第16話 嬉しいことは分かち合おう
私、タック・ライスフィールドはこの世で最も幸運な男である。
この世で最も美しい女性が婚約者となり、手紙を、愛の手紙を頂くことが出来た。
さくらはこの手紙を見て、感動しているようだ。
どうだ、私の婚約者のすばらしさは、ああ、この素晴らしさを周りの人たちと分かち合いたい。
「さくら、この気持ちを周りの人たちにも伝えたい。どうすればいい。」
さくらに聞いてみよう。万能メイドであるさくらなら、世界中にこの幸せな気持ちを分けてあげることが出来るだろう。
「簡単なことです。領地の人たちには婚約者になったことを伝えます。そして、今年一年、税を下げるなどをして民に幸福を分けましょう。」
「おお!それはいい早速明日から行おう。父上にも許可を得よう。」
さすがさくらだ。あっさり方法を出してくれた。
「そして、周辺には、手紙を書きましょう。王女の婚約者になりました、と出しましょう。」
「それだけでいいのか?」
「ええ、王女様の婚約者となったご主人様から、周りに贈り物をする必要はありません。ですが、周りからは贈り物が届くでしょう。その数と質がご主人様への祝福です。」
「だが、いいのか?私は世界に私の幸福を分けたいと思っているのに・・・」
「いいんです。ご主人様は領民に幸福を分けました。周辺貴族に幸福を分けるなど、下に見ていると相手は怒ります。だから、これでいいのです。」
確かに、さくらの言うとおりだ。
位に差があるが同じ貴族だ。なのに、一方的に贈り物を送ると下に見ていると思われるか。確かに怒りそうだな、貴族はプライドが服を着たようなものだ。だから、私が婚約しました、おめでとう、贈り物です。この流れが自然だな、その後に返礼に贈り物を出せば失礼ではない。
「そうだな。さくらの言うとおりだ。ではそのように父上に許可を貰ってこよう。」
父上の部屋の前に立ち、
「父上、タックです。よろしいでしょうか。」
「タックか、入りなさい。」
「失礼します、父上。」
「どうした、タック。帰ってきて早々じゃないか?」
さくらと話した内容を父上に伝えた。
「なるほど、だがタック、それでいいのか。」
どうしたんだろう?税収が減ることを気にしているのかな。
「いいんです。私の幸福をみんなで分かち合いたいだけです。」
「・・・まあ、それでいいならしてもいいぞ。・・・どうなっても私は知らないぞ。」
「分かりました。後のことは私にお任せください。」
父上の部屋を立ち、さくらを呼び出す。
「さくら、父上の許可を得た。始めてくれ。」
「分かりました。ご主人様。楽しみですね。」
「ああ、楽しみだ。」
ああ、本当に楽しみだ。みんなの喜ぶ顔が楽しみだ。