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この空の果てよりも  作者: 羽生 しゅん
異世界は、実感を持って
12/37

12.推理小説を、後ろから

PVが400超えました。多くの方に見に来て頂いて非常に喜んでおります。ありがとうございます!


今回はようやく『治世者〈セラフェート〉』が、大体(1人欠席の為)登場します。




 いつものように開いた扉の先には、見慣れた室内とその主。

そして、いつもと違う黒い色彩の存在が、出ていく前と同じ様にそこにあった。


「クルセルド、呼んで来たぞ」


彼は壇上の椅子に腰掛けている親友に声をかけた。彼の後ろから他の同僚達が部屋へと一礼をしながら入ってくる。


その様子を見ていたクルセルドが、首を傾げた。

「デュラン、ガルバがいない様ですが?」


入室したのは『護る者』を含め4人。確かに1人足りない。


「それが、とても言いにくいのですが……」


問われた彼の代わりに口を開いたのは、後から入ってきた者の1人。赤い目を困ったように細めている。


「先程、街の方でいざこざが起こったようで、『事件は執務室で起きているんじゃない!現場で起きているんだーっ!』とか叫びながら走っていってしまいました」


肩位までの明るい茶色の髪と女性のような顔立ちから、常に穏やかな雰囲気を醸し出している彼が、本当に申し訳無さそうに上司に告げた。


端で聞いていた黒髪の人物が一瞬ピクリと反応したように見えた。


「……後で言っておく……」


だが、先に口を開いたのは金髪の青年だった。蟀谷を揉みながら、低い声を漏らす。

日頃からよく目にするその行為は、最早癖になっているのだろう。こう見えて『拓く者』は面倒見がいいのだから。


「まあ、いないのなら仕方ありません」

疑問が解けたと思ったら、あっさりと諦める『導く者』。これも、いつもの事だ。


「今日、皆さんに集まって頂いたのは」

「この人の事ですね」


ようやく本題に入ったクルセルドの言葉を、少し高い声が遮った。


その声の主は彼とよく似たアメジスト色の瞳で黒い訪問者を睨み付けている。

但し、彼はまだ成長途中のため、見上げる格好になってしまっているのは、この際目を瞑ろう。


「ヒース……」

壇上のクルセルドが溜め息混じりに、少年と言っても差し支えない彼の名前を口にした。


「滅多に他人が来ない部屋に、知らない人がいたら当然でしょう?導師様」


最後の『導師様』を強調して彼は、強気な態度で壇上の『導く者』に言う。

そんな彼の肩に手を置いて、それ以上の発言を止めたのは柔和な笑みを浮かべた青年だった。


「恐らく、先日ゼロン殿に保護されたという方だとお見受け致しますが、どうでしょう?」


彼は少年の言葉を引き取るようにして、『導く者』に尋ねる。

ちなみにショウがゼロンによって保護された事は、クルセルドとデュランしか知らないはずだ。


「……流石、情報が早いな、シェ―ザ」


その事実に微笑むだけで肯定しない親友の代わりに、デュランが無表情に賞賛の言葉をかける。


「有難う御座います、デュラン様」


その言葉を受けた方は、にっこりと微笑んだ。

クルセルドのような作り物でない笑顔。それが余計に女性の様に見せているのを、本人は知っているのだろうか?


「そう。その方はシェーザの言う通り、3日前にゼロンが未発見の遺跡から見つけ出し、保護した人物です。異世界からセド=ラフェアに呼ばれて来ました」


彼等の会話が終わるのを待っていたかのように、『導く者』は話を再開した。

落ち着いた声で、シェ―ザと呼ばれた青年の言葉に補足を入れる。

話題の中心である彼は身動ぎもせず、その話に耳を傾けている。


「異世界から、ですか」

「異世界、ねぇ」


隣同士に並んだ事情を知らないセラフェート2人は、同時に呟いた。


「これは大変な事です。しかし、彼がこの世界に呼ばれたのには訳があります」


ここが話の核心部分だと言わんばかりに、クルセルドは言葉を区切る。

先程の発言に驚いている茶髪の青年と欺瞞溢れる少年も、聞き耳を立てる。


「彼は次期『定める者』なのです」


「本当ですか!?」


シェ―ザが即座に反応した。

その反応は正しいのだが、メンバーがメンバーなだけにある意味新鮮に映る。


「ようやく……ようやく現れたのですねっ」

胸の前に手を組み、花の咲いたような笑顔を見せるシェーザ。


それとは反対に青髪の少年は顔を顰める。

「僕は認めませんよ。そんな素性の知れない人なんて」


彼の言う事は正論だ。

その事に関しては、部屋を出て行く前にショウ本人も言及していた。


ヒースの言葉を受けて、黒髪の彼がようやく口を開く。


「素性を知らないのは当たり前だ。私にしてみれば、お前も素性の知れない奴だからな」


多少棘の含まれた言葉に、少年は眉を吊り上げる。言葉遣いが敬語で無くなっているのは、恐らくクルセルドが許可を出したからだろう。

そして、ショウは腕を腰にやる。


「だが、そう言われる事は判っていた」

「だったら!」


ヒースが声を上げる。それに対し、彼は冷静に次の言葉を紡ぐ。


「話は最後まで聞け。私は『定める者』の就任を1年先延ばしにしてもらった」




少しデュランよりの視点でした。

次回は『治世者』の紹介です。


次回予告

正体不明の侵入者は、次の瞬間には姿を消していた。

同時にその場から消えた同僚は真実を知っている!?

次回この空の果てよりも「そして時は、動き出す」

選択はいつも、すぐ傍にありそうです……。


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