様子見ですか?いいえ、事情聴取です(改稿済)
玲子さんが車庫に車を止め、私の所へ来てくれた。
「おまたせっ、大丈夫そうで安心したわ。何か変わったことは無かった?」
「ミミちゃんと散歩してたから、ねー」
そう言ってミミちゃんに同意を求めたが、ミミちゃんは眠そうに一吠えして私の膝の上で寝る態勢に入ってしまった様子。
今寝られると足を拭くときに起こしちゃうので、急いで家に入る事にしましょうね。
「とりあえず、ミミちゃん眠そうだからお家に入ろう?」
「そうね、あのくらいの揺れで建物が倒れるとかは無いだろうし、入ろうか。押すよー」
そう言って私の後ろに回り車椅子を押してくれた。
「ありがとう」
「どういたしまして。ん?なんかいつもより軽い?」
「そうなの?」
「うん。いつもはもっと重かった気もするけど、今は知佳ちゃんが乗っていないんじゃないかってくらい軽いよ」
そして玄関に入った所で玲子さんがミミちゃんの足を拭いてくれるそうなので、半分寝ているミミちゃんを玲子さんに渡した。
「じゃ、わたしは拭いてからいくから先に奥行ってて」
「はーい、ありがとう」
「ふふふ、どういたしまして」
そしてわたしはミミちゃんを玲子さんに任せ、今や我が家となった離れの2DKのダイニングキッチンに松葉杖を使って移動した。
「ミミちゃんはベッドに寝かせてきたわよ。それでね知佳ちゃん、揺れがあった時に何かなかった?」
「え?な、なにもないよ?」
突然あの時の事を聞かれて思わずどもってしまった……ば、バレてないよね?
「んふふー、知佳ちゃんて嘘つくとお鼻がぷくーって膨らむからすぐわかるんだよね」
そう言ってテーブルの対面でわたしの鼻を指さしてきたので
「えっ!?」
と、まずいと思って思わず鼻を隠してしまったが、隠した後に罠だと気が付いた。
「あはは、知佳ちゃん素直ー。それで、何があったの?お姉さんに言ってごらんなさい」
「むぅ、何で分かったの?」
「大好きな知佳ちゃんの事は何でもわかるのよ?」
玲子さんにはかなわないなぁ。
まぁ、心配かけたみたいだし、今後の事もあるから素直に相談がてら話す事に。
そしてわたしは、ミミちゃんのお散歩から始まったダンジョン最下層での一連の流れを玲子さんに洗いざらい話した。
「そっかー、倉庫にダンジョンが出来たのね。で、知佳ちゃんは偶然取り込まれて世界で初の踏破者になった……と」
「えっと、こんな話信じてくれるの?」
「そりゃあ、知佳ちゃんの言う事だもの、信じるわよ?」
「玲子さん……」
私はこんな突拍子もない話を何も疑わずに頭から信じてくれる玲子さんをちょっと感動しつつ見ていると……
「知佳ちゃんのお鼻、膨らまなかったしね!」
そう言ってウィンクしてくる玲子さんだったけれど、わたしが嘘をつくと本当にお鼻が膨らむのかな?
気になってお鼻をいじっていると
「なーんてね、ダンジョンの話はたぶん世界中の人が聞いているし、ダンジョン初クリアの通知も流れたからね」
がくーっ、私の感動を返せっ!
「あはは、知佳ちゃん素直だから好きよ」
そんな、あっけらかんと好きとか言われると照れちゃう……
「赤くなっちゃって、かーわいい」
そういって玲子さんは身を乗り出して私のお鼻をチョンとつついてきた。
「むぅー、からかうなんてひどいっ」
「でも、その話を聞いて車椅子を押したときに軽かった理由も分かったわ。きっとその魔改造されたのが原因ね。それにしてもダンジョンかぁ、どうなるのかな?」
「それなんだよね、わたしもどうしたらいいのか……。ネット小説とかでダンジョンが出来たーとかのお話があるけど、そういうのって大体ほっておくとモンスターがあふれ出して周りに被害を出したりするでしょ?」
「あー、それねぇ」
「かといって、国に申し出たらこの辺一帯立ち入り禁止にされて取り上げられちゃいそうだし。そうすると私行く所が……」
そう、ダンジョンが出来て一番の心配事は、私はこの家を追い出されると行く所が無いのだ。
あの義両親がここを追い出された後も私の面倒を見てくれるとは思えないし、もし面倒を見てくれるとしても同じ家に住む事になる。
そうなったら、それこそ義兄からのセクハラが何処まで行くのか……正直貞操を護りきる自信が無い。
そんな事情を知っているからか、玲子さんは
「あー、あの義両親だしね。ねぇ知佳ちゃん、この間の提案やっぱり受けたら?」
「この間のって言うと、お祖母ちゃんの葬儀の時に来ていた二条さんの?」
「そうそう、今となっては知佳ちゃんの血縁はもう二条さんしかいないでしょ?」
そう、実は私にはまだ血縁者と呼べる人がいたらしい。
もっともそれを知ったのはおばあちゃんの葬儀の時なのだけれども。
その時私に挨拶してくれたのは二条家と言うところから来たご年配のご婦人で、なんでもお母さんのお母さん、私にとって母方の祖母だった。
「でもこの間初めて会ったのに今更……」
「その気持ちもわかるけど、二条家の方にもいろいろあると思うわ。だから一度ちゃんとお話をしてみた方が良いと思うの、ね?」
「そうなの……かな」
「ダンジョンの事やこの家の事も、二条家に頼めば悪いようにはしないと思うよ?」
「でも、この家も母屋も、お父さんやお母さん、お祖母ちゃんとの思い出が……」
やっぱり私の本当の家族との思い出がいっぱい詰まったこの家を手放すのには、どうしても二の足を踏んでしまう。
「何も取り壊そうとか、誰かに売って手放そうって訳じゃないのよ?ただ、ダンジョンが出来たことによって国がどう動くか分からないのよね。それで、少しでもいい方向に動かすためにも、二条家の力を借りた方が良いと思うの。今後の知佳ちゃんの生活に関してもね」
「そっか、そうだよね。ネット小説なんかでもダンジョンの周りは土地を取り上げてとか多いもんね。このままだとこのお家も取られちゃうかもしれないよね」
そう、わたしが読んだお話だと、ダンジョンはだいたいが隠し、所在がばれたら立ち入り禁止になっているんだよね。
酷いのだとそのまま取り上げられたりもしていたし。
「まぁ、ネット小説と現実でどこまで一緒になるか分からないけど、ああいう話も結構的を射ていると思うから、打てる手は打った方が良いと思うの。それに、お祖母ちゃんがいない今、あの人たちと一緒に暮らすのは嫌でしょう?」
「でも、あんな人達でも一応私にとっては残された家族だと思うから。血は全くつながっていないけど……」
「知佳ちゃん、正直にいうね。現状あの人たちは家族として知佳ちゃんへの義務はすべて放棄しているよね?傍から見ていると母屋にタダで寄生しているだけの人達よ?さらに言うと、義兄はいろいろヤバい、ぶっちゃけあれはただの性犯罪者よ!正直いうと今後も知佳ちゃんを護りきれるか私もちょっと自信ないし」
確かに、今まで玲子さんは色々と私を守ってくれていた、特に義兄からの性的暴行とまで言える事から。
もし玲子さんがいなかったら今頃私はあの男に……
「そっか、そうだよね。そうすると、今私にとって家族と言えるのはミミちゃんだけだね」
「あら、二条家の人達も知佳ちゃんの親族なんだから。しかもちゃんと血のつながったね。いまの義家族よりよっぽどいい家族になれると私は思うけどな?」
「だと、いいなぁ……」