表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

第十四話 追い込みはほどほどに

 ニイナに連れられ、俺とリーマは再び鍛冶工房へとやってきた。


「おう、来たな」


 工房長の髭ドワーフ、オキワロさんが、俺たちを出迎える。

 彼は、さっき採掘してきたギィタル鉱を検分していた。


「こいつは申し分ねえ品質だ。量も揃ってる。いい武器がつくれるぞ」


 工房長のお墨付き。

 これでようやく、武器を作ってもらえることに。


「それなんだがよ。お前さんらにやる剣、ニイナに打たせてやっちゃくれねえか?」

「ふーん。ニイナに?」

「ほう、ニイナにか?」

「へー、私、に……?」


 一瞬の間。そして。


「ええっ!? 私!?」


 絶叫するニイナ嬢。


「そうだ。この仕事はお前が請け負ったようなもんだろう?」

「私より腕のいい人はいっぱいいるじゃないですかっ!」


 慌てふためくニイナは、俺たちをビシッと指さし力説する。


「おふたりだって、私より技術力のある鍛冶職人のほうがいいはずです!」


 しかし。


「え? いいよ、別に誰が作っても」

「妾も構わんぞ。ちゃんと使える武器になるなら、誰でもよいのじゃ」

「そこはこだわりなさいよ!」


 残念なことに、彼女の味方はいなかった。


「つってもなあ。このギィタル鉱はニイナが掘り当てたという見方もできる。なら、それを真っ先に使う権利は、やっぱりニイナにあるだろ」


 ドワーフの鍛冶師は、そういうことに重きをおいているらしい。


「でも、リーマみたいな素晴らしい鎧に見合う武器を作るなんて――」

「その栄誉を奪うことこそやっちゃいけねえ。むしろ、こんな栄誉を拒んだりしたら、鍛冶師の名折れだぞ」


 オキワロさんにこうまで言われて、ニイナもついに観念した。


***


「それで?」

「できたのかの?」

「まだできないわよ!」


 催促する俺とリーマに、ニイナがイライラと声を張り上げた。


鍛造(たんぞう)するどころか、構想だってまとまってないわよ! どうしたらいいか全然わかんないの! 邪魔しないで!」


 有無をいわさず追い出される。

 剣の製作役に任命されてから3日目。

 ニイナは、かなり(こん)を詰めているようだ。


「あのぶんだと、まだまだ掛かりそうだな」

「しかたあるまい。妾に釣り合う剣ともなれば、相応の時間を要するのは自明の理なのじゃ」


 ちなみに、俺たちはドワーフの隠れ里に泊めさせてもらっていた。

 剣が出来上がるまで、俺の魔力制御の練習も兼ねて、鉱山の採掘作業を手伝っている。


「でも、剣がないと【スキル】の修練ができないんだよな?」

「できぬこともないんじゃが、方向性がの……」

「方向性?」

「とはいえ、ずっと魔力の鍛錬のみでは芸がないしの。試しに、打撃系のスキルを習得してみようかの」


***


「と、いうことで、上の森にやってきたのじゃ」

「突然の場面転換だな」

「ここなら、いい具合の障害物がたくさんあるからの」


 辺りには、乱立する森の木々。


「この場所で、高速機動からの打撃攻撃を練習するのじゃ」


 リーマの訓練メニューは、意外にも簡単そうに聞こえるものだった。


「脚に魔力を充填し、木を1本ずつ3回避けて、直後に拳を放つ。そうしたらすぐ次の木に向かう。これを……そうじゃな、まずは1万セットくらいやってみようかの」

「また、アバウトだな」

「回数はアバウトでよいが、木を避けるときはギリギリの距離で、最短のルートを通るのじゃぞ」


 質には気をつけ、かつ回数をこなせってことか。

 体力はリーマのお陰で無限にあるから、1万ってのも、決して不可能な数字じゃない。


「よおし、やってやらあ」

「では、さっそく融合するのじゃ」



 リーマと融合した俺は、ただちに訓練を開始した。

 動作自体はシンプルだ。

 ジグザグに木を躱してから、その先の空間に正拳突き。

 が、これが結構難しい。


『跳びすぎじゃ! 最短距離で地面を踏むのじゃ!』

『遅いのじゃ! 速度を緩めたら意味がないのじゃ!』

『体が流れた! 木にぶつかった! 踏み込みがヌルいのじゃ!』


 鬼コーチの激も止まらない。


『最後まで気を抜くでない! 拳に腰が入っておらんぞ!』


 5千回ほどやったところで、リーマからストップがかかった。


『ぶっちゃけ、センスがないのじゃ』

「まじか」


 へこむ俺。


「なさすぎて、割と真面目にびっくりなのじゃ」


 超へこむ俺。

 リーマの高速機動を知っているから、何も言い返せない。


体捌(たいさば)きは全ての基礎じゃからの。これを一流に持っていけねば、後の全部が二流以下じゃぞ」


 おっしゃるとおり……


『予定変更じゃ。まずは、この森と山を自在に駆け巡れるようになるのが先決じゃ。むろん、鉱山の採掘作業も欠かしてはならんぞ』


 こうして、俺はスキルの習得を一旦諦めて、基礎トレーニングに精を出すことになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ