ポーションを売りますか?いいえ、売りません
ダンジョンから出て、沙織さん達が着替え終わってからダンジョンストアにて今日出たポーションの確認です。
購入画面で初級HPポーションを確認すると
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初級HPポーション 100DP
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との事。んー、高いのか安いのか……
今まで出ている魔石が1つ3~7DPだから、魔石20個前後、4~50匹倒さないと買えないのかぁ。
まぁ、敵弱いしね!頑張れば1日で買える位?
ちなみに売値は……と
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初級HPポーション 20DP × 1
総DP 20DP
《 販売しますか Yes/No 》
販売する場合はダンジョンカードをスリットに差し込んだ後、Yesを選択してください。
販売しない場合はNoを選択するか、置いたアイテムを台の上から取り除いてください。
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……売値の1/5の値段、これまた高いのか安いのか。
純粋に売ると考えると、敵を10匹くらい倒したのと同じくらい?商売としてはある意味正しい……のかな?
でもこれならいざって時のために取っとくよねぇ、敵からはなかなか出ないし。
というわけで、今日の調査も終わったので二条のお屋敷に帰りましょー。
えっと、帰ろうと思ったのですが家を少し過ぎた辺りでまた運転席と後部座席のカーテンを閉められましたよ?
もしかして……と思っていると車が止まり、クラクションを鳴らしていますが再び動き出す気配もありません。
「おい、いるのは判ってるんだ出て来い!」
「なんですか、またあなたですか。そこに居られると邪魔なのでどいてくれませんかね?」
やっぱり義父のようです、それにしても私がいる事がばれてるのでしょうか?
「邪魔だと?あいつの、あのガキのせいで俺は……せっかく良い金づるだと思ってわざわざあの孤児を、自分の子供でもないのにわざわざ引き取って育ててやった恩も忘れてっ」
「ちょっとあなた、自分で何を言っているのか判ってるのっ!」
「あのガキの、近衛のものは全部あの男の代わりに育ててやった俺のものだぞ!なのに今じゃ家にも寄れず、仕事も首だ!それもこれもあのガキのせいだろ!」
「それはあなたが……」
なんでしょう、言ってることは半分くらいしか分かりませんが、私には全く心当たりがないんですけど?
「うるさいっ、いいからガキを出せ!奴が持っている金はここまで育ててやった俺のものだ、孤児の分際であんな大金を持ってる方がおかしいんだ、俺に寄こせっ!」
「あ、あなたねぇ、育てた育てたいってるけど、子育てらしい事は何一つていなかったじゃないのっ」
そうですね、一時期同じ家にいただけで育てられた記憶は全くないですね。
「うるさい、親もいない孤児のガキを家に住まわせてやって飯も食わせてやった、十分だろうがっ!」
「あの家はもともと知佳ちゃんの家です、あなたたちの方こそ居座って無理やり住み着いただけじゃないですかっ」
私の事を孤児って……あなたたちは仮にもわたしの義親だったんじゃないの?
「葵さん、ここはいったん引いて……」
「そ、そうね……今話す事ではないわね」
「今のは御影の声だな、やっぱりあのガキもそこにいるんだろう、出てこいっ!」
「葵さんっ」
「京香、バックして違う道から……」
「だめ、後ろにも人が……」
そう言われ後ろを見ると義母と義兄が立って道をふさいでいました。
「知佳、そこにいるんでしょう、出てきなさいっ!」
「そうだぞ、お前は将来僕ちゃんのお妾さんになるんだ、そのためにお前はまだ家族じゃないんだからな、ここで逃がしたりはしないよぉ」
え?家族じゃない……家族じゃないって一体どういう事なの?
「ちっ、あのガキ余計な事を」
「え?玲子さん知ってたの」
「知ってたというか、知ったのはつい最近なんだけどね」
「れ、玲子さん?」
「ここまで知っちゃったら、ちゃんと知っておいた方が良いのかな?いい、知佳ちゃん落ち着いて聞いてね」
「う、うん……」
家族じゃないって一体どういうことなのだろう?義母さんは実父さんと結婚したんだよね?そして実父さんが死んだあとは義父が義母と結婚したから、私は家族じゃないの?頭が混乱してきて……
「実はね、義母も義父も知佳ちゃんと養子縁組していなかったの。だから、知佳ちゃんは義家族の3人とは戸籍上の家族じゃないんだよ……」
「え、それじゃ私はもしかして……」
「そう、おばあちゃんが亡くなった今、戸籍上はひとりぼっちになっちゃってるんだ……」
「それじゃ……わたしには本当に家族は……いなかった……って事?」
「知佳ちゃん、戸籍上の家族だけが家族じゃないでしょ?まだ日数は少ないけど、二条のお屋敷に行ってみて分かったと思っていたけど?」
「そう、そうだね……曾お婆ちゃんもお婆様も、お爺ちゃんもいる。血のつながった人たちが私にはまだいる……たとえ戸籍上の家族じゃなくても、私にはちゃんと家族がいるんだよね、わたしには、帰る所が……ちゃんと……あるんだ……よね……」
わたしはもうひとりぼっちだと思っていたけど、ちゃんと帰っていい場所があるんだよね……そう思うと胸が熱くなり、涙が出てきました。
「そう、だからね、逆に考えるんだ。あいつらと戸籍上の家族になっていなかった、ってね」
「う、うん……うん……」
そっか……そうだね、あんな奴らと家族じゃなかったって思えば、逆にこれで良かったんだよね。
「おい、いつまで待たせるんだ、いい加減出て来い!」
「そうよ、でてきなさいっ」
「そうだそうだ、出て来い!お前は僕ちゃんのお妾さんなんだから僕ちゃんの言う事は素直に聞かないとだめなんだぞ?これからはずーっと側においてやるからねぇ」
いったい何なんでしょう?わたしがいつ義兄の……いいや、真実を知った今もうあの男は義兄なんかじゃなく赤の他人。そもそもあんな男の妾になんかなるわけないのに、いつそれが決まったというの?もうあんな男、声も聴きたくないっ。
そう思っていると玲子さんが車から降りて行きました。
「近衛さん、まだ懲りないのかしら?」
「懲りないのかだとぉ?やっぱり貴様の仕業か、貴様の仕業なんだな!」
「何の事かしら?」
「俺の職場にある事ない事吹き込んだだろう!そのせいで俺は、俺は……」
「あら、私は真実しか伝えてませんよ?それに仕事を首になったのはあなたが色々と嘘をついていたせいじゃないの?」
「それでも今まではうまくやっていたんだ、それをお前が余計な事を言ったばかりにっ」
「それは当然の事じゃないかしら?私文書偽造だけでなく、公文書偽造までやってはね。あなたがこれから行く所は刑務所よっ!」
「きさま、きさまきさまきさまーーー、貴様のせいでっ、貴様が余計な事をしたせいで、俺が手に入れるはずだった土地や金が全部パーになったんだぞ、責任を取れっ!」
「責任を取れって、責任を取るのはあなたでしょう?わたしは善良な一人の国民としてするべきことをしただけだわ」
「それが俺の会社に通報する事かっ!」
「そうよ。あなたが犯罪まがいの事……いいえ、まがいではなく立派な犯罪ね、犯罪を犯していたから通報しただけ。会社の方にも、このままだと会社にまで影響が出ますよって親切に教えてあげただけだもの」
「それが余計な事だというんだっ、おかげで近衛の家も土地も財産も……もう少し、もう少しで全部手に入るはずだったのに……ここまで10年、10年かかったんだぞっ、それをお前はっ」
玲子さんと元義親の話を半分上の空で聞いていたのですが、遠くの方からサイレンの音が聞こえてきました。
どこかで事故か何かあったのでしょうか……