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この空の果てよりも  作者: 羽生 しゅん
異世界は、実感を持って
13/37

13.そして時は、動き出す

デュラン寄りの視点続きます。

なので、ショウの事を「彼」と呼んでいますが、間違いではありません。

クルセルドはわざとです。



「話は最後まで聞け。私は『定める者』の就任を1年先延ばしにしてもらった」


「それは、どういう事です?」

話を聞いていたシェーザがヒースの代わりに彼に尋ねる。


「彼には1年の間、セドラフェアの習慣等を知ってもらうために、ゼロンの副官として研修期間をおく事になりました」

口を開きかけた彼の代わりに答えたのは、セラフェート筆頭だった。


「この件に関して、先に彼から提案があったのです。「この世界の事を全く知らない者が就任しても、他の反感を与えるから」と」


「確かにそうですね。現にヒースはこうでしたし」

クルセルドの言葉に同意を示す、茶髪の青年。その横で少年はそっぽを向いている。


「そこでなのですが」

壇上の『導く者』は、ようやく全員を呼び出す必要があった提案を切り出した。


「この1年間、彼が『定める者』の候補である事を他の者には公表しないでおきたいのです」


「公表しない~?」

すぐさま声を上げたのはヒースだった。怪訝そうに眉を顰めている。

「何でさ?」

その視線は黒髪の彼へ。


「私がこの世界に適応出来るか、はっきりしないからだ」

短く言われた言葉は、就任しない事もあるという事を仄めかしていた。


「それに『定める者』になる前から、その扱いを受ける気は無い」


ほぅ、とシェーザが感嘆の息を漏らす。

「素質はあるという事ですね……」


「クルセルド様」

話が切れた事を見計らって、ゼロンが上司に質問をぶつける。


「ガルバと裁定省副官のダナレーンには、この事を」

「伝えないでおきましょう」


即答。

何故かデュランはこの時、嫌な予感がした。

彼の表情は相変わらず笑顔なのに、本当は別の表情をしているのではないかと思ったのだ。


「ガルバにはいずれ知れるでしょうし、ダナレーンは裁定省で手一杯なのです。余計な情報は入れない方がいいでしょう……」


「そうですね、一年ありますし、その後もどうなるか判らないですから」

ゼロンがそう結論付けた。


「……ところで、クルセルド」

今まで言葉を挟まなかったデュランが、ようやく口を開く。

「彼に自己紹介していないぞ、そこの2人」


あっ、と声を上げたのは誰だったか。みんなして、そういえば、という顔をしないでくれ。

彼はそう思った。


こほん、と咳払いしたのは茶髪の青年。


「遅れましたけれど、私はシェーザと申します。セラフェートの『視る者』で、管理局の局長をさせて頂いています。貴方は?」

真紅の瞳が微笑みに細められる。


「私は本名ショウ=オオバヤシという。ショウと呼んでくれればいい」

よろしく、と彼が微笑み返すと、冷たい雰囲気が一転、柔らかいものとなる。思わずその場にいた者全てが息を呑んだ程だ。


しばらくして我に返ったシェーザは、隣の青髪の少年を促す。

彼は渋々といった感を前面に押し出した。


「……『聴く者』ヒース。総務部の部長」


言葉は端的だったが、ヒースが挨拶したという事は、それなりにショウを認めた、という事だろう。

その事に気付いたのか、クルセルドが彼に笑いかけると、ヒースは僅かに顔を赤らめて明後日の方向を向いた。判りやすい。


「ショウ。後1人、『駆ける者』兼騎士団団長のガルバがいるのですが、出払っているみたいです。いずれ顔を合わせる事もあるでしょう」

『導く者』が付け加える様に、この場にいない最後の1人を紹介する。


「あぁ、青○か」

彼が何か納得するように頷く。


「はぁ?ア○シマ?」

ゼロンが、誰だそれ、と言わんばかりに呟く。この言葉の意味が解ったのは恐らく、壇上で忍び笑いをしている青年だけだろう。


「いや、気にするな」

彼はあっさりと『拓く者』の疑問を受け流した。


そのまま消化不良のような顔をしている彼を無視し、ショウは、この場にいるセラフェートを見渡した。

そして、姿勢を正す。


「これから1年、世話になると思う。たくさん至らないところもあると思う。でも私は出来うる限り頑張るつもりだ。

……宜しくお願いします」


そう言うと彼は、一同に対し深々と頭を下げる。

その行動に、壇上の2人以外は驚きに固まった。


「こちらこそ、異世界故の不便があるかと思いますが、宜しくお願い致します。そして貴方にとって、最良の選択がなされる様、期待しています」


ショウの言葉に応じたのは、微笑みを湛えたクルセルドだけだった。


「それでは、紹介も終わりましたし、ゼロン」

「あ、は、はい」

上司の声にようやく元に戻ったゼロンが、慌てて返事をする。


「そろそろ彼を貴方の執務室へ案内してあげて下さい。他の皆も執務に戻って構いませんよ」

そう言いながら、未だ固まったままの2人に微笑む。


「では、失礼します。クルセルド様、デュラン様」

ショウの隣に移動したゼロンが、彼を促しつつ退室の挨拶をする。それに一つ頷きを返すデュラン。


「ショウ、任命書は後ほど届けさせますから、彼の所で待機しておいて下さい」

「ああ、分かった」


部屋を出る時にそんな会話がなされたのだが、残された『聴く者』と『視る者』の耳には届いていなかった。




あ○しまは、ショウの父親が好きで、全作集めていたみたいです。

……伏せ字の意味、ありますか……?



次回予告

それは何故なのか?何がなされたのか?

本人の与り知らないところで、物語は動いている。

次回この空の果てよりも「鳴り響く、ハリセンの音」

選択はいつも、すぐ傍にある……。


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