4-19. 新アドミニストレーター
レヴィアは黒い画面を展開し、
「部分修復は境界の設定が大変なんですよねぇ……」
と、ブツブツ言いながら画面をにらみ、パシパシと叩いた。
そして、微調整が終わると、
「それいけ!」
と、叫びながら画面を叩いた。
壊れたフロアは一瞬で消え去り、そして、ワイヤーフレーム状の線画がニョキニョキと展開され、部屋全体がワイヤーフレームで修復されると、最後には壊れる前の状態が復元された。
「よしよし」
レヴィアは満足そうにニヤッと笑う。
「あら、上手じゃない」
ヴィーナは直ったフロアをキョロキョロと見回りながら言った。
「では、査定はまた今度ということで……」
レヴィアは引きつった笑顔で揉み手しながら答える。
「まずはお茶にしましょ。ケーキもあるんでしょ?」
「は、はい……」
渋い顔のレヴィア。
◇
レヴィアは手土産の『いちじくのレアチーズケーキ』を切り分けて、みんなでテーブルを囲んだ。
誠はコーヒーを丁寧にいれて、みんなに配る。
「いい相手見つけてよかったじゃない」
ヴィーナはヴィクトルに笑いかける。
「良かったです。全てヴィーナ様のおかげです」
ヴィクトルは隣のルコアの手をぎゅっと握って言った。
「我は?」
レヴィアはボソっと言った。
「結婚式もしないとね。レヴィア! 開いてあげて」
「えっ!? 私がですか?」
「他に誰がやるのよ? それとも……」
「あー、やります! 私がやります!」
レヴィアは焦って手を上げた。
「すみません、僕らのために……」
ヴィクトルはレヴィアに頭を下げる。
「まぁ、ルコアは我の妹みたいなもんじゃからな。いい式にしてやろう」
レヴィアは優しく微笑みながらラブラブの二人を見た。
「で、ヴィクトル君、うちで働く?」
シアンが口の周りにクリームをつけたまま聞いてくる。
「え? 何? 働くのはもう嫌じゃなかったの?」
ヴィーナはちょっと意外そうに聞く。
「とてもやりがいがありそうな仕事なので、妻が許してくれるならやってみたいなって……」
ヴィクトルはルコアを見る。
「主さまがやりたいことをやってください」
ルコアはニコッと笑う。
「『主さま』はやめてよ。もう、きみの夫なんだからさ」
「え――――、じゃぁ……。あ・な・た?」
赤くなってモジモジしながらルコアが言った。
「なあに?」
デレデレしながら答えるヴィクトル。そして幸せそうに笑いあう二人……。
ラブラブの二人に当てられて、周りの人はちょっとウンザリぎみに苦笑する。
「はいはい! じゃあ大賢者はレヴィアの下で副管理人ね!」
ヴィーナはそう言ってヴィクトルとレヴィアを見た。
「あ、ありがとうございます! よろしくお願いいたします!」
ヴィクトルは頭を下げる。
「レヴィアの星は今、要注意リスト入りしてるから君が頑張って盛り上げてね」
ヴィーナはニヤッと笑う。
「えっ? このままだと消されちゃうんですか?」
「停滞してる星をそのままにしておくほど余裕が無いのよね……」
ヴィーナはウンザリしたように言った。
「それは……、誰が何のために……そういう決まりになってるんですか?」
ヴィーナはヴィクトルをじーっと見つめ、淡々と聞く。
「畑に種をまくじゃない?」
「はい」
「一斉に芽を出してたくさん伸びてくるじゃない?」
「……、はい」
「そのまま放っておくとどうなる?」
ヴィクトルは腕組みをしてしばらく考えて言った。
「中途半端に繁茂して……全部枯れちゃいますね」
「それと一緒よ。間引くことは全体の健全化のためには避けられないの。あえて言うなら宇宙の意思ね」
そう言って肩をすくめた。
「消される星の人は皆殺し……なんですか?」
「殺しはしないわよ。また新たな星で生まれ変わるわ。あなたと一緒ね、転生」
そう言って、ヴィーナは上品にレアチーズケーキを食べる。
「あら、美味しいじゃない」
ヴィーナはパァッと明るい顔をして言った。
「うちの星の文化も捨てたものではないのです!」
レヴィアはここぞとばかりにアピールする。
「食文化は○にしておくわ」
ヴィーナはニヤッと笑ってコーヒーをすすった。