第11話 お風呂での騒動
数十分前。俺は前世で使ったシャンプーとリンスの中で一番高級なものを生み出し、洗い始めていた。
水着を着てみたが、二人ともぴったりだったので、ボディーラインが丸出しだ。
フィーナは、華奢な骨格で、抜群のスタイルを持っていたが、胸板はまるで断崖絶壁のようで、全然育っていないようだった。
今は、頭と髪の毛の洗浄が終わり、ヘッドスパを施している。
出会ったときは、頭がホコリやフケなどで汚れていたり、髪の毛がお世辞でもきれいとは言えないくらい艶が無かったりしたが、今は美しさを取り戻している。
ヘッドスパを施工されているフィーナは、温めたおしぼりを目に乗せて、すぅすぅと心地よさそうに寝ている。
開始一分で全身の力が抜けて、だらーんとした姿は少し面白かったな。
あと、パッドとかをつけるのを忘れたので、水を流すたびにフィーナの体と水着が密着して、ところどころ浮き出たり凹んだりしている。実に官能的だ。
――ダメダメ。もうお年頃は過ぎたんだから、そんな目で見てはいけない!
脳内に居座っている煩悩を振り払い、手元に集中した。
■■■■■
「フィーナ、ヘッドスパは終わったぞ。あとはこれで体を洗ってね」
「……」
「おーい、起きてよフィーナ」
「うにゅ……」
「はい、これ。石鹸をよーく泡立てて使うんだぞ」
「ん……」
俺が渡した石鹸と布を眠そうに受け取り、泡立て始めた。ものすごい勢いで泡立っている。これまた面白い。
さて、フィーナが体を洗っているうちに、この宿の最大の魅力である大浴場に行こう。
案内図を見ながら目的の場所へ向かっていくと、二つの道に別れた。
左の方には『男』と、右の方には『女』と、異世界語で書かれている。
異世界ラノベものでは、混浴の場合と分けられている場合があるが、この世界は男女別のようだ。
入ってると、棚が壁一面に置かれている。かごの中に服を入れていくというスタイルらしい。
また、中年のおっさんたちが服を見ているところに出くわした。
そのおっさんが俺を見ると、目を丸くして驚いていた。
俺が脱ぎ始め用とした瞬間、そのおっさんはついに話しかけてきた。
「君、女湯はあっちだぞ」
「いやいや、俺、男ですよ」
「そんなの嘘だろう。君、女みたいな体型――は?」
もうめんどくさくなったので構わずに服を脱ぐと、おっさんは目をギンギンに見開いて、「デカ……」と呟いていた。
俺はさっさと防具と、服――見た目だけ――を脱ぎ捨ててかごに入れ、そそくさと浴場に入った。
「おい、なんでこんなところに女が――デカ」
「見た目とあそこがぜんぜん違う!」
何なんだ?女って言われたり、でかいって言われたり。
まぁいいや。自分の容姿に関してはもう何も考えないぞ!
体を洗うところへ向かうと、石でできた椅子と、木でできた水をためる桶、そして石鹸が置いてあった。
シャワーや鏡もあって、設備が揃っていた。
俺は石鹸を泡立て始めながら鏡を見た。
「うわ、ヒゲやば。いちいち剃るのめんどくさいから、魔法で消すか」
そう。ヒゲなどのムダ毛を毛根から永久的に消去し、二度と生えなくする魔法を創るのだ。名付けて《フォリクル・ヴァニッシュ》。
しかも、その魔法は髪の毛などのムダ毛じゃない毛も永久的に消し去ることができる。
嫌いな奴やムカつく奴に嫌がらせとしても使えるね。永久的に『ハゲ』になるんだからな。
早速魔法を創り出す。使用すると、顔のヒゲ全て、胸毛、すね毛など、全身のムダ毛がどんどん抜け落ちていく。
さらに、毛だけを消去する魔法を生み出して、陰毛を少しだけ抜く。
俺は皮膚が弱めで、暑くなると蒸れてかぶれたりただれたりするので、少しは削らないといけないのだ。
陰毛はウイルスや細菌の侵入を防ぐ働きもあるので、蒸れない程度に残しておく。
魔法の名前は《スムーズリムーバー》にするか。
顔や足などがつるすべになったところで、前世からやっているヘアケアや体のマッサージも行い、風呂に浸かる。
やはりひろーいお風呂は良いね。開放感がものすごい。
「いーい湯だなっ♪バババン♪」
つい、日本語で歌ってしまった。
聞き慣れない音で耳障りだったのか、お風呂にいる男たちが一斉に俺を見た。なんだか申し訳なくなったので、異世界語版で歌ってみた。
《Information:スキル《歌唱Ⅰ》を取得しました》
《Information:スキル《歌唱Ⅰ》が《歌唱Ⅹ》にレベルアップしました》
《Information:スキル《魔唱Ⅰ》を取得しました》
前世から得意だった歌を歌ってスキルを入手したら、一瞬でレベルⅩになった。
魔唱スキルは、歌唱スキルが短期間でレベルⅩになると得られるスキルだ。
そのスキルを覚えたりレベルアップしたりすると覚えられる歌を歌うことによって傷を治したり、何らかのバフ効果を与えたりできるスキルのようだ。
歌は急にイメージが浮かぶので、それを歌えばいいらしい。
試しに歌ってみた。伸びやかな低声が浴場で反響する。自分で言うのもなんだが、結構美声だと思うな。
《魔曲・安らぎの旋律》という曲だ。最も初歩的な魔曲で、リズムも簡単。効果もすごくなく、聴いた者の心をリラックスさせるだけだ。
歌い終わった頃には、みんなぐぅぐぅといびきをかいていた。少しうるさい。
■■■■■
現在、俺は部屋で、生み出したドライヤーの改造に勤しんでいる。
送風する部分のモーター部は、魔力を流すと回転する回路式を、更に高速回転するように改良したもので代用した。4段階の風量調節機の付きだ。
だが、どうやったら魔力でも発熱できるようになるかが、いまいち思いつかない。
別に回路式を組み込めば良いのだが、あの細い線に回路を描くことが出来ないのだ。
いや、細い線は普通に張り巡らせてたものに、別で作った回路式をくっつければできるんじゃないか?
早速試してみると、うまく発熱した。
あとは、動力となる魔力バッテリーの絶対竜王の魔石を使って、スイッチで動くようにするだけだ。
そして、完成したのは、ハルモリウムを内部にふんだんに使ったドライヤーだ。
外側はほとんど手を付けていない。唯一変えたとすれば、元々の風量調節部分を消して、ボタン3つに変えたことだろうか。
一番上のボタンでは風量を調節ができ、真ん中のボタンは温風のON/OFFを切り替える事ができ、一番下のボタンはドライヤーのON/OFFができる。
しかし、マイナスイオンを発生させる部分は改造できなかった。さすがに、魔力でできることには限界があったようだし、そこは電気の力じゃないと使えないと思う。
だが、それでも高性能だと思う。4段階も風量を変えられるドライヤーなんて、そうそう存在しないぞ!?
早速、魔法で時間を加速させて、試しに使ってみた1メートルほどもあるが、風量があるのでかなり速く乾く。
腰まで下ろすほどの長さの髪を持つフィーナにも使ってみよう。
「フィーナ、髪を乾かすから、こっちに来てこの椅子に座ってくれ」
「ん?自然にかわく」
「フッフッフ。これで乾かすのさ」
フィーナにドライヤーを見せつけ、最大風量の温風を浴びせた。
「あったかい」
「だろ?でも、長時間浴びると火傷するから、気をつけろよ」
「ん」
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