【第1話】 ルヴェート帝国
ルヴェート帝国。
それは、一、二を争うほどの超のつく大国だ。数十年前までは大陸でも魔法使い人口が最低であり、
カスみたいな軍事力とゴミみたいな経済の為か、隣国からはまるで相手にされない弱小国家として位置付けられていた。
その為か、ルヴェートの人民であるというだけで、酷い差別をされてきた。学校がないから必然的に単純労働者が多く、奴隷的な生活を送ってきた者もいる。
しかし、近年に魔石による技術革新で急速に発展し、今や誰しもが魔石を利用して魔法を扱うことが出来るようになったのだ。
勿論、軍事転用もされている。
代表的なものが、T・Gシステムだ。
このシステムは隣国の魔法使い達を驚愕させた。なぜならば、この兵器によって魔石さえ用意すれば、詠唱せずとも誰でも魔法を発動することが出来るようになったからだ。
装備も軽量化と簡略化に成功しており、重厚な甲冑タイプではなく、ベルトやバングルといった装備である。機動性も破壊力ともに極めて高かった。
ベルトを中心として全身へと魔力が流れ込み、大幅に身体が強化・硬化される。
その状態で甲冑を殴れば、容易に貫通するほどだ。
それだけでなく、バングルを装着し魔石を消費することで、高火力の魔法を腕から放つことが出来るのだ。
これによって、遠距離からの一方的な殲滅も可能となり、戦局を大きく変えたのだ。
これまでにも魔法使いの量産化を目指した国は数多く存在する。
例えば、国庫のほとんどをつぎ込んで魔法使いを大量に雇い入れる国や魔法教育に力を入れた国、魔法を扱える者に対して参謀という役職を用意して優遇制を導入した国などがある。
しかし、それは国力があったから実現できたと言える。
そして、この大陸で唯一ルヴェート帝国のみ、知識がなくても誰しもが魔法を扱うことができる装備を開発したのだ。
さらに、T・Gシステムを量産化したことで軍事力において他国を圧倒した。
ただ、その技術革新が全ていいことだとは限らない。
隣国へ侵略を開始すると同時にルヴェート帝国と改称し徴兵制と増税を強いた。
資産家や貴族の名家は多額の金銭を支払うことで高給士官となり、安全圏からの指揮権が与えられた。
一方で平民は度重なる兵役と重労働で心身ともにボロボロであった。帝国へ反旗を翻せば、最新のT・Gシステムによって虐殺される。亡命しようにも、他国へ赴けばルヴェートというだけで酷い拷問をされる。
だから、戦い続ける他に生きる道はないのだ。
運のいいことに、戦果を上げれば栄誉を称えられ多額の報奨金と約束されたポストが与えられるのだ。
そして、今日、藁をもすがる思いで青年は戦場を駆け抜けるのだった。