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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生徒会長が「生徒会でコンドームを売ることにしましょう」と言い出した。

作者: 兎夢

 生徒会長が言い出した。


「生徒会でコンドームを売ることにしましょう」


「は?」


 意味が分からないよな。俺も分からない。

 けれども、我らが生徒会長は真剣な顔をしている。まるで国の将来を語る政治家のように希望に満ちた瞳で、性感染症予防の道具の名を口にしていた。


「えっと……ごめんなさい。会長、聞き間違えをしたみたいです。もう一回言ってもらってもいいですか?」


「生徒会でコンドームを売ることにしましょう、と言ったの」


「……近藤くん?」


「君、日本中の近藤くんに殺されるわよ」


「友人が顔を真っ赤にしたことはありました」


 別にふざけて言ったわけではなく、単純に聞き間違えただけなんだけどな。

 しかし、どうも今回の方は聞き間違えではないらしい。近藤くんじゃないのなら、生徒会長が口にしたのはやはり性感染症予防の道具の名前ということだろうか。


「会長の言うそれって、よく保健体育の教科書に載ってるあれですか?」


「その通り。水風船やお祭りで売ってるヨーヨーみたいなアレよ」


「喩え方がくそったれだからもう言わないでくださいね!?」


 男子中学生のノリだった。

 高校生であるところの俺は当然ついていけない。だが、生徒会室には他の生徒会役員はいないため、俺が打ち返すほかなかった。


「で? なんでその、えっとそれを生徒会で売らなきゃいけないんですか?」


「なきゃいけない、じゃないわよ。そうしたらいいんじゃないか、という提案」


「なんでまた、そんな提案を。理由を聞いても?」


「そうね。もちろん、教えてあげるわ」


 そりゃ、そんなとんでもないことをしようとするなら教えてくれなきゃ困るよ。

 喉から出かかりそうになるが、ギリギリ堪えた。妙なことを言ってもしょうがない。今は生徒会長の話を聞く。


「今日、保健体育で家族計画について話を聞いたのよ」


「家族計画っていうと……避妊とか不妊治療とか、そういう?」


「少し違うけれど……まぁ、そんなところ」


 生徒会長と俺では、学年が違うため保健体育で習う内容が大幅に異なる。

 すぐには理解できなかったが、まぁそれでも年相応の知識くらいはある。


「その家族計画がどうかしたんですか?」


「えぇ。それで学んだのだけれど……高校生の中には、避妊をせずにセックスをしてしまう人がたくさんいるらしいわ」


「多分たくさんはいないんじゃないですかねッ!?」


 日本の高校生ってそこまで爛れてないと思うよ?

 まぁ、避妊をしないっていう浅慮な奴もいるにはいるだろうけど。


「いないかしら?」


「いないですよ。もちろん、ゼロじゃないでしょうけど。それにうちって結構な進学校ですし……その、せ、くすとかする人もいないんじゃ?


「甘い! はちみつ梅干しくらい甘い!」


「それは甘いんですか!?」


「微妙ね」


「じゃあなんで喩えに使ったんですかっ!?」


 どうして俺はこんなツッコミをしなくちゃいけないんだろう。頭がくらくらしてきた。おでこに梅干しをくっつければマシになるかな……。


 そんな俺の胸の内を知らず、生徒会長は呆れた声で続ける。


「いい? うちのような進学校だからこそ、生徒の性欲は蓄積され、いずれ爆発する危険を孕んでいるの。うちの生徒の頭の中なんて皆、ローターとバイブでいっぱいよ」


「うちの生徒に一回土下座してください! というか生徒会長なんてやめちゃえ!」


 一応言っておくと、俺の頭には決してローターもバイブもありません。持っては……いるけど、つ、使ったことはない。


「百歩、いや一万歩譲って」


「まん○なんて卑猥よ」


「言ってないですから! ちょっとその口を黙らせてやりましょうか?」


「……唇で?」


「裁縫セット持ってきますよ」


「やめて。そのマジな目は怖いわ」


「じゃあ反省してください」


 本気で裁縫バッグを持って来ようかと思ったけれど、しっかり反省してくれたみたいなので我慢する。裁縫は苦手だし。


「こほん……。で、一億歩譲ってこの学校の生徒の性欲が強いとしましょう。だからと言って、どうしてコンドームを売る必要があるんですか?」


「理由はいくつかあるわ」


「やけに真面目な顔ですね……。言ってみてください」


 副会長として、このくだらないやり取りを議事録に残そうか迷う。

 生徒会役員には男子もいる。というか、近藤くんもいる。可愛そうだから記録するのはやめた。


「一つは、コンビニなどでコンドームを買うのは抵抗がある……という生徒が多いということよ。そのせいでコンドームなしでセックスをしてしまったら大変だわ」


「……一理ありますね」


「でしょう? コンドームなら、性感染症の問題を避けられるわ。素晴らしいと思うの」


「…………」


 うちの生徒会長はこういう時、本当に弁が立つ。反論が思いつかないので、他の理由を言うように促した。


「もう一つは、性の多様化が進む現状にあるわ」


「と言いますと?」


「今の時代、男性同士や女性同士のカップルだっておかしくないでしょう? そして、そういうカップルだってセックスをすることはある。そういう時、性感染症を予防するためにも絶対にコンドームが必須になるわ」


 よく聞く話だ。エイズは男性同士の性交が元々の原因、などという話もある。その信ぴょう性は疑うべきところだが、同性同士でも感染の危険があることは事実だ。


「そうなった時、同性同士のカップルは通常以上にコンドームを買いにくいわ。カミングアウトしていなければ猶更ね」


「……まぁ、確かに」


 分からない話ではない。仮に周囲が全く意識していなくとも、自分の中で「変に思われてしまうのではないか」という懸念があれば、その瞬間に躊躇いが生まれてしまう。


 ただ。

 そういった理屈的なことよりも、俺には思うところがあった。


 無視すべきなのか、迷う。けれどもこんな風にあからさまに言ってきているということは、無視してほしくないという合図なのではなかろうか。


「……あの、会長。ううん、恵美」


「な、なに?」


「シタいの?」


「……(こくこく)」


「急にその話をしたのも、そのせい?」


「……(こくこく)」


「そっかそっか。受験勉強始まっちゃって、最近してなかったもんね?」


「(こくこくこくこくこく)」


 激しく首を縦に振る俺の恋人を見て、お腹の辺りがきゅんきゅんと熱くなるのを感じた。

 本当に可愛い人だ。迂遠なことをせず、素直にしたいって言えばいいのに。


 ま、まぁ?

 俺はそういうのに最近まで疎くて耐性がなかったから、直接言いにくかったんだろうけどさ。


「ふぅん。……それで会長。それを売り出したいってことは、サンプルとか持ってきてるんですか?」


「そ、それは当然よ。サンプルがなきゃ、判断できないじゃない」


「じゃあ……うち、来ますか? 頭の中がローターとバイブでいっぱいな会長?」


「…………(こく)」



 この後、たくさんシた。

 コンドームを避妊具としてではなく、性感染症予防として用いて。

俺っ娘×生徒会長


ちょいちょいヒントは出してたり。

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