第18話 戦争の火蓋
「さくら、もうそろそろか?」
「はい、ご主人様。もうすぐ来ますよ、来たら現行犯逮捕しましょう。その後は戦争に突入です。」
「はぁ~、楽しそうに言うなよ。」
「何を言っているんですか。楽しくなんてありません、ですが誰かがやらなくてはならないんです。悪徳領主を倒すのは正義の味方がやらなくてはならないんです。それに色々手を打ってあるんですよ、今更辞めるのはダメです。」
「色々手を打ったって、何をやった?」
「まず、王宮に連絡を出しました。内容は王女様との婚約を周辺貴族に連絡したら、盗賊たちを率いてライスフィールドの領民から略奪を致しました。これは王家並びにライスフィールド家への明確な攻撃であります。こちらの断固たる決意で防衛致します。と報告しました。」
「まあ、間違ってはいないな。」
「あちらの盗賊にも指定の場所に来るように洗脳しています。これで、被害は最小限で戦争の火種になります。」
「ん?今、洗脳って・・・」
「はい。洗脳してあります。なので、ライスフィールド領民に被害はありません。」
「マッチポンプじゃねーか!」
悪だ、悪の化身がいる。この女、悪魔じゃないか!
「ご主人様。人は大人になると、汚いことも平気でできるようになります。さあ、大人になりましょう♡」
「・・・さくら、お前・・・人じゃないよね。」
「酷いです。体はアンドロイドでも心は人です。」
いいこと言ってるつもりでも、さっきから浮かべている笑顔がド外道過ぎて人に思えない。
「はぁ~もういい。で、他に何やった?」
「もう、何ですか。その人が罪を犯したみたいな言い方は。」
「被告さくら、自白しなさい。」
「もう・・・はーい、白状します。ブランバルド子爵のバックにいるイシュタール公爵やその周り更に全く関係ない貴族にブランバルド子爵に悪行を三倍にして周辺に流しました。」
「風説の流布!この女、やっぱり犯罪者じゃねーか!」
「ご主人さま、風説の流布は不正競争防止法ですので、この世界にそんな法律はありません。ですので私は合法です。」
「知ってるよ!」
さくらはさすが万能メイド、前世の法律すら分かるとは・・・しょうがない、犠牲になってもらおう。
「あーもういい、ブランバルド子爵を滅ぼす、それでいいんだろう。」
「はい、ではそろそろ時間ですから、行きましょう。はい、ご主人様」
私はさくらの手を取ると、
「テレポート」
さくらと手を繋いだ私は外に出ていた。
さくらのテレポートで、目的の場所に一瞬で移動したのだ。
side 盗賊(洗脳済み)
もう、ブランバルド子爵は当てにならない。俺達はメシもまともに食えない、家族ももう何日もまともに食えてない。でも、隣のライスフィールド領は腹いっぱい食えるて、誰かが言ってた。だったら行こう。すぐに行こう。この先の村に行けばメシが食える。みんなを連れて行けばいい。食いたい奴はみんな行けばいい。確か、このまま行けばいい。・・・でもなんでこんなに道が分かるんだ。真っ暗で月明かりしかないのに、初めて来る場所なのに、なんで分かるんだ。分からない。でもいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。・・・・
「待て、この先はライスフィールド伯爵領内である。ブランバルド子爵領のものが進むことは許されん。」
目の前に兵士がいる。でも、このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。このまま、行けばいい。・・・
「どけーーー!」
俺達は全ての力を振り絞って、兵士に体当たりをした。
「何を!う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
兵士を押し倒し、兵士をどけた。殺してはダメ。殺してはダメ。殺してはダメ。殺してはダメ。殺してはダメ。・・・
「みんな、殺すな。このまま行け!」
俺はみんなに殺さないように激を飛ばし、急いでその場を後にした。
もう後戻りはできない。
「よし、ここだ!」
俺達は近くの村に押し寄せた。この村に来ればいいと言われていた。・・・誰に?何でここに来た?何もないのに・・・
遠くから足音が聞こえる。馬の足音だ。
俺達を囲むようにたくさんの馬に乗って騎士たち現れた。
その騎士から一歩出た男は名乗りを上げた。
「我はライスフィールド家、嫡男タック・ライスフィールド。其方たちは不当に我が領地を犯した、その罪は万死に値する。よって、其方たちは死罪とする。・・・だが、其方たちが誰かの指示でこの領土を攻撃したと証明できるなら、其方たちは死罪は免れることが出来る。さあ、証明できるものはあるか。」
なんと、俺達を囲んだ騎士はライスフィールド家の次期領主様だ。
でも俺達は死罪になるって、・・・仕方ないよな。
あれ、俺はなんでこんな紙を持っているんだ。
「おい、その紙はなんだ。それをこちらに寄越せ。」
俺は言われるままに、紙を渡した。
「これは・・・分かった。其方たちはブランバルド子爵に命令されたんだな?」
「はい。その通りです。」
俺は自分の口が勝手に動いていく。
なんなんだ、これ。気持ち悪い。
「皆の者、これはブランバルド子爵の明確な敵対行為だ。これより我々は報復に向かう。皆の者続けー!」
騎士たちが馬と共に駆けていく、すると村人たちが家の中からやってきた。俺達は身構えた。
「あんた達、腹が減ってるのか。これ食うか?」
何と村人たちは俺達に食い物を分けてくれた。俺達奪い合うように食い物をむさぼった。
「安心しろ、ここにはあんたらから奪う奴はいない。食えない苦しさは俺もよく分かる。」
「・・・あんたに何が分かる!」
俺は食い物を貰った恩も忘れ、そんなことを言った奴に食って掛かった。
「俺もブランバルド子爵領の領民だった。ここには盗賊として来た。食い物を奪うために・・・」
「・・・あんたも。」
「ああ、そして、捕まった。そして今はライスフィールド伯爵領の領民だ。」
「なんで!」
「捕まった後にさ、賦役に参加したら許してやる、って言われてさ、それで賦役に参加した。でも、ちゃんとメシは食わせてくれてさ、それで俺はここの領民になれた。」
「俺達もなれますか!」
「明日も賦役がある。ここの村は賦役に参加する奴が集まっている。後で紹介してやる。だから、今は食え。」
「はい、ありがとうございます。」
あの、意味が分からない言葉に従ってきてここまで来た。
でもここまで来てよかったと心から思える。
あの声は神の声だったんだ。
ありがとう。神様。
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