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4-2. 神々の死闘

「狂ってる……」

 ヴィクトルはうんざりした表情を見せた。

「分かってないわね。人々を活性化させることが目的なんだから、なんだっていいのよ。自分にも大金持ちになれる道がある。そう思わせられれば成功なのよ」

「平民でも金持ちになれる夢を持たせるって……ことか?」

「そう。今、この世界に足りないのは夢よ。王侯貴族がふんぞり返って利権でガチガチに固め、庶民は一生貧困のまま。ドゥーム教はそんな社会を根底から変える力があるわ」

「それで国王を襲ったのか?」

「ミヒェルね。あいつバカなのよ。私は『待て』って言ったのに先走っちゃったのよね……」

 ヒルドは手のひらを上に向け、首を振る。

「貧富の差は確かに問題だ。でも、あなたの計画も社会を混乱に陥れ、多くの人が死ぬ。そんなことに協力はできない」

 ヴィクトルはまっすぐな目で言い切った。

「ははっ、あんたバカね。これはお願いじゃないの、命令よ。魔法も使えない六歳児に一体何ができるのかしら?」

 ヒルドはバカにした目でヴィクトルを見下ろす。

「僕が弱かろうが何だろうが協力などしない!」

 ヴィクトルは断固たる態度でヒルドをにらむ。

 ヒルドは、そんなヴィクトルをしばらく面倒くさそうに眺め……、

「あらそう、じゃ、この娘をこのままスラムに放り投げるわ」

 そう言うと、弱って横たわっているルコアを足で小突いた。

「へっ!?」

「この美しい肌が、女に飢えた男たちに次々と穢されるんだわ……。うふふ、ゾクゾクしちゃうわ……」

 ヒルドはそう言ってルコアのワンピースをグッとたくし上げ、白く美しい肌を(あら)わにする。

「や、止めろ! 彼女は関係ないだろ!」

 ヴィクトルは真っ青になってルコアのワンピースを押さえようとしたが、突き飛ばされてゴロゴロと転がった。

「お前は本来何の力もない子供……。自覚してもらわなきゃ困るわ」

 そう言うとヒルドは、鋭い爪の先でルコアの白く柔らかい太ももの内側をツーっと裂いた。真紅の鮮血がタラリと垂れてきて白い太ももを穢す。

「止めろ! 止めてくれ――――!」

 ヴィクトルは叫んだ。

「ふふっ、協力する気になった?」

 ヒルドはニヤッと笑う。

 ヴィクトルは目をつぶり、大きく息をつくと、

「レヴィア様がこんなのは許さないぞ」

 そう言ってヒルドをにらんだ。

「ふふん、あのロリババアなんかもう怖くないの」

 ヒルドがそう言った直後、


 ドン!

 衝撃波がヒルドを襲い、ヒルドは吹き飛ばされ、二、三回転してもんどり打った。

「ロリババアが何だって?」

 気がつくと、隣で金髪のおかっぱ娘が怒っている。

「レ、レヴィア様!」

 ヴィクトルはその頼もしい登場に歓喜した。

「お主、でかしたぞ。ついに尻尾をつかめた」

 そう言うとレヴィアは、両手のひらをヒルドの方に向け、精神を集中させる。


 狼狽を隠せないヒルドは急いで立ち上がると、プロテクト! と叫ぶ。真っ青な氷山のような分厚い壁が床から吹き上がった。

 レヴィアは無表情のまま、

空間断裂(ディスロケーション)!」

 と叫び、手のひらを上下にずらす。


 直後、ズン! という音と共に空間が上下に断層のようにずれ、氷山とヒルドを上下にずらした。

 氷山は霧消し、頭から真っ二つにずらされたヒルドは、血を飛び散らせながら、身体の半身ずつバタバタッと崩れ落ちる。

 それはまさにホラーのようなおぞましい光景で、ヴィクトルは思わず目を背ける。


 それでもレヴィアは手を止めない。

「そいやー!」

 レヴィアは右足をパンと前に一歩踏み出す。すると、足元から黒い何かのラインが何本もシューッと床を()ってヒルドの血まみれの身体に迫った。

 血まみれの右半身は素早く飛び上がり、ラインを回避したが、左半身は反応が遅れ、ラインに捕まる。

 直後、左半身は四角い無数のブロックノイズに埋もれ、ぐぎゃぁぁぁ! という断末魔の叫びを上げ消えていった。


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