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閑話 転生前の日常Ⅰ

7/15 閑話を追加しました。 

10/7 長いので二話に分けました。

 俺は黒木宙來。18歳。女顔で、長髪を持つが、男。


 難関高校に通っていて、トップの成績を収めていて、1ヶ月半後には大学受験を控えているのだ。


 俺の家族は裕福ではないが、貧乏でもない。THE・普通といった感じだ。


 俺の家族では、学校の制服や、塾、食費(お菓子は含まない)など、生活や学習する上で必ず必要ことは、必ずお金を出してもらえる。


 それ以外の物事は、『もらった自分のお小遣いやバイト代を使ってやりくりせよ』というルールがある。散髪屋へ行くのも自費だ。


 だが俺は長髪を好み、伸びすぎたらすきバサミで自分の前髪や後ろ髪を切っているため、そこへ行く金が浮いている。


 得意なことは明晰夢を見ること、勉強、運動、歌唱、裁縫、演奏、料理など。苦手なことは絵画だな。絵心の絵の字もない。


 運動の中でも、特に水泳が得意。今日は水泳の授業がある。ワッショイ!という気分だ。


 俺の学校は、公立高校であるのにも関わらず、温水プールがあるのだ。そのため、プール授業は冬に行っている。


 俺は朝食をぱっぱと食い切り、家を出た。


 家を出て角を右に曲がると、俺と同じ合唱部の翠嶺由菜すいれいゆながいた。笑顔でこっちを見て手を振っている。


 彼女は一番仲いい親友だ。3年連続で高校のミスコンを優勝している。


 そんな由菜は、80センチほどの束ねられた長く艶やかな髪と大きな荷物、そしてそれなりに大きいふくらみを揺らしながら、こっちに走ってくる。


 高くて透き通った声で話しかけてきた。


「オハヨ!」

「おはよう。今日はヤケにテンションが高いね」

「でしょ!昨日の深夜テンションがまだ残っててねぇ」

「そう。でもテンションのペース配分間違えんなよ(?)」

「うん……」

「ほれ。もう危うくなってきた」


 彼女とは小学校からの付き合いだ。しかも、クラスは12年連続で一緒。こんなことは誰かがわざとやったとしか思えない。


 そんな由菜は俺の腕に抱きつき、歩き始めた。柔らかいモノが腕に当たる。


 交際関係にあるわけではないぞ。由菜が()()にやっているんだ俺は求めていない。


「なぁ、由菜」

「なに?」

「12月からずっと思ってるんだけど、なんで俺の腕に抱きついてくるの?」

「え」


 彼女は少し顔を赤く染めてから、答えた。


「今年めっちゃ寒いからよ。去年と比べ物にならないぐらい。別にそれ以外の意味はないわよ。あと、あんた見た目ほぼ女子なんだから、傍から見たらめっちゃ仲いい女子二人が密着してるだけだもん」

「……本当か?」

「本当よ!」

「てかいい加減俺のこと女子って言うな!」

「今更何いってんの。小学生ぐらいから、み〜んなに言われてるくせに。ていうかなんであんたみたいな女顔の男が生まれるのよ」

「そんな事言われてm――」


由菜は俺を早口で滑らかにまくしたてる。 


「ちょっと女顔が混ざってるぐらいならまだわかるけど、あんたは女顔と男顔の比率が多分8:2なのよ。ほんと。みんなにも「8:2の男」て言われてるでしょ?」

「まぁ〜ねぇ……。お前が言い始めただけだけどな」


 否定はできない。実際、高校に入学してる時から、女子ほぼ全員に言われてる。


「たまに男らしくなるときはあるよ?殺気出してる時、または剣道のときね。でもそれくらいね」


 そう。俺は殺気らしきものを出せるらしい。


 去年、俺を女子と勘違いした泥酔ニイチャンにナンパされた時、「あ゙?」という俺の言葉だけでそいつは青ざめ、逃げていった。


 剣道のときは、つい明晰夢の癖で片手で攻撃してしまい、よく起こられていた。それを治すために夢で両手剣の練習をしたが、今度は作法がなってないと言われた。


 だが、それがなっていれば一瞬で一本を取れてしまう。あぁ、自分の力が恐ろしい。


そういえば、剣道のとき、あまりに力が入りすぎて鎧を凹ませたことがあった。5万円ほどを弁償したうえ、親にお小遣いを2ヶ月停止された。


「じゃぁ、ちょっと殺気(?)出してみていい?」

「だめよ。あのときめっちゃビビったんだから。気絶させたいの?」

「いや、そういうことじゃぁないけど」


 めっちゃ真剣な顔で言われた。そんなにヤバかったか?


 そんな地味に異次元のような会話をしていると、学校が見えてきた。同じ学校の人を見つけた由菜は、バッと手を離した。


 見られるのが恥ずかしいなら最初からやらなければいいのに。


 

 教室に着くと、いつものようにHRが始まった。



■■■■■



 ――二時限目。


 俺はプール授業のために、屋内プール場へ向かった。


 着替えを済ませ、シャワーへ向かうと、由菜と、隣に俺の親友、髙橋裕泰たかはしゆうだいがいた。


 由菜は、俺の骨と皮とちょっぴり筋肉がついた華奢な体を見た。


「宙來っち、今日も()()()()いいねぇ〜。いつ見ても思うけど、私よりもいいんじゃない?」

「ほんとだな。お前が女でEほどの膨らみがあったら好きになっt――」

「キモいこと言うんじゃぁないわよ!」


 俺は裕泰の発言を気にせずに、「あはは……」とだけ答えた。


 その()()()()の良さとは、男性らしさではなく、()()らしさでのことだ――



 ――4年前。俺が中2の頃だった。


 怪我のせいで全身のレントゲン写真を取ったのだが、その時に医者に言われた言葉に衝撃を受けた。


「お父さん。あの、宙來さんの骨格が、異常ではないんですけど、不思議でして……」

「なんでしょう?」

「その、宙來さんの骨格が、ほぼ女性のような骨格なんですよ。ちょっと違うのは、仙骨が女性のように横に広いのですが、男性のように長いのです。違うのはそこだけです」

「……やはりか」


 他にも、医者から、「腰椎近くのカーブが女性のようだ」だの「めっちゃスタイルのいい大人気女優と同じくらい美しくくびれている」だの「骨盤が薄い」だのと俺の骨格の女性と共通点をめっちゃ言ってきた。


 なんだか恥ずかしくなったので。話を無理やり切ってやった。


 ――そして現在に至る!


「宙來っち、髪お団子にしてあげる!」

「うん。どうも」


 髪が110センチ程もあるので、プール授業のときにはいつもそうして由菜に髪を結んでもらっていた。俺はヘアアレンジについては全くわからないので、非常に助かっている。


「相変わらず髪も私よりもサラサラだねぇ〜。女子と話してるとみんないいなぁって言ってるよ」

「でしょ!俺はヘアケアーを欠かさない男なのさ」


 似たような話をその後もしてから、シャワーを浴びた。




 授業が始まると、まず『泳げる人組』と『泳げない人組』グループに別れ、『泳げる人組』からさらに『速い組』と『普通組』に分かれる。教師の話によると、今日は200メートルメドレーをやるらしい。


 水泳部の裕泰は、俺と同じ速い組に分かれる。由菜は普通組だ。


 笛がなると、教師から「さぁ、泳いで行くぞー」という指示が出たため裕泰とペアを組んで並んだ。


「今日こそは勝ってやるぞ」

「せいぜい頑張りたまえぇ〜」


 彼とは勝負をしている。現在は負けなしの25連勝している。


 裕泰は普通に大会でたくさん優勝しているすごいスイマーなのだが、何故か、未だに俺を上回ることができていない。




 俺たちの順番が来た。ひときわ強く鳴らされた笛の音を聞くと、同時に飛び出した。


 俺と裕泰とではスタートから違う。彼は1メートルほどで飛び込むのに対し、俺は三メートル。

 

 彼のほうが筋肉ついているのに、なぜ俺のほうが飛ぶのだろう。


 大きな水柱を立ててから泳ぐのは、クロールだ。バタ足で大きく水しぶきを上げながら、異常な速さで腕を動かしていく。


 壁につくと、俺は壁を蹴って華麗なターンを決めた。蹴伸びだけで13メートルほど進み、背泳ぎを始める。


 7メートル前方を見ると、裕泰がめっちゃ腕を回している姿が見えた。


 頑張れ〜と思っていると、鼻に水が入りやがった。背泳ぎすると必ず起こるんだよ。これクソ苛立つのだ。


 その苛立ちを力に変えて、ターン&蹴伸びをする。今回の蹴伸びは21メートルほどだ。


 後ろを見ると、裕泰の影が小さくなっていた。


 俺は平泳ぎが一番得意で、最も速い。


 しかし、彼は一番遅いのがそれなのである。そのため、ここで一気に差をつけているのだ。現在の差は30メートルぐらいか?


 30秒ほどで50メートルを泳ぎきり、最後のバタフライへと入った。再び後ろを見ると、裕泰が、得意なバタフライでものすごい追い上げをしている。


 結果は5秒のわずかな差で俺が勝った。


「相変わらず勝てなかったけど、バタフライは速いんだねぇ〜」

「バタフライだけだけどな。それ以外は標準的?お前はバタフライ遅いねぇ、相変わらず」


 そんな軽口を叩き合うと、チャイムが鳴ったので、シャワーを浴びて更衣室に戻った。



「お前、女子みたいな体型のくせになんでそんなにアソコがデk」

「あ゙?」


 裕泰が変なことを言うので、パァーーンという大きな音とともに、彼の背中に真っ赤な手形を作った。軽く殺気(?)を出しながらね。


 周りを見ると、着替え中の男子がふらついていた。


「それはそうと……アハハハッ!実に美しい手形だッ!」

「チッ。なんでそんな細い腕なのにこんな力強いんだよぉ!」

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