2枚ですか?いいえ、1枚になりました
本日二話目です
ご飯も食べて、いつもの報告会なのですが、シルバーフォックスの毛皮が出たというと美雪伯母さんが特に食いつきがよかったです。
「それ、見せてもらえるかしら?」
そう言われたので取り出して渡すと、最初はちょっとがっかりした様子でしたが、その毛皮の毛並みを触るとうっとりとした表情に……
「ずいぶんと小さいんだね」
「そうなの?」
「まぁ、ドロップ品だからなのかな?一匹丸ごとだとこの位だからねぇ」
そう言うと、両手で幅50cm高さ1mほどを作って教えてくれました。
言われてみれば、狐1匹からとれる毛皮だとその位になるのかもしれないですね。
しかし、ここで出した毛皮のサイズはというと、30cm四方くらいの大きさです。
「この大きさだと、縫い合わせに必要な枚数も多いだろうし、コートを作るのは大変そうだね」
との事。たしかにコート一着作るには何枚必要になるのか……
「まあ、無理してコートにする必要もないけどね。上手くつなぎ合わせれば数枚でマフラーが作れそうだしね」
「これで枕カバーとかクッションカバー作れないかな?」
「あぁ、それはそれで気持ちよさそうだね」
と、それもそれで良さそうだと答えてくれました。
しかし、縫い合わせかぁ。
縫い合わせると、合わせ目がデコボコしたり毛並みの流れがずれて手触りが落ちたりしないかな?
そこでふと、思い出したことが。
そういえば錬金術スキルに、素材合成や素材加工ってあったよね。
そっちで何とかならないのかな?
というわけで、毛皮をあと2枚出してどうにかできないかを考えてみると……
むむ、極意先生が合体させるか?と言ってきている気がする。
なので、その導きのままに2枚を1枚にと思うと、なんと!
「うわ、急にどうしたの?」
「知佳ちゃん大丈夫?」
毛皮2枚が急に光り出し、その光が収まったかと思うと2枚だった毛皮が1枚になり、サイズが元の倍のサイズ、30cmx60cm位の大きさになりました。
しかも毛並みは元から1枚だったかの様にすごく綺麗な状態です!
「それ……」
「知佳ちゃん、今度は何やったの?」
やっぱり急に2枚が1枚になったら気になるよね?
「えっとね、極意先生が合体させるかって言ってきたから、スキルでまとめてみた」
「極意先生がって……そう言えばいつも気になってたんだけど、その極意先生ってこういうのが出来るよとか話しかけてくるの?」
「いや、そう言ってる気がするだけ?」
「ふぅん。てことはあれかな、経験者が、こうやればこうなるってある程度分かるのを、極意先生が勘みたいな感じで教えてくれるのかな?」
「あー、それが近いかも?」
「なるほど、それはかなり有益なスキルだね」
今まで何となく、こうやれば出来そうとか、こうやると良いんだ、これ以上はダメって教えてもらってた気がする。
でも、言われてみると経験したことがないのに、あたかも過去にその経験があって、その経験に則ってそうするとどうなるかが判る感じなんだ。
となると、極意先生っていうのは、本来経験に基づく勘をその経験がなくても補助してくれるとか、そういうものなのかな?
これは、全く未知の錬金術をやるにはとてつもない武器になりそうですね!
その私の見解をみんなに話してみると
「今までの行動とか作った物から考えるに、その考え方で間違いなさそうだね」
「だからいきなり治癒水や治癒軟膏が作れたりしたのですね」
「一番最初は変な物も作ったけど、あれも一応美容液としては特上品レベルの物だったしね」
そう、一番最初はね、結構適当にやったし急にすごい匂いがしたので、極意先生が何か言う前に浄化しちゃったんですよね。
まぁ、あれもメイドさん達には結構評判が良いと聞いているのでね、そのうちまた作ることになるかも?
……やっぱり匂いがすごいからやめておきましょう。
きっと治癒水で満足してくれるはず!
「とりあえず、毛皮はそうやれば大きな一枚物に出来ると判ったんだ。どこまで大きくできるかはわからないけど、上手く行けばシルバーフォックスの絨毯とかも作れそうだね」
「この毛皮で作った絨毯……寝ころんだら気持ちよさそうだね!」
その感触を想像すると、そのためだけにシルバーフォックス狩りをしたくなってきました!
「ベッドのシーツなんかにして、裸で寝てもすごく気持ちよさそうです」
「そ、それもありかも」
さ、沙織さん。なんて魅力的な提案を……
「枕、シーツ、そして毛布も作れば毛に包まれて寝られるねぇ」
「さすがにそこまでやるのに何枚の毛皮が必要になるか判らないよ。それにほかにも使い道はあるかもしれないしね」
言われてみれば、錬金術が通用したと言う事は防具などのダンジョン探索に使える道具が作れるかもしれませんね。
でも一度考えてしまうと、どうしても寝具等への使い道しか思い浮かびません!
まぁ、必要になったらその時にまた取ってくればいいですよね。
「あと他には、マジックスクロールや防具も出たんだっけ?」
「そうだね。防具は初めてじゃなかったかな?」
そう、今まで武器は出ていたんですが、防具は初めてなんですよね。
もっとも、たまたま私たちが出してなかっただけかもしれませんけど。
「40階層か……さすがにまだ知佳君たち以外ではそこまではいけないか」
「まだダンジョンが出来てから1月ちょっとしか経っていないし、これからじゃないか?」
「そうそう、ダンジョンが消えるまでまだ5年近くあるんだ。知佳ちゃんたち以外がダンジョンをクリアするのに1年以上かかると思っておいた方が良いよ」
私達みたいに良い装備があれば別ですけど、そうじゃないからきちんとレベルを上げて、さらに魔法やら装備やらを買ってとなると、もっと時間かかりますよね。
そして私が他のPTにこれ以上DPを援助するのも難しい現状、私たちが取ってきた武器や防具、使わないスキルスクロールを他のPTに回すことで何とかしてもらうしかありません!
あとは、お爺様の会社で色々と武器や防具の試作品を作っているらしいのでね、そっちで良い物が出来て他の人達が少しでも楽になる事を祈りましょう。
「そうそう知佳君、明日は何か予定があるかね?」
「明日?特にないからポーション作りをしようかと思ってたけど」
「そうか、それならちょっとお願いがあるのだが……」
「あんた今度は何をやらせようっていうんだい?」
そうですね、お爺様が急に何かを頼んでくるって、ちょっと内容が思いつきません。
「いや、変な事じゃないんだよ。ほら、倉庫ダンジョンの横に簡易工房を作っただろう?」
「あぁ、あれ出来たのかい?」
「そこで取ってきてもらった鉄鉱石を加工してもらっているんだ。それで他の場所で加工するよりははるかに加工はしやすくなったらしいんだが、以前知佳君が見せてくれた事が出来ないらしくてね」
そこで話された内容はというと、どうやらダンジョンの近くではダンジョン産資源の加工が楽になる様です。
ただ、以前私がやって見せた鉄鉱石から余計な岩を取り除く方法はできなかったとの事。
そこで私もそこへ行き、色々やってみてくれないかという提案でした。
「行くのは良いけど、もしかして男の人ばかりだったりする?」
「あー、大半は男だな。そうか、知佳君にはきついか……」
「まぁ、そこは私たちがガードします。ただ、職人って自分の興味がある事には周りの迷惑を考えずにどんどん食いついて来る人もいますから、少々心配ではありますね」
「大丈夫です、知佳さんは私が守りますから!」
「いや、沙織さん。守るっていっても一般人相手だから、モンスター相手にするのとは違いますよ?」
何やら張り切っていますけど、人相手でも攻撃しそうな勢いですよ?
「まぁ、彼らは完全にこちら側の人間ばかりだから、怪我さえさせなければスキルで黙らせても何とかなるので、よかったら顔を出してみてくれないかな?」
「それって、スキルを見せても大丈夫って事?」
「あー、何でもかんでも見せるのはまずいが、ある程度……そうだな、錬金術系と、あとは結界で一定以上近寄れなくする分には口止めすれば何とかなるだろう」
結界で防いでもいいのなら大丈夫かな?
「でも会長、事前に向こうからは無暗に近づかない様に言っておいてくださいね」
「あぁ、その辺はきちんと通達しておくよ」
こうして明日の予定は当初のポーション作成から、倉庫ダンジョン横に出来た簡易工房での作業に変更になりました。
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