第22話 プライムドラゴン・エターナルⅢ
俺は、引き続き1500体の分身でドラゴンを削っている。
奴の命力ゲージはついにイエローゾーンに突入し、残り3割ほどになった。
激化状態が非常に手強い。クールタイムが0になるから、あの光線を何回も放ってくる。
結構な魔力を奴は消費していると思うのだが、底なしな魔力量があるのだろう。
クソ憎たらしいが、俺の魔力源になるから良いか。
神の強化のお陰で与ダメージ効率と奪魔力効率が非常に上がっている。
それは、30分前に実験したことでわかった。
内容は「俺と分身全員であの弓ソードスキルを放てば、魔力を一億以上奪えるのか」というものだ。
やってみたところ、ドラゴンの肉体を半分消し飛ばし、ダメージを1割ほど与えたものの、魔力を1億しか奪えなかった。奪えた魔力は、俺が放ったソードスキルによるものだろう。
実験結果としては「大量の魔力を消費して、1億の魔力を奪い、おまけ程度にダメージを与えた」というところだろう。
ダメージがおまけ程度なのが非常に悲しいが。
更に、「俺が大量にそのソードスキルを放てば、少量の魔力で、一億以上の魔力を奪えるのか」という実験も行った。
結果は、一発当たり一億以上奪えることができた。もちろん、ダメージもおまけ程度に与えられた。
副産物として、個人的にオーロラよりも美しいと感じた景色を見れた。本物の彗星を見ている気分になれて、少し癒やされたね。
まだ決めていなかったソードスキル名は《コメット・トレンチャルレイン》にした。
何発放ったか数えられなくなるくらい散々に打ちまくったところで、俺の魔力はほぼ満タンになった。
お陰で色々フルバーストできそうだ。
まず魔力節約のために1500体に減らしていた俺の分身を、2250体まで増殖させる。
2000を超えて増殖させたのは、装備効果に《疲労軽減Ⅹ》がついたからだ。問題なく操縦できている。
さらに、俺もついに穴から出て戦っている。
地球から持ってきた服にも障壁スキルが付与されたため、大ダメージをほぼ受けなくなった。
受けるとしたら、あの真紅の障壁から帰ってきた俺の攻撃と、光線ぐらいだろう。
それ以外は、届いたとしてもかすり傷程度だ。
「ご主人さま〜。私もなにかしたいのですぅ〜」
リライが穴からモゾモゾとしながら出てきた。非常に退屈そうな顔をしている。
そうだった、リライは何もさせていなかったな。彼女の魔力を感じ取ってみるに、もう完全に戻ったようだ。
《Information:スキル《魔力感知Ⅰ》を取得しました》
そういえば、蒼穹剣に《スキル取得容易化(神)》がグロースレベルが最大になって追加されていた。本当にゴブリンを斬るくらい簡単だな。
まぁそんなことは置いといて、リライに指示を出す。
「先程のように威力を超強化した魔法をぶっ放してくれ。あと、俺の戦闘を見てわかるように、あ゙の赤い障壁は危険だから、十分に距離を保って闘うようにね」
「近づくのはだめですか?魔法ばかりで退屈なのです」
「だめだ。障壁スキル付き防具を着ている俺でさえそれなりのダメージを受けているんだ。お前に危険な目に合わせたくないんだよ」
「ご、ご主人さまぁ〜。照れるのですぅ〜」
「……そんなに顔を赤くするな。深い意味はないからな。とにかく、気をつけるようにね!」
「了解なのです!」
リライは夜空へ飛んでいった。さすがに高度取り過ぎじゃないか?と思ったが、魔法は届いているので問題はないだろう。
うん。順調に放ててる。リライは紅焔魔法が好きなようで、蒼い炎が夜空を照らしている。
威力も申し分ないのようで鱗をどんどん赤くしているが、リライに気づいていない。
はっきり言うと、俺の攻撃の波に埋もれてしまっている。仕方ないか。
あれから1時間半経ち、やっと2割近くまで削れた。
俺の放った魔法とかが、跳ね返る頻度が多くなってきてしまった。激化状態も相まって、反射してきた攻撃と連続的な光線攻撃のせいで壊滅させられた。
しかも、奴には生命感知とかそんなたぐいのスキルを持っているのか、本体の俺に向かって突撃して来たるすることもあって、空中戦と周りへの被害がもう尋常でない。
たまにリライにも攻撃が飛んでいくし。俺以外の分身は作れないのかな……。なんか、他者にスキルを使用する漢字で。
まぁ、実験はしないよりは良いから、やってみようか。
俺はリライに近寄るように指示を出し、土壁を生み出した。
土壁を生み出す目的は、目眩ましに分身全体でバ○スならぬ《パルス・バースト》を思いっきり放ってやるのだ。
近くにあるであろう街に「あそこなんか光ってるぞ!」とか言って、騎士みたいな人に駆けつけられるかもしれないが、決着をつければ問題はない。
眩い光球が2000個ほど生み出され、突如として爆発し、夜空を蒼く染め上げた。
影にいるのに、昼より眩しいな。2000も必要なかった。やりすぎたか。
まぁ、ドラゴンにでも有効な目眩ましだということがわかって結果的によかったが。
「リライ、今からお前に無限分身スキルを使ってみるから、実験に付き合ってくれ」
「了解なのです」
スキルを発動しながら、魔力をリライへ流す。光が生まれ、どんどん合わさっていく。
《Information:スキル《スキル転用》を習得しました》
どうやら成功したようだ。そのことを、メッセージウィンドウが物語っているし、隣にリライが二人いる。
ちなみにそのスキルは、本来自分にしか使用できない《無限分身》のようなスキルを、他者へ使用できるようになるというものだ。
しかし、その分身は俺にしか操作できない。これでは俺の分身を増やすのと一緒ではないか。
俺は少し罪悪感を感じながら、リライの分身を消した。
「ご主人さま!何故かできましたのです!」
「え?何が?」
俺は声の主の方へ振り返ってみると、リライが二人いた。
《Information:リライがスキル《無限分身》を習得しました》
「お前、どうやったのか!?」
「ご主人さまに送られた魔力の構造?的なものを真似したら、なんかできましたのです」
「天才だな〜」
「えへへ〜。ありがとうなのです〜」
俺は彼女を優しく褒め、頭をわしゃわしゃと撫でてやった。尻尾がちぎれんばかりに勢いよく振られている。
……そんなに嬉しいか?
「なぁ、リライ。最大でどのくらい分身出せる?」
「10体ぐらいなのです。それ以上出すとなんか頭がなにかの武器に突き刺されたような痛みがはしって、たえられないのです」
「そうなのか」
「動やったらご主人さまのように2000体もの分身を自在に操れるのですか?知りたいのです」
「……知らん。なんかできた」
「そうなのですか……」
リライは耳と尻尾を垂らしてがっかりしている。
そんなに落胆しないでくれ。悲しくなる。
「じゃ、ドラゴンが気絶している間に、倒し切っちゃおう!」
「了解なのです!」
俺たちはドラゴンの元へ向かって空を駆けていった。
「コメット・トレンチャルレイン!」
矢が放たれ、コバルトブルーの光をなびかせながら、ドラゴンへ見事に命中した。数本が戻ってきたが、リライに処理してもらった。
そして。
「やっと危険域に入ったーー!」
「わーーい!」
戦いが始まって、約四時間ぐらい経ったかな?いや、それ以上かもしれない。
とにかく、もう少しで倒せそうだ。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRUN!!」
「は!?」
「え!?」
奴から急に、耳をつんざくような咆哮が発生した。そして。
――朱蓮の瞳がより一層紅くなり、複雑で巨大な魔法陣が奴の足元に現れ、光柱が発生し、雲を貫く。
時間が経つに連れ、どんどんと太さが増していき、やがて奴の巨大な体躯を完全に包み込んだ。
そして現れたのは――。
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