●その頃の日本政府と緊急議会と……
「本日皆様にお集まりいただいたのは、昨日世界に現れたダンジョンについてです」
「総理はダンジョンへの対策についてどのようにお考えか?」
「わたくしの考えとしましては、まず国内に現れた全てのダンジョンの所在を把握することが最優先課題と認識しております」
「ま、当然のことですな」
「その上で、一度すべてのダンジョンを自衛隊又は警察で封鎖、一般人の立ち入りを禁止します」
「なんだと!それだと国がすべてのダンジョンを確保して民間には開放しないという事か!」
「横暴だ!」
「そんなの許されることじゃないぞ」
「ダンジョンは国だけのものじゃないぞ!」
騒ぎだした議員達の顔を見てみると、どうやら経済団などと結びつきの強い人達ほど一般開放を望んでいるようですね、これなら一般開放への障害も低そうです。
カンカンカンカン
「静粛に、皆さん静粛に!」
「えー、どうやら皆さんも一般開放を望んでおられるようですので、そちらについても後程話し合いを行いたいと思います。ですが、今はまず国民の皆さんが無駄に命を落とさないための対策をどうするか、そこが重要だと思っております」
「確かに」
「こっちが入るなと言っているのに勝手に入っておいて、死んだら政府が悪いと騒ぐ連中もいますからな。早急にそれらの対策も考えねばなりませんな」
「そう考えると早急なダンジョンの封鎖は必要か……」
「そうです。まずは国民の皆さんが碌な情報もなしにダンジョンに入り、亡くなってしまう事が問題です。ですので早急なダンジョンの封鎖が必要と思われます。そして封鎖後、まず自衛隊の方々に中に入っていただき中がどのくらいの危険度があるのか、またどのような場所なのかを調べてもらい、それらの情報を用いて一般開放に向けた話し合いに続けたいと思っております」
「異議なーし」「異議なし」
「ですが、それにはどの位の期間を見越しているのですかな?」
「まだダンジョン内の情報を我々の手で入手できてない現在は未定としか言えませんが、近日中に集まった情報を元に考えうる限りの装備を持たせた部隊をまず1PTダンジョンに送り込もうと思っています。そしてその部隊が無事出て来られればその部隊からの聞き取り調査を行い、装備や人員の編成を再検討、その結果を用いて徐々に投入PT数を増やしていき、ある程度の安全策が確認でき次第、大規模ダンジョンアタックを開始したいと考えています」
「なるほど、その流れなら何といけそうか?」
「どのみち放っておけば中からモンスターとやらがあふれ出てくるのだろう?ならばやらねばならんな」
「そうだ、それだ!モンスターがあふれ出すのは何時なんだ!」
「そちらについても現在調査中です、例の声によると入り口の上に5つの石があり、それの全ての色が変わるとあふれ出すとの事ですが、ダンジョン出現から丸4日たった現在、まだ2つ目の色が付いたとの報告は上がっていません。この状況から察するに少なくともあと2週間以上は猶予があるものと思われます」
「2週間、長いとみるか短いとみるか……」
「今申し上げた2週間というのはダンジョンに誰も入らなかった場合の話でして、色が変わった状況からどのくらい中のモンスターを退治すると色が無くなるのか、またその後再び色が付くのにどのくらいかかるのか、それらの調査もあり早急なダンジョン内への調査が必要と思われます」
「確かにそうだな」「これに関しては自衛隊の方々に頑張ってもらうしか……」「いや、機動隊にも手伝わせよう」
……
そうして決定されたことは
・全てのダンジョンは一度国の監視下に置くものとし、自衛隊および警察の協力の下一般人のダンジョン内への立ち入りを禁止する
・ダンジョンを中心とした半径50mは基本一般人の立ち入りを禁止する
ただし、その範囲内に自宅がある場合は考慮する
・自衛隊を投入し、可能な限り中の情報と共に、資源と思われる物品の回収を行う
・近日中にダンジョンに関する新法案を制定する
・遠くない将来、一般人に対してもダンジョンを開放する方向で検討する
またそれに関連した公共施設などの設置も考慮する
・これらの事については各党で持ち帰り検討し、次回開催までに案を持ち寄る
等々が決められた
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ その頃のとある地方にて……その後 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふはははは、強い、強いぞエクスカリバー!」
「ちょっと冬弥君、早く出ようよぉ」
「何だ千代子、俺の雄姿をちゃんとその目に焼き付けておくんだぞ!」
そして新学期から学校で言いふらしてくれ、そうすれば俺は一躍ヒーローだ!
§ § § § § § § § § §
「冬弥君、ダンジョンでモンスターをバッタバッタなぎ倒したんだって?わたしもその姿見たかった―」
「わたしもわたしもー、ねぇねぇ今度わたしもつれていってよ~」
「冬弥スゲーよな、いつかはやる男だって俺は思ってた」
「冬弥君みたいな彼氏欲しい~、いっそのこと冬弥君が私と……」
「なによ、私が先よ!」
「あんたなんかお荷物にしかならないじゃない、私の方が良いに決まってるわ」
「さすが分家筋とは言え二条さんの家系の事だけはあるな、やる事が俺達一般人とは違うぜ」
「くそっ、俺だってダンジョンに入れさえすれば……」
「冬弥君、かっこいい……ぽっ」
「ダンジョンでも学校でも私の事を守ってくれないかな」
§ § § § § § § § § §
ぐへ、ぐへへへ、そして憧れのあの子もきっと俺に……
「……君、冬弥君ってばっ」
「ああ、俺に任せ……はっ、どうした千代子」
「もう、聞いてなかったの?あっちの床が何か光ってるよって」
「おぉ、出口かも知れん。行くぞ千代子!」
「もう、ちゃんと周りを見てないとまたどこから犬が出てくるか分からないわよ?」
「よーし、あの光は俺の栄光への入り口だーーー…………ギャぁー―――――」
「え、冬弥君?冬弥くーーーんっっっ」