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第十七話 相応しい剣

「この気配は……ニイナよ、完成させたのじゃな!」


 リーマは俺から(からだ)の支配権を自分に移すと、ニイナの落としたケースのもとに駆け寄っていく。

 急な解除と方向転換に、俺は兜に(したた)かに頭を打ち付けた。


「痛ってえ……お前なあ!」

「見ずともわかる。この感覚、かなりの業物(わざもの)じゃ!」


 ニイナは一瞬ぽかんとしてから、


「へ、わ、業物っ!?」


 とあたふたしだした。


「そんなに凄い剣なのか!?」


 だとしたら、あのスライムにも通用する?


 だが、当のニイナは、泡を食ったように口をぱくぱくさせている。

 しかし、覚悟を決めたように深呼吸して、


「そ、そうよ! 究極の鎧に釣り合う最高の剣を、この私が打ち抜いたのよ! それが業物でなくてなんだっていうのよ!」


 究極の鎧に向かって、鍛冶職人の矜持(きょうじ)を示した。


「よくぞ言ったぞ」

「ありがたく、使わせてもらうぜ!」


 俺は再びリーマと融合し、ケースを砕いて、中の剣を取り出した。

 細く鋭い諸刃の剣が、炎熱の灯でギラリと(きら)めく。


「こいつは、細剣(レイピア)か」


 漆黒の鎧と対をなすような、白銀色(しろがねいろ)の綺麗な刀身。

 その剣を、軽く振るって間合いを測る。


『む、心得がありそうじゃの?』

「騎士見習いの頃に、少しな」


 刃を潰した練習用のものだったけど、訓練で取り扱っていた。


『ならば、妾は技法には口を出さん。じゃが、そのまま斬れば刃を喰われるぞ』

「わかってる。魔力を流せばいいんだろ」


 素材となったギィタル鉱の、高い魔力伝導性。

 そいつを信じて、俺は籠手(ガントレット)から魔力を流し込む。


 注がれていく黒い魔力に、刀身は、砕けるどころか、仄かに赤く輝きはじめた。


『うむ、やはりドワーフの手製武具よ。鉱石に秘められた力を、十二分に引き出しておる』


 詳しく知らない俺でもわかる(・・・)

 この剣は、あのスライムを、一刀のもとに葬れる。


『くるぞ!』


 複数の触手が迫る。

 赤熱しながら、すごい速さで打ちつけてくる。


 その鞭のようにしなる触手を、


「おりゃあ!」


 赤く輝くレイピアが断ち切った。


「よし、やれる」


 切れた触手は、本体に戻ろうと蠢いたが、そのままドロリと、形を保てず崩れていく。


『やはりの。妾の魔力と反応して、再生阻害の効果を生んでおる』

「もっと魔力を篭めたらどうなる?」


 俺の問いに、リーマは(うた)うように宣告した。


『即死効果が生じるであろうな』


 迷わず俺は、レイピアに膨大な魔力を送る。

 俺が扱える最大限。

 その最大限の魔力を受け、薄い赤色に輝いていた刃は、刀身を克明な真紅に変えていく。


「行くぞスライム野郎!」


 大地を蹴り、巨大なスライムに肉薄する。

 伸びる触手をするりと躱し、懐深くに潜り込む。


「喰らえ!」


 魔力で踏み込み、刃を高速で突き出した。

 スライムは触手で防御したが、レイピアは、触手もろとも本体を刺し貫いた。

 俺は勢いを殺さず、そのまま体ごと突っ込んで、スライムの体を突き破る。


「これで――」


 俺がスライムの背中から飛び出した時、それはもう、スライムではなかった。

 真紅のレイピアによる即死効果で、スライムは鈍色の水に変わって、地面に流れて、大きな水たまりとなっていた。


「――一丁上がりだ」


 レイピアを振るい、紅い刃についた水を払う。


『まるで、血塗られた魔剣じゃな』

「魔王の鎧に相応(ふさわ)しい、ってか」

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