●政府の公式発表と……
注釈 このお話は
49話「その頃の総理官邸と……」
53話「その頃の緊急対策本部と……」
と同じ日の出来事です
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 4月2日木曜日 午後5時35分 TV放送 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「番組の途中ですが、政府からの臨時声明が発表されましたため、予定を変更してお送りします」
画面の中にはスタジオでニュースを読み上げるキャスターの女性と、右上にどこかの会場であろう場面が映されていた。
どうやら一週間ほど前に突如発生したダンジョンについて、初めて政府からの公式発表が行われるようだ。
ただ、まだ始まっていないのか、画面の中ではキャスターの女性がダンジョンが発生してから現在までに分かっている状況の説明がなされている。
それら説明が2分ほども続いただろうか、突然画面が切り替わりカメラのフラッシュがたかれる中制服を着た数人の男性が画面の中に現れた。
「去る3月25日、世界に突如現れたダンジョンですが、本日午後3時、自衛隊員6名が突入し、内部の調査を行いました」
この発言と同時に大量のフラッシュがたかれ、会場内はざわめきに包まれていました。
その後ざわめきが収まるのを待ってから発表の続きが行われ
「結論から申し上げますと、突入した隊員6名は、約1時間後の午後4時5分、全員怪我する事も無く、無事出てくることが出来ました」
ここでまた大量のフラッシュがたかれ、会場内の記者たちから様々な質問が飛んでいましたが、それらの質問を制止させ続きを発表しだしました。
「この結果、内部にはモンスターと呼ばれる生命体の所在を確認、またこれらが比較的攻撃性が高い事が確認できました」
「そして、それらに対処する手段も確立できたため、順次日本国内で確認されている、全てのダンジョンに対し、自衛官の派遣を、本日午後5時に決定した次第です」
その後も会場内からは質問が飛び交いましたが、それらの質問には一切答えることは無く、また新たな情報が分かれば政府から公式発表を行うとの発言がありました。
そして最後に
「今回の自衛隊の突入に関しては、事前に取得できた情報を元に、十分な装備などの準備を行った結果であるため、民間の方はダンジョンを見つけたからと言って、安易に中に入るような事はせず、必ず最寄りの交番や警察署、または政府の報告専用ホームページから、ダンジョンの所在の報告をお願いいたします」
その発言と同時に専用ホームページのアドレスがテロップで流され、制服を着た男性たちは一礼してから会場を去りましたが、その後しばらく報告用ホームページのアドレスが表示されていた。
その後は画面が放送席に戻り、いつの間に用意されたのか3人のコメンテイターもあらわれ、ダンジョンについての意見交換が繰り返されていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 同日午後8時15分 総理官邸 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その場には総理大臣、副総理大臣、防衛大臣、警察庁長官そして今回のダンジョン探索の総指揮を執った陸将補がいた。
「では全国で確認が取れているダンジョンについての番号がわかったと?」
「はっ、現在のところ確認が取れている114カ所のダンジョンの内113カ所の番号が分かりました。これがその一覧です」
そう言って陸将補は2枚にまとめられた紙を全員に渡した。
その紙にはNo1~No119までの番号が振られた全国各地の住所と短い補足が書かれており、それらの地名はダンジョンが出現した場所だった。
その内容を見てその場に集まった皆は顔をしかめているが、ふと警察庁長官が
「この1番についてなのですが、カッコ書きで書かれているというのは?」
「それについては、あくまでも憶測でそうなっております」
その憶測についての説明は、今回分かった範囲で50番台までのダンジョンは近くに原発なり人口密集地なりがあり、そこのダンジョンがあふれると日本にとって大ダメージが発生する。よって1番は現在まだ未確認である皇居敷地内に現れたダンジョンなのではないか?との予想を立てたとの事。
それに対してなぜ中に入って確認を取っていないのか質問したところ、場所が場所なだけに自衛隊を投入するべきか、皇宮護衛官から選抜して行かせるのが妥当なのかでもめているのだそうだ。
また、現在判明している全てのダンジョンに人員を投入しモンスターを退治した場合、ダンジョンからモンスターがあふれるまでの期間が分からなくなるため、1カ所はしばらく残す必要があるとの説明もあった。
それに対し皇居をその実験にするのはどうなのか?との批判も上がったが、現状入り口上の5つの石の色がまだ2つ目が薄い赤になった程度で、全ての石の色が変わるタイミングが同じと考えるとあふれるまでの予想日数としてまだ2週間以上あるため、慎重を期した結果だと報告された。
またそれに伴い、石1つが完全に赤くなり次の石が色付き始めるのに5日かかるとの見解も伝えられた。
そして、いまだ判明していない5つまたはそれ以上のダンジョンについて、全てが80番台以降であることと、80番台以降の判明しているダンジョンはどれも原発などの重要施設と思われるものは付近には無く、あるのはそこそこの大きさの地方都市などであるため、現在は使われていない大きな建物(倉庫など)の中に出来ていて発見されていない可能性もあるのではないか?との話があった。
ただ、判明していない5つのダンジョンの内、1つは初日にクリアされたダンジョンのはずのため、潜在的危険のあるダンジョンは実質4つと思われ、これらについては引き続きTVなどで国民に協力を訴えるしかないという結論に至った。
会議終了後、総理大臣は友好的な各国に対し、今回の自衛隊投入の結果および現在分かっている情報共有をしようとした所電話が鳴った。
内容としては自衛隊が無事ダンジョンから戻った事に対する祝いの言葉と、政府が認識していないであろうダンジョン番号の一つである88番がクリア済みダンジョンであることの報告であった。
このダンジョンの所在についてはまだ教えられないとの事だが、そのダンジョンの扱いをどうするのかを今後話し合った上で近い将来所在についても明らかにするという方向で会話はまとまった。