塀ですか?いいえ、ただの障害物です
無事4階の新しい敵?巨大ひよことの戦闘も終わりました。終わりましたが……
「京香、とりあえずお疲れさん。それでお腹は大丈夫か?」
「あ、はい。ちょっと強めに殴られたくらいの衝撃ですね。一応くちばしが当たったみたいですけどこのベストで十分防げていますし、これなら目にあたったりしない限りは大丈夫そうです」
「そうか、それじゃあとはほかの皆も一度は攻撃を受けてみるとして、京香のその武器はしばらく封印した方が良いな」
「えーーー、この爆砕君をわたしから取り上げると!?」
「それだ」
「え、どれですか?」
「その爆砕君?って名前、付けるのはまあいい」
いえいえいえ、それ一応私の、私のだから!変な名前つけないでーーー。
「でも、そういう名前を付けているって事は、お前も敵を爆砕しているって認識しているんだろう?」
「えぇ、毎回気持ちいい位に爆砕できていますから」
と、とても嬉しそうに言っていますが今の問題点はそこじゃないと思いますよ?
うーん、あの大槌貸したの間違いだったでしょうか?これだとレアドロップが出ない気がします。
もっと奥に行って強い敵が出てくればあの大槌は必要でしょうが、この辺だと全ての敵が一撃どころかミンチになってしまうので、確かに戦力過剰ですね。
今までは未知のダンジョンという事で戦力過多でもよかったですが、ここまで戦ってきた感じからすると次回からはしばらく封印した方が良いのかもしれないですね。
「私たちの目的を忘れたのか?私たちの目的は奥に進む事と同時にダンジョンがどういう所なのか?どんな敵が出るのか?そしてどんなアイテムが出るのか?が現在の重要調査項目だ。なのに敵を爆砕していたらどんなアイテムが出るのかわからないだろう?」
「すみません……」
「それにだ、ここまで強い武器はこの辺ではいらないだろう。むしろ強すぎる武器を使う事によって楽すぎる戦闘に慣れてしまい、今後強い敵が出てきた時に困る事になりかねない。そういう意味でも私たち3人は普通の武器を使うべきだと思う」
「そうですね、知佳ちゃんの武器が無い人達は最初の内は普通の武器で潜るしかないわけで、そうなると私達も当面の間は知佳さんから借りた武器で戦うより、普通の武器か一般人でも比較的簡単に手に入る武器になりそうなものを使って戦ってみて、実際どういう物が有効なのかを調べる方が良いかもしれませんね」
と葵さんや楓さんが話していますが、なるほどそういう考え方もあるのですね。さすがプロの護衛の方は違いますね!
「それと、新たな問題点が浮き上がったしな」
「新たな問題点、ですか?」
「今京香が言ったように、私たちは今顔に対する防御を何もしていない。もし今のひよこの攻撃が京香の目に当たっていたら失明した可能性が高い」
「あ……そうですね」
「それじゃ機動隊みたくヘルメットにバイザーを付けますか?でもあれ、ダンジョンだと光源の関係で視界がかなり悪くなりそうで、結構不利な気もするんですよね」
「そうだな、その辺も含めて検討課題だな」
そう、今現在護衛の3人の皆さんは首から下は結構ガチガチに装備を固めているのですが、頭や顔は全く防具を着けていないんですよね。
だからこそ、沙織さんのビキニアーマーがなおの事目立つのですけど、装備の性能を考えるとそこは仕方ないですよね。
もっとも、蝙蝠が出たことによって頭上からの攻撃も考えた方が良いでしょうし、今後飛び道具を使う敵が出てくるかもしれません。というか、ゲームとかだとそう言う敵がいるので、ここでも絶対出てくるでしょう。
そうすると必然的に顔に攻撃を受ける可能性もあるわけで、顔を何らかの方法で守らないと危ないですよね!
でも、それはそれで周りが見づらくなりそうですし、その辺の折り合いをどこでつけるかですよね。
そう、決してビジュアル的にかっこ悪いとかの理由でヘルメット等を付けていない訳ではないはずです!
「やっぱりヘルメットとか必要ですかね?あれ長時間付けていると蒸れるんですよね」
あぁ、そういう理由もあったのですね。でも楓さんはヘルメットを使った事があるのでしょうか?
「まぁ、その辺も含めて商品開発する必要があるんじゃないか?それらを調査・検証するのも私達の役目だよ」
やっぱり私たちの護衛だけが目的ってわけじゃないですよね。きちんと今後の商売に向けた目も持っているとかすごいです!
私なんてダンジョンってだけでウキウキしちゃってました、反省ですね!
とりあえず京香さんについては今は大槌以外の武器は無いので、今回はこのまま大槌を使ってもらう代わりに戦闘には極力参加しない=後方警戒という事で話がまとまりました。
京香さん的にはかなり不満そうでしたが、敵のレアドロップを狙えないのは問題と言われしぶしぶ従っていましたが、後ろから来た敵なら粉砕してもいいと言われると機嫌が直ったようです。
でも、後ろってすでに通った道なので滅多に敵は来ないと思うのですが、その辺は判っているのでしょうかね?
なんにしても、これでダンジョン産防具有りの玲子さん、普通の防具?の京香さんの二人が敵の攻撃を受けてみてどちらも特に問題なしとなったので、続いて楓さんや葵さん(盾ではなく体に直接)も敵の攻撃を受けてみました。
さすがに犬のかみつきは回避しましたが、突進に対してはお腹で受ける、腕や足でガードする、手で弾くように殴り飛ばすなどいくつかのパターンで体で直接攻撃を受けるといった事を試し、問題なしとなった後いよいよ沙織さんも攻撃を受けてみる事になりました。
それでも見た目的には防具が無く素肌の状態のお腹で受ける事になり、やはり最初は犬の突進が良いのではないか?という事になり犬を探す事に。
マーフィーの法則というのでしたっけ?それとも物欲センサー?
こういうのって得てして必要な時には出て来てくれないのが世の常なのでしょうかね?出てくるのは犬以外の3種類だけで魔法陣までたどり着いてしまいました。
そしてお腹も結構空いてきたので時間を確認するとお昼をかなり過ぎていたのでこの近くで良い場所を探してお昼にし、その後5階の探索をして今日は終了しようという事になりました。
そして見つけた場所は通りから入って20mほどで行き止まりになる通路で、そこの奥でテーブル等を出してお昼にすることになりました。
ここでふと、スキル『砦』のとある機能を思い出して試してみる事に。
今いる場所から通路側約10mほどの所に塀を作る事に!
塀でろ~と念じたところ、通路をふさぐように見事に塀が出来ました!ただしその高さは1m、これ犬なら軽く飛び越えてきちゃいますよね?
そしてそれを見ていた皆の反応はと言うと
「知佳ちゃん、あれやったのって知佳ちゃん?」
「うんっ、スキルで塀が出せるのあったの思い出したから出してみたの。これで敵が来ても安心!と思ったんだけど、あれじゃ飛び越えてきちゃうよね?」
「そうだね、せっかく出してもらったのに悪いんだけど、あれじゃ逆に敵の発見が遅れるだけであまり効果はないかな?」
「だよね……」
「あ、でもお手洗いの時にこれ使えば衝立出さなくていいかも?」
「そうだね、あれを出しても知佳ちゃんの負担にならないなら、トイレの時は衝立を用意するんじゃなくてあれを出してもらうのも手かな?」
「おぉ、私役に立てる?」
「知佳ちゃんはすでに十分役に立ってるよ。知佳ちゃんがいなかったらダンジョン探索はもっと時間がかかってるからね?」
そうして、お昼休憩には使えないけれど、お手洗い休憩の時には役に立つことが分かりました。
でもきっとレベルが上がればお昼休憩にも使える様になるはず!