第12話 理想の女性
私は今日、理想の女性を見た。
外見は背は低め細身、髪は長く、美しい金色、そして何より胸が大きい。胸が大きい。大事なことなので二回言った。外見は理想通りだった。
後は内面、親とはぐれて泣きそう、グッときた。物静かで自己主張が乏しい。頼られたい。いい、非常にいい。
後は、本当はどうでもいいが、家柄。貴族であるし、何より領民のためにならないのであればなんとかしなければならない。
この情報はさくらに聞いてみよう。
「さくら。」
「はい。ご主人様」
「さっきの彼女はどうだ。問題ないか、問題ないよな!」
私は彼女の家柄が合格していることを必死で願った。
「はい。家柄は問題有りません。ですが・・・」
「イエス、イッエッス!」
私はさくらの判定を聞き、ガッツポーズをしていた。小さく、バレないように。
だから、さくらの話を聞いていなかった。
何か物々しくなってきた。そろそろ国王陛下が来られるのだろう。
「国王陛下御入来!」
私たちはその場で跪いて、国王陛下が来られるのを待った。
「皆の者、よくぞ来てくれた。此度我が娘の15歳の誕生日を迎えた。皆に紹介したい。我が娘マリー・ゴールド・ホウジョウだ。」
マリー?、マリー、マリー!
「さくら」
「はい。ご主人様」
「さっき、家柄は問題ないって・・・」
「はい。家柄は問題有りません。ですが、王族ですがよろしいでしょうか、私は聞きましたが。」
ああああ、ガッツポーズしてて、聞いてなかった。
でも、理想なんだよ。彼女は!
side 侍女ヒルダ
お嬢様が上の空だ。先程の殿方に思いを寄せているようだ。あのお嬢様が、物静かで自己主張されなかった、生まれた時からお守りしてきたお嬢様が恋をされている。そして、そのお相手がタック・ライスフィールド様。
現在最も安定した統治をされている、ライスフィールド家。その成り立ちは古く、初代がホウジョウ王国の
危機を救い、仕えたことで始まりました。それ以来、ライスフィールド家は王国を支え続けてきました。過去に謀反ということもなく、常に王国を支えています。
そして現在も王国は守っています。王都の西にライスフィールド領があり、その西にブランバルド領があります。ですが現在、領民は重税で苦しんでいます。その結果、ライスフィールド領内に賊として入り、悪事を働いたそうです。
ハッキリと申し上げるとブランバルド子爵はおろかとしか言いようがありません。ですが、ライスフィールド伯爵はそれを知りながら、賊を処罰せず、賦役に参加させ、その対価に食料を融通したようです。
なんと素晴らしいノブレスオブリージュ。貴族とはこのような方をいいのでしょう。
それを成しているのが、リック・ライスフィールド伯爵とご嫡男のタック・ライスフィールド様のお二人だと聞いております。
タック・ライスフィールド様は現在のお嬢様の婚約者候補の上位に上がる存在。婚約者もいらっしゃらない。ここはライスフィールド家との縁を深めておくためにも、お嬢様との婚姻を結ぶように働きかけましょう。
「国王陛下。」
「ヒルダか、どうした。」
「先程、お嬢様が会場に入り、とある方にエスコートして頂きました。その際、贈り物を頂いたようです。」
「贈り物。あのネックレスか。」
「はい。お判りになりましたか。」
「ああ、あれほど素晴らしい細工は初めて見た。どこの家のものだ。」
「はい、ライスフィールド家のタック殿です。それを初対面のお嬢様に送られた、これをどうみますか。」
「ライスフィールド家の力の誇示ということか。」
「はい。であればライスフィールド家と縁を深めるべきと愚考致します。」
「では、そのようにするべきだな。」
お嬢様、お任せください。私が思いを成就させましょう。