は、デザインと強さの両立を重視して作ろうと思っているので、デザインイメージが完成するまでかなり時間がかかりそうだ。
でも、モチーフはもう決めてある。桜色の目をしているから、桜をモチーフに作ろうとは思っている。
布部分は神糸を使おうと思っているので、生み出すのも時間がかかりそうだし。強力な素材を使えば、その分防具の強さもえげつないものになるだろう。
「よし、防具屋に行くぞ」
「ん?作るんじゃないの?」
「フィーナに似合う服のデザインを考えるのに相当な時間がかかるんだ。特訓の様子を見ている間に考えようと思っているんだ」
「うれしい。ありがと」
まずは聞き込みだ。二人にはお留守番してもらうか。
結果、良い防具屋を聞いたら、『防具屋・アイシクルパンサー』という所が良いと俺が聞いた人全員が言っていた。
なんと、店主はフォルゼレム王国の国王から、名誉鍛冶師の勲章を得たそうだ。
場所は門の近くにあり、多くの冒険者がそこで防具を買っているのだとか。
しかし、転売目的でやってきた商人には容赦無いようで、その商人は五体満足で帰ることはできないんだとか。
目的の防具屋へ向かっているうちに、ある疑問が浮かんだ。
「なぁ、フィーナ。肌着とかって持ってる?」
「持ってない。必要ない」
なんだって?うーん、本人が要らないなら必要ないよな……。
いやいや、そんな感じではフィーナが女の子らしさを失ってしまう。無理矢理にも買わせなければ。
「だめだ。下着を買いに行くぞ」
「いやだ。先に防具」
「だめだ!女の子の必需品だぞ?着てないと常識外れだと思われるぞ!」
「むぅ。わかった」
俺は羞恥を味わいながらも、フィーナのために良い女性用下着店についても聞き込みを行った。
もちろん、「この子のためなんですけど……」という前置きをして聞いたので、変態とは思われてないはずだ。いや、そうであってくれ。
評判の女性用下着店についた。
「はい。お金渡しておくから、店員さんに『私に似合う下着を上下5つずつ選んでほしいのですが、お願いできますか?』と聞いて下着を買ってきて」
「聞く必要ない。スカイも来れば良い」
「いやいやいや。俺は男なんだから、女性用下着店なんて入ったら変態って思われるよ」
「むぅ」
「そんな悲しそうな顔するなって。じゃ、俺は防具を選んでくるよ」
フィーナは耳をペタンとたたみながら、ドアをバタンと乱暴に開けて入っていった。
当初の目的であった防具屋に着いた。
看板には、勇ましく『防具屋・アイシクルパンサー』と彫られており、その上には、今にも飛び出してきそうなほどリアルな大きなヒョウの彫り物が飾られていた。
うーん。見た目は完全に武器屋っぽいんだけどね。
まっ、細かいことは気にせずに入ってみるか。
結構古めなドアの取手をひねって押すと、ギギギと木の軋む音が聞こえてドアが開いた。
内装は質素で、防具がド○キのようにずらずらと並んでいて、ちょっと暑苦しい。
「おう、いらっしゃい。ワシはギルバトスじゃ。何をお求めかね?」
背が低く、耳が尖っていて、真っ白なヒゲを蓄えたドワーフことギルバトスが、気さくに話しかけてきた。
「身長145セトぐらいの女の子に買ってあげたいんですけど、可愛らしさと強さがどっちもある防具が欲しいんですが。値は張っても大丈ですよ」
「それなら……。今探すから、ちと待ってな」
カウンターから出てくると、ガサガサと色んなところをあさり始めた。
10分ほど経っただろうか。ついに見つかったようだ。
「どうだ。値段は金貨5枚もするが、お前さんの希望にピッタリと思うぞ」
ふーん、いろいろあるな。――《鑑定》!
《暴凍豹の革鎧ドレス》
防御力:852
耐久値:1123
スキル:氷乱耐性(中)付与
《ミスリル鋼の胸当て》
防御力:1000
耐久値:1500
スキル:物理障壁Ⅰ 魔法障壁Ⅰ
《衝波暴虎の篭手》
防御力:500
耐久値:933
スキル:衝撃耐性(大)付与 衝撃打付与
《風竜の軽靴》
防御力:948
耐久値:1200
スキル:竜巻耐性(中)付与 敏捷力上昇
合計防御力は、なんと3300。俺やリライの防具よりはかなり弱いが、街の冒険者達の防具に比べれば圧倒的に強い。
しかも白を基調としていて、ところどころピンク色も混ざっていて、フィーナに似合うと思うぞ。
お金は……。うん、超ギリギリだね。現在持ってるのは金貨4枚に大銀貨10枚だ。
もう少し持っていたけど、それは下着代としてフィーナに渡しちゃったからね。
「金貨1枚足りないから、大銀貨10枚で払っても大丈夫ですか?」
「おう。もちろんだ」
全財産をギルバトスに渡し、防具を受け取って店から出た。
「また来いよ〜!」
「はい!」
ギルバトス、いい人だったな。
いや、危なかったね。まっ、お金が必要になったら大量にあるミスリル剣を売ればなんとかなるかな?
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