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2-7. 龍のスキンシップ

「ルコア、ゴメンな」

 店を出るとヴィクトルは謝った。

「ウロコ取るの痛いんですからね!」

 ルコアはプイっと向こうを向く。

「お詫びに何をしたら……いいの?」

 ルコアはあごに人差し指を当てて、少し考え……、

「そうね……、ちょっと考えとく!」

 と、ニヤッと笑った。


        ◇


 次は服屋を回ってヴィクトルの服を見繕う。

 ルコアは上機嫌に服を選んでは、次々とヴィクトルに当てた。

「あ、これ、主さまに似合ってるわ!」

「あー、じゃ、これでいいよ」

 ヴィクトルはややゲンナリしながら返す。

「あ、ちょっと待って! こっちの方が可愛いかも……」

「いや、可愛くなくていいからさ……」

「うーん……。じゃ、次の店行ってみよう!」

 ルコアはノリノリである。


 結局、シャツと短パンを選ぶだけですごい時間を取られてしまった。

 買った服に着替えたヴィクトルを見て、ルコアはうれしそうにニッコリと笑う。

 ヴィクトルは、何がそんなに嬉しいのかとまどったが、そんなルコアを見てるうちに、自然と心がふんわりと温まっていくのを感じた。

 今朝従えたばかりの暗黒龍と、こんな心の交流をしているなんて不思議ではあったが、一年ぶりの心癒される気分に頬が自然と緩んでいく。


            ◇


 続いてマスターに紹介された宿屋へ行って部屋を取る。

「201号室だって」

 ヴィクトルはそう言って階段を上り、ドアを開けた。

 比較的ゆったりとした間取りにダブルベッドがドンと置いてある。

「あ、あれ……ダブルだ……替えてもらわないと」

 困惑するヴィクトルを尻目に、ルコアはピョンと飛んでベッドにダイブした。

「わーい!」

「え? ツインに替えてもらおうよ」

「いいじゃない大きいベッド。フカフカで寝心地最高よ! 仲良く寝ましょ!」

 ルコアは上機嫌にベッドの上でビヨンビヨンと弾む。

 ヴィクトルはしばらく考え込んだが、

「寝相悪かったら床で寝てもらうよ!」

 そう言って、ヴィクトルもゴロンと寝転がった。

「あ、本当だ……、これ、いいね……」

 一年ぶりのベッドは快適で、ヴィクトルは思わずにんまりとしてしまう。

「ふふっ、主さま捕まえた~」

 ルコアが上にのしかかってくる。柔らかな胸が押し付けられ、甘い香りにブワッと包まれるヴィクトル。

「うわっ! やめろバカ!」

 押し返そうにも、そのためには少女の柔肌を押さないとならない。

 ヴィクトルは真っ赤になって困惑する。

「ふふっ、冗談ですよ!」

 ルコアは嬉しそうに横に転がった。

「お、お前なぁ……」

 ヴィクトルは大きくため息をつく。

「スキンシップですよ、スキンシップ! 仲良しの秘訣(ひけつ)ですよ!」

 ドラゴンとのスキンシップがこんなに心臓に悪いとは予想外である。

 前世の時も女の子の扱いに困らされてばかりだったのを思い出し、こういう時何と言ったらいいのか悩み、ため息をつく。

 やがて睡魔が襲ってくる。思えば今日はいろいろあり過ぎた……。

 ヴィクトルは大きく息をつき、静かに眠りに落ちていく。


          ◇


 バシッ!

 顔をはたかれたヴィクトルが目を覚ました。

「ん? なんだ?」

 部屋はもう薄暗くなっていて、隣でルコアが大口を開けて寝ている。どうやら寝返りを打った時に叩かれたようだった。

 ヴィクトルは寝ぼけまなこで不機嫌につぶやく。

「だからダブルは嫌なんだ……床で寝てもらうぞ……」


 だが、幸せそうに寝ているルコアの寝顔を見ると、あまり強いことを言う気も失せてくる。流れる銀髪に透き通るような白い肌。そして、長く美しくカールするまつげ……。

 ヴィクトルはしばらくルコアの寝顔をぼんやりと眺めていた。

 これが街を焼き滅ぼしたとされる、あの恐ろしい暗黒龍とは誰も思わないだろう。世界は不思議に満ちている。ヴィクトルは首を軽く振り、またゴロンとベッドに横になった。

 そして、天井を見ながら朝にルコアが言っていたことを思い出す。魔法やルコアを作り出した神代真龍……。一体どういう存在なのだろう? それは自分を転生させてくれた女神、ヴィーナとはどういう関係なのだろうか?

 ヴィクトルは寝返りを打って真剣に考えてみる。しかし、いくら考えても全く手がかりすら見えてこなかった。

 そもそも転生そのものが自然の摂理に全く反している訳で、自分の存在自体がイレギュラーなのだ。他にどんなイレギュラーな事があっても、驚いていてはいけないのかもしれない。

 まずは神代真龍のレヴィア様に会うこと、これをルコアにお願いしてみようと思った。



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