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「ねぇ、あれって確か希少種よね」
「そうだね」
「いっぱいいるね」
「そうだね」
「なんか汚いよね」
「そうだね」
「可愛さが売りだったよね」
「そうだね」
「可愛いって言うより怖いよね」
「そうだね」
「ともって左利きよね」
「そうだね」
「ともって童貞よね」
「ど、童貞ちがうわ! 」
「ちっ」
佐緒里の舌打ちを聞きながら、大分元気になったと思う。
会わない間に何があったのかなんて知らないし、知りたくもないけれど
それでもこうやって、ふざけ合っている佐緒里が本当なんだろう。
「おい、あっちに変なのがいるぞ」
「よし、競争」
「面倒臭えよ」
「走れ、走れ、元スプリンター」
そうして俺たちは動物園っぽい所を見て回った。
回っている間、佐緒里はずっと笑っていた。
何がそんなに楽しいかは分からないけど、昔と同じように。
動物園っぽい所を満喫した後は、近くの食堂で2回目の昼食だ。
「せっかく来たんだから、海鮮食べよう!」
「海鮮!海鮮!」
「なんだよそのテンション。さっき弁当食ったばかりだろうが」
「海鮮は別腹って言うでしょ? 」
「初めて聞いたわ」
「俺は3回目」
「ああそうかい」
とは言え、さすがに食べきれないだろうということで3人でシェアすることにした。
みんな大人になったな。
「腹いっぱいだけど、旨いのは分かるわ」
「おい佐緒里こっちに移すの止めろ」
「男の子でしょ」
言い出しっぺが最初に音をあげるという、完全な泥沼と化した食堂。
別腹はどうしたんだ。
まったく好き勝手しやがって先が思いやられる。
結局、大人はいない。