第8話 食料自給率を上げるには
次は食料自給率だな。長年の悲願をこの際、実現しよう。
「さくら、稲を創ってくれ。」
「はい、ご主人様。」
先程、金を創ったように、さくらは稲を作り出した。
「できました。ご主人様。」
よしよし、これで米が食える。
このライスフィールド家に転生してから、パンばかりだった。
ライスフィールドなんだから、米作れ!米!
・・・いかんいかん、落ち着け、ようやくだ、ようやく、私の願いが叶う。あとはこれを広めるだけだ。土地はこれまでの賦役で作ってある。
・・・誰が作るんだ。作り方を知っている人、いないよな。
よしインストラクターを用意しよう。
私は本を広げ、あるページを開き、呼び出す遺産の名を告げた。
『技術指導者:農業』
光と共に、そこには一人の男が現れた。
男は前世で見たグループのリーダーっぽい人だ。
「よし、お前の名前は『シゲル』だ。」
「はい、分かりました。ご主人様。」
『技術指導者:農業』は、技術指導者シリーズに属する、農業全般の指導を行う。初代が見ていたバラエティ番組を思い出し、作ったようだ。初代、死んだ年代、俺と近いのかな。
「では今回の設定は、『偶然、稲を見つけたシゲルは、色々研究した結果、食べ方や育て方を見つけ、この作物を広めようと考えた。そしてこの土地にやってきて、父上が興味を持って、うちの領内で栽培してみることにした。』これでいく。」
「はい、分かりました。ご主人様。」
俺は米が食べれる未来を想像し、笑いがこみあげていた。
「ご主人様。それだけでは不足です。」
「さくら、不足とは?」
「稲作は時間がかかります。約半年ほどかかります。」
「・・・あ!、そうだ。春に田植えで秋に稲刈りしてたは。」
「他にも作物を育てたほうがいいですね。」
「うーん、いいのある?」
「じゃがいも、大根などはどうですか。」
「そうだな。それらができればおでんが食える。」
「野菜類なら保存がききます。それに、色々な料理に使えますよ。」
「よし、ではそれらも育てよう。『シゲル』頼むぞ。」
「はい。お任せください。ご主人様。」
「父上、タックです。」
先程と同じく父上の部屋を訪ねた。報告のためだ。
「タックか。構わない。入りなさい。」
うん、誰かいるようだ。報告は後にしたほうがいいな。
「さくら」
私は聞こえないような小さい声で、さくらを読んだ。
「はい。ご主人様。」
さくらも小さい声で返事した。
「これは後だ。」
「はい。」
私は報告内容をさくらに預けた。さくらは受け取ると姿を消した。
「失礼いたします。父上。」
「どうした。タック?」
私が父上の部屋に入ると、父上と母上がいた。
「あら、タック、お父様に何か御用がありましたの?」
父上の部屋に入る際、『構わない』という言葉があるときは誰かがいるという合図だ。私と父上との秘密は
母上にも隠す必要がある。
「これは母上。父上に本をお借りしたく、参りました。」
「あら、そうなの。タックも勉強が好きね。」
「そういうことなら、好きなのを持っていくといい。」
「はい。ありがとうございます。父上。」
わたしは父上から本を借り、部屋を出ようとすると、
「そうだわ。タック、あなたも一緒に聞きなさい。あなたの許嫁の話です。」
ああ、その話ですか。