第三話 馴れ初めと共同作業 下
『妾とお主は、ひとつとなったのじゃ!』
声が聞こえて、目を開いた。
視界が明るい。
さっきまで、面頬が邪魔していたのに、今は一面をはっきり見える。
体にも力がみなぎって、軽く、そして、力強く動く。
「って、手足も動いてる!」
体を包む、漆黒の全身鎧。
その籠手が、指の一本一本が、自分の意志で動かせている。
「腕が、治ったのか?」
『残念じゃが、失くなった手足は戻りはせん』
頭に響くリーマの声が、浮き足立っていた俺の意識を現実に戻した。
『妾たちは、魂のレベルで融合しておる。お主は今、妾の体を自らのものとして操っておるのじゃ』
「俺の、もの……」
『話は後じゃ、来るぞ!』
地響きとともに、紅い巨竜が突進してくる。
「くそっ」
逃げようとする俺を、
『迎撃せんか!』
リーマが叱咤し、動かした。
「グギャア!?」
「なっ!?」
籠手の正拳突きが、竜を弾いて、牙をへし折る。
『言ったはずじゃぞ。妾たちなら、あれに勝てると!』
俺は、起こったことが信じられずに、じっと手のひらを見つめていた。
『それとも、お主もあやつらのように逃げ出すのか。仲間を見捨てた、無様な騎士のように!」
拳を握った。
無意識だった。
俺はあそこで、見殺しにされていた。
憧れていたんだ。
あんな奴らになりたくて、俺は騎士見習いになったんじゃない!
『体の支配権はお主に戻すぞ。魔力は妾が練る。それを使って――』
「ああ。ふたりで倒そう、あのドラゴンを」
『――良い答えじゃ』
鎧から、漆黒の魔力が迸る。
とんでもない量、凄まじい質。
リーマが練った極大の魔力が、全身を巡り力となる。
「グガァァァァァ!」
猛るドラゴン。
飛びかかりながら、火炎の息をまき散らす。
俺の足は、魔力を込めて地面を蹴った。
小細工はない。
真っ向からの正面勝負。
超スピードでドラゴンに迫り、右の拳を叩きつける。
「砕け散れぇ!」
断末魔など残させない。
ドラゴンの首は、俺たちの拳で千切れ飛び、
『このまま抜くのじゃ!』
後ろに控える岩盤もろとも、籠手がブチ抜いた。
きらきらと注ぐ白光が、俺たちの黒い鎧に光沢を浮かび上がらせる。
「……って、外まで突き抜けた!?」
愕然とした。
勢い余って、俺たちは地下空洞の壁を貫き破り、気づけば青空の中で太陽の光を拝んでいた。
『当然じゃろう。妾もちょいと本気を出したからの』
直後、強靭な地盤を失って、神殿跡地が崩落した。
歴史があったであろう神殿が、見るも無残に潰滅していく。
「これは、やりすぎたんじゃないか……」
『せっかくの初融合なのじゃ。派手にやらんとな』
澄み渡る青空の中を、俺たちは暢気に落下していく。
こうして、俺とリーマは初戦闘を勝利で飾ったのであった。