第23話 プライムドラゴン・エターナルⅣ
そして現れたのは――。
第二形態へと移行したと思われる、仁王立ちしているドラゴンだった。
名付けて、「プライムドラゴン・エターナルⅡ」だな。そのままやないか!というツッコミは受け付けない。
そんな呑気な考えをしている場合ではない。さっきよりも格段に気配が濃密になっている。
巨大な体躯がさらに巨大になり、四肢が太くなっている。しかも、持ち前の七色の鱗の厚みも増している。
翼も先程の二倍近くある。内側に、神秘的な模様が追加されていて、きらびやか差が増している。
鬣もさらにフッサフサで、大きくなり、繊細ながらも力強さも感じられる。
頭の方も、短く生えていた二本の角――あの巨躯に比べれば――が、長く4倍ほどのサイズになり、本数も4本に増えている。
極めつけは背後にあるものだ。魔法発動時にでてくる魔法陣とはまた違う。多分、紋章のようなものが発生している。異質な輝きを放ち、回転している。
ステータスも大幅に上がっているだろう。
試しに《蒼幻煌剣絶斬》を百体の分身に、紅焔、雷撃、地磁、竜巻、そして闇黒。ダメージや切れ味を上げる系の属性を纏わせて放つも、半数弱の斬撃が不可視の壁に阻まれた。
障壁も強化されてしまっているようだ。
命力回復速度も上がって、すでに3割近くまで回復してしまっている。
結論。
――ヤバい。
以上だ。それ以外の何事でもない。
「クソガ!Sh*t!」
「え?今、ご主人さまから聞いたことのない変な音が聞こえたのです」
「ごめん。気にするな」
つい、英語と日本語で汚い言葉がでてしまった。
「リライ。見てわかるように、奴が強くなりやがった」
「は、はい。ほ、ほほ、ほん、本当にヤバいです。こ、このドラゴンさんは、ヤバいのです」
リライの語彙力が欠如してしまうほどだ。
「さっきみたいに戦って、少しずつでも削っていくぞ!油断するなよ!」
「はい!」
俺は分身たちの隊形を変化し始めた。それに反応したのか、ドラゴンは天高く飛翔した。
やがて、頭を高く持ち上げると、何やら溜め始めた。奴の頭部へ周辺の魔力が集まっていくのがわかる。
いつも通りの光線だろうと思った俺は、《蒼幻煌剣絶斬》を放とうとした。
しかし……。
俺の予想に反し、何故か巨大な衝撃波を纏った、遠目からでも万物を容易に斬れるとわかる斬撃が1つ放たれた。
その威力は、俺の蒼幻煌剣絶斬を10個当てても相殺できなかった。
やがてその斬撃は俺に到達した。二本の剣で受ける。キンキンと火花が散り、なかなか受け流せない。
サイコキネシスで、背中や腕を押して受け流そうとするも、それでも出来ない。
拮抗すること1分、ようやく受け流した、というよりかは跳ね返したという表現のほうが正しいか。その斬撃はドラゴンへと向かっていき――。
――真っ二つに一刀両断される!すかさず、リライと俺は紅焔魔法を放ち傷口を焼いた。
命力が一気に1割減った。まだまだ減り続けているぞ!
そして、二等分されたドラゴンが、ボトンと太い音を立てて落下した。
下を見ると、もうすでにくっつき始めているところが見えた。
《Information:ユニークスキル《竜王覇術Ⅰ》を習得しました》
はぁ。とりあえず詳細見てみるか。
竜王覇術:プライムドラゴン種の固有スキル。他の種族が持つとユニークスキルとなる。スキルレベルが上がると、新たに凄まじく高威力の術や、残り命力によってが発動する術を習得できる。また、ドラゴン以外の種族が持つと、《竜化》できる術も習得できる。
取得条件:プライムドラゴン種になるか、竜王覇術の技でプライムドラゴンにダメージを与えること。
絶対竜王は持っていなかったが、神に生み出されたからなのだろう。
そんなことより、言葉が出ない。あの光線とか斬撃とか放てるとか、あまりにもチート過ぎないか。
試しに使おうと思ったが、あのような斬撃はまだ使えないようだ。
現在使えるのは、《ディストラクトレイ》、《ロア・ストライク》だ。
試しに前者の方を使ってみよう。
「KA〜ME〜HA〜ME〜〜、――波ァァァァァァーー!」
別れた肉体がくっついたドラゴンに、俺の碧く輝くディストラクトレイが貫通し、地面を少し抉り、赤熱させた。
奴の鱗が少し蒸発する。さすがの威力だが、魔力の消費もでかい。
しかし。奴が乱発していた光線とは違かった。奴のはもっと異質さがあったからな。
故に。
――楽しみだ。どんな技が習得できるか。ゲーム好きにはたまらないものだ。
続いて、後者の方だな。
「はあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああああああああああああああああああああ!」
あの絶叫ビーバーのような叫びと同時に、《ロア・ストライク》が放たれ、こちらに突進してきたドラゴンの体勢を崩し、墜落させた。
すかさずリライが紅焔魔法を乱打する。これで合計0.5割削れた。
乱打しながら、不思議そうな顔をしてリライが降りてきた。
「押忍、おら悟○。なにか用か?」
「ご主人さまはスカイなのです」
俺のちょっとしたボケに、リライは真顔で受け止めるので、冗談だと言っておいく。もうちょっと面白がってほしいものだ。まぁ、元ネタ知らないから仕方ないか。
「さっきの叫び声といい、光線といい、なにをしたのですか?」
「チートスキルを手に入れたんだ」
「ちーと?」
「すまない。トンデモスキルを手に入れたんだ」
「とんでも?」
「度々すまない。とにかく、ヤバいスキルを手に入れた」
俺は竜王覇術について、ゲットした経緯についても詳しく説明した。
「なんですかそれ。私もほしいのです」
「ちょっと難しいかな。この剣のおかげでゲットしたようなものなんだから」
リライはすごく残念そうな顔をする。その顔ホントやめてくれ。
俺たちは気合を入れ直し、再びそれぞれの持ち場に残った。