外に出ますか?いいえ、2階に行きます
とりあえず、前回はわたしがスマホで録画できたので、今回は小型カメラを肩の所に取り付けています。
動作確認ランプは付いている様なのできちんと録画できてるかな?
一応前回と同じくスマホでも録画しておこーっと。あと頭上1m位の所にライトを出してっと。
ミミちゃんは私のお膝の上でダンジョンに興味津々のようですけど、今日はそこで大人しくしていてね。
そんな準備やらなにやらをしていると……
「知佳ちゃん、もし他と違う様な所とか違和感があったらどんな些細な事でもいいから教えてね」
「はーい。罠とか扉とかの可能性があるんでしたっけ?」
「そうそう、前回はそういうのなかったけど、ダンジョンは何があるか分からないからね。ちょっとした違和感でも教えてもらえると助かるわ」
そういって、車椅子を思考移動で少しずつ前に進めつつ、頭に浮かぶ半径10mのマップをどんどん紙に書き写していった。
なお、本人は誰かが押してくれていると思っており、自分が思考移動で車椅子を動かしていることにはまだ気が付いていない。
そうして数分進むと前方から何かが移動してくるのを知佳が認識したと同時に、ミミちゃんもピクリと反応しました。
これ、あれですね。家にいる時に沙織さんや義家族が来た時に反応するのに似てますね。
「ん?前から何かくるー」
「あぁ、こっちでも見えた。いいか京香、ヤバくなるまでか許可があるまで手出しするなよ」
「はぁーい」
「とりあえず、私が受け止めてみる。どのくらいの衝撃が来るのか知っておかないといけないからな」
そう言って前方から走ってやってきた犬の突進を大盾で受け止めた葵さんですが……
「ギャンッ」
突進してきた犬は見事大盾に阻まれ、一吠えしたかと思うとそのまま倒れ込み、ぴくぴく痙攣していたかと思うとやがて消えてしまいました。
その結果を見てなのか、ミミちゃんは落ち着きまた私の膝の上でだらけモードに。結構神経太い?
「おや、突進の力で首の骨でも折ったかな?衝撃自体はそれほどなかったし、これなら犬相手は余裕だね」
「みたいですね、では次はわたしにやらせてくださいな」
そう言って沙織さんが槍をしごいていますが
「いえ、先に私にやらせてください」
と私の後ろにいた楓さんが言ってきました。
「それじゃ、京香と位置交代だな」
「えー、私後ろですかぁ?」
などと、京香さんは後ろに下げられるのが大変不満そうです。やっぱり戦闘狂なのかなぁ?
「京香は昨日沢山戦っただろう?今日はしばらくはお預けだ。もちろん後ろから敵が来た場合はやっていいぞ」
「はぁーい、わかりましたぁ」
「京香、今はミッション中だ、そのだらけた口調はヤメロ!」
「す、すみませんでしたっ」
あらら、怒られちゃいましたね。まぁ、これだけ敵が弱いなら気が抜けちゃうのも分からないでもないですけど、まだ何があるか分からないですしね。
こういう所を見ると、やっぱり葵さんは3人の中でリーダーなんだなって思いますね。
そして少し進むとまた何かがやって来ましたが、今度はミミちゃんは反応なし。飽きたんですかね?
「来た、やります」
と楓さんが宣言したかと思うと、おもむろにダガーを抜き放ち、左手には透明な盾を構えて犬を待ち構えました。
そしてその犬が楓さんに飛び掛かったかと思うと
「ハッ」
と気合一閃、犬の首元めがけてつま先蹴りをし、見事あたった様で
「ギャハッ」
そのまま犬は首が変に曲がった状態で地面に倒れ、これまた少しすると消えてあとには魔石が残りました。
「モンスターとは言え、所詮は犬ですね。ちょっと訓練した人間ならそうそう遅れは取らないでしょう」
と、初めて道具の力が全く関係ない、自分だけの力でモンスターを倒した楓さんのセリフにはそれなりの説得力がありました。
それにしても、ダガーを構えたのでそのダガーで刺すなりなんなりするのかと思ったのですが、いきなり喉を蹴り上げたのにはちょっとびっくりしました。
「つ、次こそ、私にやらせてくださいね?」
どうやら沙織さんもかなり戦いたいみたいです。自分の力がどこまで通用するか試してみたいのかな?
「そうね、この位弱い敵なら沙織さんでも問題なくやれそうね。今後のためにある程度戦闘に慣れておいた方が良いでしょうし、しばらくは沙織さんメインでお願いしようかしら?」
「はいっ、是非やらせてください」
その後何度か犬が襲ってきましたが、沙織さんは時には柄で受け止め、時には穂先で突き、そして時には穂先で薙ぎ払うと獅子奮迅の戦いを見せてくれました。
とはいえ全て一撃で敵が死んでいるので、沙織さんが強いのか敵が弱いのか良く分かりませんけどね。
そして今回は途中行き止まりなどで大回りをすることになり、結局2時間ほども進んでやっと魔法陣が見えました。
というわけで、乗っちゃいましょー。
全員乗るまでは何も反応が無いのに、全員が乗ったと思うと頭の中にメッセージが浮かびました。
《 何処へ移動しますか? 地上/2階 》
今回も一応聞くだけ聞いてみましょうかね。
「ねーねー、ダンジョンの外と次の階どっちに行きますかって聞かれたけど、次の階で大丈夫だよね?」
「そうね、とりあえずこのまま次の階に行きましょう」
「りょうかーい」
と言う訳で、次の階っと。
すると、ダンジョンに入る時と同じ微かな浮遊感があり、見た目はダンジョンに入った時と同じような場所に出ました。
しかし、全体の位置に対する魔法陣の位置がさっきまでとは違うので、ここはやっぱり2階でいいのかな?
とりあえず、新しい紙を取り出してこの階の全体地図と近辺地図を描きましょうかね。
「隊列!」
転移が終わると同時にすかさず葵さんが掛け声をかけて守りの体勢を取ってくれました。
こういう行動の節々で素早い対応をしてもらえると、この人に任せておけば安心って思えてきます。
これが護衛のプロの貫禄なんでしょうね。
すると、どうやら近くに敵がいたようで、こちらに近づいて来ているのが分かりました。
膝の上のミミちゃんもピクリと反応し、顔をあげて私の後方を向きました。
もしかして、敵が来るのが分かるのかな?
「あ、後ろに敵っぽいのが」
「まかせてっ」
私が後ろに何かいるのを伝えると、今日はまだ出番のない京香さんが待ってましたとばかりに名乗りをあげ、それとほぼ同時に葵さんが私の後ろ側に回り、盾を構えて守りに入ってくれました。
そして後ろから現れた敵はというと、白くて飛び跳ねていました。
どうやら1階とは敵が変わるようです。
パッと見た感じ、うさぎ……でしょうか?
大きさは中型犬位とうさぎにしては大きい気もしますけど、世の中この位大きなうさぎも居ますよね?
ただ、一つだけ知っているうさぎと確実に違う点があって、なんとこのうさぎ、額に1本の角が生えています。
ネット小説とかだと、ああいうのって武器とか薬の素材になったりするんですよね、もぎ取れないかな?
そう思っていると角ウサギが京香さんに迷わず突進していきます、結構速い!?
あれに刺されたら痛そうですけど、京香さんは大丈夫でしょうか?
とちょっと不安に思ったのですが、京香さんは角ウサギに対して叩き潰す様に大槌を一閃!
突進してくる角ウサギの角に見事にヒット!
よかった、何も問題なく倒せました。
まっすぐ突っ込んでくる相手の角を狙って角ごと頭をたたき割るとか、ちょっと難しそうな方法で倒していましたけど偶々ですよね?
けして、鬱憤がたまっていたからとかじゃないですよね?
それにしても、この階層では犬ではなく角のついたうさぎさんが出てくるのですね。